魔法少女は短命
光の魔法少女を殺した後、私はひよりと一緒に特訓する事が増えた。拷問の魔法少女との戦いを得て、共闘の良さも分かった。
「インヴァート!」
「ディレイ!」
光よりも速い移動。進むのではなくワープに近い能力を捉えるなどまだ魔法少女になったばかりのひよりでは難しい。実際何度も木刀で頭を叩いている。その度にもう一回と喚き、同じ結果を迎える。
もう何回戦った事か。だが、これは良い訓練だ。なるべく実戦形式で訓練をしたいが信じられる魔法少女は少ない。ステッキを向けずに入れ替えるのも中々上手くなってきた。距離が出来るとやはり安定はしないが、近接戦では十分に使えるレベルだ。
木刀と木刀が打ち合う音が青空の下に響く。空を切る音、地面を穿つ音、人に当たる鈍い音は響かない。ひよりも魔法少女になったばかりだというのに身のこなしは私と同程度。才能に嫉妬してしまう。
同じ腰を反って避ける行動も迫力が違う。ひよりは思わず当たってしまいそうだ。大きいのも不便なだけだと自分に言い聞かせ、木刀を振るう。
「インヴァート!」
能力を発動して視点が変わる間に体勢を変えられる一瞬を活用し、読まれていただろう反撃を避ける。互いに手加減をしない一進一退の攻防。だが、わずかに能力の使い方でひよりに勝り、彼女の首元に木刀を向ける。
「私の勝ち~炭酸ジュース一本ね~」
「うぅ……能力使っとけばよかったぁ~!」
互いの反省を言い合いながら近くの自動販売機まで足を運び、無駄に高い炭酸飲料を買ってもらった。目の前で見せつける様にキャップを捻り、炭酸の抜ける音が響く。その音を堪能し、ニマニマとしながらひよりを見つめる。
「うっざ~次勝った時はエナジードリンク買ってもらうからね!」
私は知っている。ひよりがエナジードリンクを嫌いという事を。そして炭酸水も嫌いという事を。つまりこの自動販売機のラインナップでひよりが飲める最高値は百二十円だ。それに比べてこれは百八十円。思わずドヤ顔が出てしまうのも無理はない。
ごくごくと音を鳴らしながら水分補給をする。乾き切った喉に炭酸の刺激が入っていく。普通に飲むのと違い、運動後は格別だ。喉を冷たく通って胃に落ちる。あまりにもおいしく感じたものだからついつい飲み過ぎてしまい、空気が逆流してくる。ひよりの悔しそうな顔を見ると何杯でも飲めてしまいそうだ。
「どうする? この後帰る?」
「ひよりはもう少し力溜めてから帰る~いろんな人と戦っておきたいからね」
ひよりとはそこで別れ、公園の個室に駆けこんで呪文を唱えて変身を解く。ついでに用を済ませ、帰路に着く。赤い夕陽を背景に住宅街の道を進んでいると遠くから爆発音が聞こえる。きっとひよりだろう。最近は力を集める事に固執し始めた。他に何か願いでもできたのだろう。
「そう言えば、私の今まで溜めた力はどのくらいなんですか?」
私の周りにその姿は無かったが、その質問をするとどこからともなく黒い影が後ろから忍び寄る。勿論それは私にしか見えず、夕日に照らせた影も無い。
「まだまだだね。今のペースじゃキミが十八歳になって魔法少女の年齢制限が来るときになっても叶えられないだろうね」
「私の期間は残り二年しかありませんもんね。拷問の魔法少女は一年以上魔法少女やってるらしいですよ」
魔法少女は十才から十八歳までしかなれない。最長で八年間。だが、十才が戦略を考えられるはずも無く、十七歳が大きな願いを叶えられるはずがない。早々に死ぬ、または集めた力を使わずに寿命を迎えるとその力はウィルネさんの種族の力となる。
魔法少女は短命だ。願いの為に生き急ぎ、出会えばどちらかが死ぬ。当然死んでもウィルネさん達の糧になる。本当に狡猾な仕組みである。
ただ、それを壊そうとしているのがウィルネさんだ。
「はぁ、なんか五年ぐらい生きてる雑魚いないかな~」
「いないだろ。このままじゃキミの願いは叶わないよ」
わざわざ言って来る憎たらしいウィルネさんの頬を指で突っつき、車道に押し出す。タイミングよく車が来ることは無かった。挑発的な笑みを浮かべて舌を出す。これが今できる最大限の当てつけだ。




