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魔法少女と願い事  作者: 天然無自覚天然難聴主人公
第十話 『魔法少女と願い事』
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魔法少女を殺す事

 そして次の日、この事をひよりに伝えると快く承諾してくれた。弱いのばかりで飽き飽きし始めていたそうだ。


 そしてもう一人、正直に言うと会いに行くのは気が引けたがあれでも頼りになる。私は中央区まで足を運び暗い路地裏を探し回った。路地裏で変身したばかりの子を数人殺してやっと血なまぐさい路地裏を発見した。


「お待ちしていましたわ。さぁ、今日こそ貴方の初めてを――」


「はいはい。この子は殺すよ?」


 棺桶から顔だけ出された魔法少女に近づき今度は何をされたのかと隠された身体の方を覗き込む。暗い棺桶の中では小さな何かがゾワゾワと蠢き、羽ばたきの音や聞いたことのない鳴き声まで聞こえて来る。そう、中にいるのは大量の虫だ。


「大丈夫ですよ。出てきませんのでから。あぁ、でもクリスタルも棺桶の中ですね……少し離れてください」


 数歩下がると段々と焦げ臭い匂いが漂い始める。ぐったりと気を失ったかのようにしていた魔法少女もそれに意識を取り戻し、枷越しに声にならない声で叫び続ける。バタバタと激しく桶が音を出し、黒い煙が立ち上る。


 黒煙にむせて、咳が止まらない。呼吸を躊躇う程の焦げ臭さが蔓延し、思わず口を覆う。火は的確に彼女の首から下だけを燃やし続け、顔は綺麗なままだ。それでも暴れる力と身体は無くなったようで、事切れたかのように涙を浮かべながら転がる。


「では、開けますね。火傷には気をつけてください」


 真っ黒になった身体に辺りに散らばる焼き焦げた虫の死骸。ひどく悲惨な中でも輝きを失わないクリスタルの光が輝く。身体は焼け焦げ、無傷の首とは繋がっていない。彼女は確かに死んでいる。


 だが、人間であればの話だ。彼女は魔法少女だ。このクリスタルが粉々に砕け散るまで彼女の願いと、魔法少女という存在にも囚われ続けている。声を出せないので人に戻る事も、武器を握れないので力を溜める事も出来ないが、まだ彼女は生きている。


 私はステッキでその綺麗なクリスタルを貫く。一気に罅が広がり、崩れ去る。キラキラと崩れる最期まで光を失わないそれはとても綺麗に私の目に映る。魔法少女を殺す事は少し胸が締め付けられる時があるが、拷問の魔法少女の獲物を殺す時は全く気が咎めない。むしろ殺すのが正解だと思う程。


「あんまりいじめるのは良くないよ」


「約束を守らないのもどうかと思いますが?」


 それに関しては言う言葉が無い。SMプレイの様な事をやらされそうで躊躇っているのだ。当然そういう玩具も彼女の力なら出せてしまうだろう。きっと市販のより強めで変な形をしたものが。


「コホン。ニュースとかで見てるだろうけど、私あの魔法少女を殺しに行くんだ。手伝う気はある?」


 話をそらすように今日の目的に入る。とても驚いた表情を浮かべながらもすぐには断られなかった。数十秒の間考え、顔を上げた彼女と目が合う。その目を見て私は察する。きっとまたあんな事やこんな事がしたいと言いたいのだろう。結婚とか言い出しそうで私はその視線の意図が分かっても何も言わなった。


「……じゃあ、デートから始めましょうか。出会って五秒で性行為がお嫌いなようですし」


「ご、五秒でするつもりだったの……? 最近はそんなものですよ?」


 そう笑顔で言い、鉄の処女の鎖を音を立てながら持ち上げる。まさかの拷問プレイに冷や汗が止まらない。苦笑いを浮かべながらじりじりと後ろに下がっていく。処女でなければ殺すための拷問。処女であり、尚且つ過去の自分と重ねてしまう所があれば愛した拷問という事だろう。


「やっぱり、今日は合わなかった事にしよっか~……」


「冗談ですよ。恋した相手に痛い事はしません。区内に入るのは日曜でしたっけ? 彼女のいる区に集合と言ったところですね」


 概要だけを簡潔に説明し、早々にそこから逃げかえった。もう一人手伝ってくれる人がいる事を教えると顔が青ざめて小声で何かを呟き始めたが同士討ちは止めるように念入りにくぎを打った。


 そして土曜はひよりと共に力とコンビネーションを上げ、日が落ちる。ニュースである程度の場所を知り、早めに布団に入った。だが、予想通り中々寝付けない。真っ暗な部屋の何も見えない天井を見上げる。寝る前にセットしておいたタイマーが切れ、エアコンの稼働音と共に冷たい空気が止まる。


「ウィルネさん……明日勝てますかね」


 そう呟くと人形の山の上に薄く光る目が見える。だが、ウィルネさんは何も言わない。その目を見返し、見つめ合う。勝ち目は薄いのだろう。相手は何十年と魔法少女の枠を超えて生きる存在。


「……キミは十分に強くなった。こちらから仕掛けなくても来るだろう。逃げれないキミは最善の選択をした」


 決して勝てるとは言わない。濁された言葉。私は静かに目を閉じた。ウィルネさんもそれ以上何も言わずにそこに居続けた。


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