本物の太陽の光
全身が発光し、身体の形に凝縮されたような光。光を捕まえる事は出来ずに枷が落ちる。これでは攻撃が通じない。私の予想は外れた。こうなると戦況は読めない。奥歯を噛み締め、この状況を打破する手立てを考えるが、何も思いつかない。軽い舌打ちを飛ばすと拷問の魔法少女が指を鳴らす。
「このビルを刺殺しなさい」
その声とともに私を照らしていた本物の太陽の光が消える。振り向くとそこには巨大な鉄の処女が扉を開けて今にも閉じようとしていた。深い影が私たちを陰らせ、光る彼女はより一層目立つ。
拷問の魔法少女はゆっくりと手を握り、それと連動するように轟音を立てながら扉が閉まっていく。地上の木や車を巻き込みながら外界の光が遮断されていく。そして、完全に手が握られると轟音は止み、真っ暗な世界に光の魔法少女の姿だけが輝く。
「二つ……?」
目の前で光となった光の魔法少女の背後にもう一つの同じ光が輝いている。そこへキューブを投げ込み、位置を入れ替えてその様子を見に行く。その光源の正体は光の魔法少女だった。振り向いた彼女と目線が合い、苦笑いを浮かべる彼女の表情がくっきりと照らされている。
じゃらじゃらと鎖の打ち合う音が響き我に返る。なにはともあれタネは分かった。つまり、あれは分身のようなものだ。目の前の本体は光の分身ではないから刃が通る。私は直ぐに攻撃に転じ、位置を入れ替える。私の周りに入れ替えられる物が無いため、彼女と入れ替え揺動を測るしか手段が無い。
「拷問! フィールド!」
「十字架よ。待機せよ」
その言葉に合わせ、何もなかった地面から無数の貼り付け台が姿を現す。そしてそのどれもが軽く浮遊している。地面に固定されていない限り、入れ替えの出来る物と定義される。十分な働きだ。私の道具となり、同時に彼女自身も使える武器とした。
『拷問』という能力自体は強くないものではあるが、解釈の幅が大きい。これが与えられた能力の大きさなのか、彼女の戦闘センスなのか。後者であった場合は私自身の入れ替えの能力が今の力の大きさのまま幅を広げられるかもしれない。
「インヴァート!」
光の光線を避けながらじわじわと詰めていく。周囲を巻き込んでの範囲攻撃であっても破片が多くなるため私は損をしない。
「インヴァート!」
激しい戦闘が続き、息が上がり始める。呼吸音に混じる痛みを我慢する小さな苦痛の声。場所を入れ替えても彼女の背後を取るどころか、ピンポイントでカウンターが時折飛んでくる。
「インヴァート!」
背後、空中、横、一度下がっての再接近。確実に読まれ始めている。光の反応速度のような特殊な肉体強化の可能性もあるが、最初は追えていなかった。となると――
「ッツ……!!」
視点が変わった瞬間、否。視点が変わる前から私の入れ替わる位置へ攻撃を向けていた。腹部に直撃した焼けるような痛みが私の攻撃の手を止めさせる。よろめきながら数歩後退し、相手を睨む。
「っふ! その攻撃にはもう慣れたぞ! そのステッキが向けた方にしか飛べないんだろ!?」
私はやっと理解した。彼女が何を見ていたのか。だが、解決策は無い。ウィルネさんも言っていたが、本来このステッキは要らない。私があまりにも空間把握が苦手だったため特別に拵えたものだ。これが無ければ思い通りの物と入れ替えられない。一個奥の物と入れ替えてしまい、攻撃を空振りしてしまったら大きな隙を与える事になる。
殺されたら終わりの魔法少女界ではそんな危険な橋は渡れない。どうしても安全を取ってしまう。キューブならば向けなくても直感で位置が感じられて入れ替えることが出来る。だが、揺動に使えるだけのキューブをばら撒き、同じことが出来るかと言われれば不可能だ。そちらの方がズレる可能性が高い。
回避先も全て読まれることになる。私の弱点がバレてしまっては終わりだ。小学生にしては頭がよく切れる。




