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魔法少女と願い事  作者: 天然無自覚天然難聴主人公
第二話 『自分で戦う』
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黒い――でした

 電車に揺られ、暗くなった夜道を一人家へ向かう中、その事を考えるも何も分からない。ウィルネの存在も何もかもが闇に包まれ、実際に自分の身で経験する以外答えを知る方法は無いのだろう。


 何とか家に帰り、鞄を投げて倒れるようにベッドに体を預ける。お気に入りのぬいぐるみの山に手を伸ばし適当に掴んで抱え込む。妹と一緒にゲームセンターで取った思い出のぬいぐるみ達、思い出が蘇り、魔法少女に対する不安を払拭する。


 温かい思い出が体にまで伝わったのか、お腹周りが温かい。ゆっくりと目が閉じていき、全身の力が抜ける。


「……いや、ボクを抱えて寝ないでくれるかな?」


 突然の声に驚き、閉じかけていた目を大きく見開く。腕の中で抱かれているのは妹との思い出などではなく、生きたウィルネさんだった。薄暗く光る黄色い目が合い、少し遅れてやって来た恐怖に全身を逆撫でられ、反射的に投げ飛ばしてしまった。


「なな、何でいるんですか!?」


「何か問題でもあるのかい?」


 投げ飛ばされながらも体勢を立て直し、いつも通り浮遊し始める。あの温もりの正体にゾッとしつつ、彼を抱いてしまった事に、私はたまらなく恥ずかしさを覚えた。


「……? あぁ、大丈夫。高校生なんてそのくらいだからあんまり気に病む必要は無いよ」


 慰めの言葉をかけられ、思わず枕をウィルネさんの顔目掛けて投げ飛ばすも軽々と避けられる。もう少し大きければ顔を起こすだけではウィルネさんと目が合わなかっただろう。そんな事を気にも留めない感じに腹が立ち布団まで投げ飛ばす。


「それで、何の用ですか?」


 顔はそっぽを向き目線だけ送る。ウィルネさんの弁明は更に腹が立つだけだった。すっかり布団に埋もれたウィルネが顔を出し、どこからともなく魔法少女に似合うファンシーなステッキを取り出す。


「これが無くても使えるけど、慣れるにはちょうどいいからね」


 軽く笑いながらおもちゃ屋さんにありそうなステッキを手渡された。黒い衣装に合わせて作られたそれは形こそ可愛らしいが、全体的にトゲトゲとした箇所が多く、闇に堕ちた魔法少女という感じが漂い可愛らしさが感じられない。柄のボタンを発見し押してみると先端から鋭い刃が飛び出し、暗器へ変貌した。


「……」


「どうだい? 最初は自分とそれを向けた対象と入れ替えることに専念しな」


 確かに実用的で理にかなっている。前回は相手の武器を使って胸のクリスタルを割ったが、相手の武器が無ければどうやって割るのか疑問に思っていたところだ。だが、こんな暗器を持ち歩くのはやはり気が引ける。


「あぁ、しっかりと小型化できるようになっているからね」


「……ありがとうございます」


 これだけ渡されるとまたウィルネさんは姿を消した。ボタンを押すと刃物が飛び出る魔法のステッキをそっと遠くに置いておき、日常生活へと戻る。


 ご飯と呼ぶお母さんの声が微かに聞こえ、リビングへ行く。家族三人分の食事が作られお父さんの分はラップに包まれている。妹が病院に入院してから帰りが遅くなり、いつもくたびれて帰ってくる父の姿を何度か見た事がある。もしも私の願いが叶うならば、この食卓を家族四人そろって囲める。


 そして今、私にはその力がある――そうこう考えながら食べていると一つのニュースがテレビで報道され目を奪われる。


『本日午後五時ごろ、中央公園にて悪の組織の侵攻により一人が死亡いたしました。敵の幹部と思われる人物はすでに魔法少女に討伐され被害は一人にとどまりました』


 場所、時間帯、人間が死んだ人数、全てに覚えがある。これは私。中央公園で悪の組織の幹部を倒したのは私。――彼女が悪……? 殺したのは私。


『いや~初めて見る魔法少女でしたね』


『黒い魔法少女でした』


『なんか、とってもクールって言うか、カッコよかったです』


『おかげで助かりましたよ』


「……ごちそうさま」


 お父さんに合わせられた少し熱めのお湯に肩まで浸かると今日の疲れがスッと流れ落ちるような感覚が身体を落ち着かせる。熱が頭の中をぼやけさせ、難しい事から一瞬だけでも離れられた。温風が髪を撫で、乾き切る頃には頭の中の熱も冷め、落ち着いた思考が回る。早めに部屋の電気を消し、真っ暗な中で私は考えた。


 死亡者一名は紛れもなく私のせい。私が助かるために彼との位置を入れ替えて私は生き延びた。殺したのは私。それでも世界は彼女が悪いと判断した――そして私は理解した。


 負けたら悪になるんだ、相手が人に手を出したら悪になるんだ、と。


 魔法少女という存在は歪だ。私は妹を助けるために、そして今日殺した彼女も何かしらの願いがあった。二人とも正義であり、悪ではない。魔法少女が悪になるにはその正義が無くなればいい。すなわち、殺す。世の中はおかしかったと私は認識する。今まで生きてきた世界が百八十度変わった。そして今日、私が正義になれた事に安心して目を閉じる。部屋に浮かぶ黄色い目に気付くことなく眠りにつく。


「……彼女にして正解だった。前より計画が上手く行くかもね」


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