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魔法少女と願い事  作者: 天然無自覚天然難聴主人公
第八話 『友達と魔法少女』
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私の願いを……トランスフィグラーレ

 そして、アレコレしているうちに四時間目のチャイムも鳴り、教室のみんなが一斉に動き出す。購買に走る者、一斉に集まってゲームをしだす男子。私はお弁当を鞄から取り出しひよりの下へ向かう。


「考えはまとまった? でも、授業はちゃんと受けなきゃダメだよ! 成績もそんな良くないんだから」


「う、うん……頑張る」


 何も言い返せないままあの場所へ向かう。そこへ近づくに連れて人の数が減って行き、体育館倉庫の辺りには人一人いない。南京錠を外して中に入り、前と同じように穴に手を伸ばしてさらに奥の部屋まで侵入する。


 鉄製の冷たく重い扉が閉まり、二人だけの密室となる。


「それで? 今回はどうしたの? 次は高校生でも殺すの?」


「まぁ、似たようなものかな?」


 いざ口に出そうとすると言葉に詰まる。何と話せば良いのかが分からない。可能性としてはゼロに近いが、ひよりが魔法少女の可能性もあるし、これからなる可能性もある。私が魔法少女と悟られてはいけない。


 私が黙り込んでしまった中、ひよりは静かに待ってくれる。急かす事もなく、ただ私の口が開くのを待ってくれている。


「えっとー……と、友達の話なんだけどね!? 今朝、この学校に入って行く白い影を見たらしいのよ。で、その友達はその白い影を倒さなきゃいけないかもしれなくて――」


 時系列もまともにまとめられていない程行ったり来たりの話。私が魔法少女だとバレてもおかしくない。そもそも、魔法少女の世界を話してもひよりには伝わらないかもしれない。けれど、私はひよりに相談を続けた。倒れて隙だらけなのに殺されなかった話をし、どうしたらいいのかを聞いた。


 ひよりは真剣な表情で口元に手を当てて考え込んでいる。それはとっても真剣に考えてくれた。私の声が体育館倉庫から響かなくなり、数十秒が経つ。


 何かが分かったかのように大きく頷き。考え込んでいた頭が上がる。じっと互いに顔を見合わせ、何かを確かめ合う。再度大きく頷くひよりに連られて私も大きく頷く。


「目を閉じて、ひよりの名前を呼んじゃダメだよ」


 唇を指で塞がれ、互いの距離が近くなる。そして、言われるがままに目を閉じる。私はひよりを信頼しているが、ここから先の言葉によっては裏切らなければならなくなる。


 目を閉じて視覚情報は消えた。感じられるの唇に伝わるはひよりの細い指の感触と匂い。衣擦れの音が微かに響くと揺れる風に運ばれてくる匂い。今私の眼の前にいるのはひよりだ。


「本当に呼んじゃダメだよ? 時を巡り、私の願いを……トランスフィグラーレ――」


 唇に伝わる指の熱が高まり、制服からは聞こえないはずの小さな金属がぶつかり合う音と室内に吹く風。そして、ひよりの匂いも消えた。


「ゆっくり、目を開けッ――!!」


 言われる前に私は既に目を開けている。口元の手を掴み、今の私が出せる力で魔法少女を押し倒す。首に腕を押し当て、気道を押さえる。酷くビックリしているが余裕そうな態度は変わらない。


「ご、ごめんね! 姿変わると認識が出来なくなるんだっけ? ひよりだよ!」


 そんな事は分かっている。ひよりの匂いが消えるように途切れ、目の前に違う誰かが居ようと私はそれがひよりだという事は知っている。ひよりが私の探していた白い魔法少女だという事も理解している。


 私の全体重をかけて殺しに掛かっているというのに彼女はただ髪が乱れる程度の攻撃しか出来ていない。彼女の手の押さえが効かなくなり、ゆっくりと身体を起こされていく。


 やはり生身では魔法少女に勝てない。ひよりは黒だ。敵だ。魔法少女だ。


「反転の星に願いを――! トランスフィグラーレ!!」


「えぇ!? 変身出来るの!?」


 一瞬で制服は変わり、押されていた力が拮抗する。互いに手を握り、押し合う。狼狽えている彼女の力が抜けていき、最初に押し倒した体勢と同じになる。


「いつから魔法少女になった! なぜ私が魔法少女だと気づいた!」


 私は声を荒らげて彼女を問いただした。先程と違い、彼女に苦痛の表情が見える。勿論抵抗はあるが上に覆い被さっているこの状況から逃げ出すのは難しいだろう。


「落ち着いてよ! ひよりはまだ昨日なったばかりだから!」


 一気に力を込められ体制を崩す。彼女と少し距離を置き、冷静になろうと息を付く。先程まで静かだった体育館倉庫に荒い息が響く。互いに目を見つめ合い、彼女も私も動かない。


 昨日魔法少女になったと言った。だが、魔法少女になったばかりで豪運の魔法少女を殺せるだろうか。いや、時間を操れるなれば十分勝てる。だが、そんな大規模に能力を使うには最初に力を沢山貰わなければならない。


「……キミか。久しぶりだね」


 どこからか現れたウィルネさんが空気に向かって声をかける。当然返事は聞こえない。だが、確かに答えは返ってきたようでウィルネさんはその空気を見続ける。


「だが、今回は殺し合えないみたいだね。キミが魔法少女にした子とうちの子は仲が良いみたいだからね」


 その言葉を聞きハッとする。ウィルネさんから視線をずらし、目の前の魔法少女を見る。武器も能力も使わずにただそこにいるだけ。敵対行動をしてこない。そこにいるのはひよりだから。


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