す、好きなの……?
ひよりが魔法少女と分かってから数日が経ち、二人で何度か戦いに行ったが苦戦する気配さえなかった。流石は豪運の魔法少女を殺しただけの力だ。もしかすると私より強いのかもしれない。まだ日も浅いのに抜かれると少々悔しいものだ。
今日も私は力を溜めに中央区まで足を運んでいる。豪運が死んだ今、ここに居る名のしれた魔法少女は『拷問』と『光』だけだ。私はこのどちらかを殺さなくてはならない。
「ほら、向こうにも居る。行ってきな」
「ちょっと疲れてきたんですけどー」
今日、昨日とひよりが塾や私用でいない時にはウィルネさんに連れられてこの街を徘徊している。どうしてもウィルネさんは代わりの力が欲しいらしい。
「いいから行け。運命を横取りされたんだ。埋めの力は必要だろ? 妹を助けるんだろ?」
妹を出されると私も否定が出来ない。ムスッとした顔でウィルネさんを睨み、ビルからビルへと闊歩する。
深い路地に降り立ち、足を進めると血の匂いがツーンと鼻を刺す。この感じを私は一度感じた事がある。
静かに足を運び、その匂いの元へ歩み寄る。その発生源をゆっくりと覗き込むと案の定そこに居たのは『拷問の魔法少女』だった。今日も一人を捕まえていたぶっている。
「あぁ、やっと見つけたね。さぁ、殺して良いよ。もう慣れただろ?」
少し躊躇いの表情を浮かべて考える。殺す事は問題ない。勝てるかどうかの話でもない。単純に彼女に聞きたい事がある。
私は一息ついて堂々と正面から姿を現す。当然彼女も私の存在には気付いていたようで、こちらを見向きもせずに挨拶を交わす。
相対しても何も言わずに拷問を続ける彼女に近づき、通り過ぎる。縄で縛られ、口を縛られている魔法少女の目の前まで歩み寄り、その様子を確かめる。
縛り上げられ、宙にぶら下がりながら微かな息だけをして風に揺られて身を揺らしている。当然口には枷が付いていて、変身を解く事は出来ない。彼女から発せられる異臭に鼻を押さえながら彼女の下に溜まる糞尿と血液がドロドロに混ざり合った液体を眺め、その液体がどこから来るのかを辿る。丁度風に振り回され、彼女の後ろ姿が目に入る。スカートで実態は分からないが、その中から下に溜まっている物と同じ体液が途絶えず滴り続けている。
錆び付いた金属が回るような音が微かに聞こえ、彼女の中に挿入されているモノの大体は予想がついた。耐えきれない匂いと嫌悪により吐瀉物が胃の奥から喉を勢いよく突き上げながら口元まで来る。
今にも死にそうでボロボロな身体だというのにその魔法少女は死なない。いや、死ねない。魔法少女が持つ死の条件に身体の著しい損傷が無いからだ。胸元に光るクリスタルが壊れない限り、心身がどれ程壊れようと死ねない。例えクリスタルだけになろうとも。
「殺すよ? 可愛そうだし」
一言だけ断りを入れ、ステッキでクリスタルを貫く。全身に罅が入り、魔法少女は粉々になって消えていく。これから彼女は魔法少女になった代償である痛みを受けなければならない。私も最近知ったことだが、こんな死に方をする可能性があり、さらに痛みを受けるというならば、誰も魔法少女になりたいとは言わないだろう。
それに代えてでも叶えたい願いがない限り――
「貴方と合うのは久しぶりですね。豪運は貴方が殺したのですか?」
「違うよ。私は殺しきれなかった……いや、私は負けた。豪運も力を得るって最初に言ってたし、負けるのは確定してたみたいだけど……」
その言葉に矛盾がある事に気付く。私は死んでいない。彼女に殺されていない。力を奪われていない。だが、彼女が大量の力を得る事は確定している。ならば誰かが私の代わりに死んだという事。だが、彼女はひよりに殺された。
この中にはない他の魔法少女がいるとするなら、それはひよりの前に『時の魔法少女』の役を担っていた人。私は納得したようにその場で頷く。
「貴方は運が良かったんですね。嬉しいです」
彼女の今までの言動、そして私にキスをしてきた少女が彼女だと仮定して、私は聞きたい事を思い浮かべて口を開いた。
「す、好きなの……? 私の事……」




