死姦でも構いません!
「私は……この力で全ての悪を滅ぼす! だから力が必要なの! そして、平和な世界になったら三人で暮らすの!!」
間違っている。全て間違っている。魔法少女は悪だ。世界の悪を滅ぼすならば、最後の敵は自分自身だ。結局は私利私欲。私もそして、聞いている限り光の魔法少女もそうだ。一番初めに殺した魔法少女は自分を正義と語った。悪は私だといった。彼女もヒーローとして私を殺すという。私は何をした? 何もしていない。ただ、魔法少女になっただけ。その時点で殺されるというならば魔法少女という存在はやはり悪だ。
そう。ならば確かに私は悪だ。彼女も悪であり、殺しても良い存在。
「あなたも悪だよ。私が殺してあげる」
互いに見つめ合い、動き出す。入れ替えの精度も良くなった。五回に一回はミスをするが、大きなミスではない。光の光線が真横を掠め、私の刃が彼女の服を切り裂く。彼女の脚に触れ、大きな声で唱える。空中に放り投げられ、宙を舞う。
「ペルヴェルス!!」
空中を落下している最中にこの技を相手に使うのは始めてだ。だが、確実に適応は不可能。ただでさえ空中ではくるくると回り体勢を安定させるのが難しいというのにさらに感覚の反転が起こっているのだ。受け身を取る事さえ出来ない。
「な、なんだこれ……まぁ、いい! サンアターック!!」
「はぁ!?」
確かに落下攻撃ならばこの高さを生かして威力を上げられるだろう。避けられてもその衝撃波がクッションになる。感覚の反転など意味をなさない。私は素早く入れ替え、地面に降り立つ。重力の重さを耐え抜き、ふと顔を上げる。案の定そのまま回転しながら落下してくる。
「い、インヴァート!」
背後で起こった大きな衝撃波に身体を飛ばされ、全身を打つ。団地の屋上は大きく円を描くように抉れ、その中心にぎこちなく立ち上がる光の魔法少女の姿が見える。拷問の魔法少女は少し戦う位置が変わっているが、戦闘はまだ続いている。相手は光そのもの。実態が無いため攻撃は通らない。私が速く本体を倒すまで消えないだろう。
「こ、これではまともにビームも打てない……そろそろ終わらせるか!」
私がいる方向とは全く違う方を見ながら大きく彼女は話す。今なら楽に殺せる。そう思った瞬間、地面が光る。その光は視界を白く染め上げ、何も見えない。何が起きているのか全く分からない。だが、それでも分かるのは脚の裏から感じる熱。瞼を通り越す白い光。これが大技だという事は分かる。逃げようにもこの視界では何も見えない。キューブもこの光の範囲内だろう。一瞬だが、光る範囲は相当広かった。彼女の攻撃を避ける手立てはない。
「この輝きは断光。悪を滅ぼす力の象徴。血を焦がし、地を滅する。我が願いの為に死に、世界の為に消えろ……! 微量の灰も残らんと思え。閃煌・天裂き――」
その詠唱が完全に言い終わったのにも関わらず。何も起きる事は無い。私の身が光で焼き尽くされることも無い。ただ、私の感触にあるのは何回と味わってきたクリスタルを突き刺す感触だけ。視界を白く染め上げていた光がゆっくりと効力を失っていき、ゆっくりと目を開ける。
目の前には大きく上げた両手をゆっくりと降ろしていく光の魔法少女の姿が映る。クリスタルの中心にステッキが突き刺さり、罅が全身に広がっていく。痛みは無いだろう。ただ、夢の終わりがどこまでも精神を傷つける。ゆっくりと流れ出す涙と悔しそうな表情を浮かべながら力無く腕が落ちる。
真っ白な視界の中、私は最後の頼みで位置を入れ替えた。それは楽に殺せると思った瞬間、丁度彼女の前にあった欠けた十字架。勿論あの視界ではステッキを向けたところで上手く入れ替わるのは難しい。だから私はその光景を思い出した。あそこにある瓦礫を真っ白な世界で想像し、それと入れ替わる事に賭けた。そしてそれは上手く行き、彼女が言い切る前に刃を突き刺した。
「私の正義は……」
「あなたの願いは良いものだったわ」
彼女は自分の手を見つめ、静かに笑った。彼女の掌の血は全て焦げ、一滴の汚れも無い。そんな綺麗な手の先まで罅が広がり、静かに彼女は消えていった。
「……ご無事ですか? 倒されたようですね。おめでとうございます」
「分身を相手してくれてありがと。こっちに逸れて来る攻撃も無かったし、集中できたよ」
彼女には目立った傷が無い。とても元気そうだ。そしてとても嬉しそうな顔をしながら身体を前屈みにして次の言葉を待っている。
「だ、抱くのはまた今度で……」
その言葉を伝えた途端にその嬉しそうな顔は崩れ去る。目をまん丸にして口を開く。悲しそうに垂れ下がった眉がどれ程楽しみしていたかを物語る。だが、私は彼女より攻撃を受けたため、これからするのは少し重労働だ。
「で、ではいつ抱いてくださるのですか!?」
「ま、また立ち寄った時にでも……い、今にも死にそうだしね? ね?」
「屍姦でも構いません! ですから!」
詰め寄る彼女から視線を逸らし、遠くにあった瓦礫を見つめ、位置を入れ替える。こんな事で能力を使うとは思っていなかったが、颯爽とその場から逃げていく。段々と遠くなっていく拷問の魔法少女の声に安堵の息を付く。
「殺すのかい? ボクは殺しても良いと思うよ」
「ダメです! 変な人ですけど、助けてくれたので!」




