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魔法少女と願い事  作者: 天然無自覚天然難聴主人公
第七話 『かなわなかった魔法少女』
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本当に死なないから

 今までになく大きく吊り上がった笑顔を浮かべるネヴァはゆっくりと両手を重ねた。それはゆっくりと光を放ち始め、輝きを増していく。赤い光が目を開けられない程まで輝き、辺りを照らす。目を閉じても瞼を透き通って届く光がゆっくりと私の胸に押し込まれ、今までにない程、内から熱を感じる。


 頭のてっぺんから脚の親指の先までが熱に覆われ、身体がその熱に悲鳴を上げる。辺りを照らす光は段々と消えていき、私の中を暴れる熱が増えていく。瞼を透き通る光が全て消え、私の胸に押し当てるネヴァの手が離れた瞬間、私は胸を抑え込み、倒れる。私の荒い呼吸が微かに耳に届き、地面のひんやりとした感覚が頬に押し付けられる。


 呼吸をするたびに熱が身体を駆け回る。狂った息遣いが苦しい。だが、この感覚になれたのか、脳が熱で浮かされたのか、熱が巡るたびに快楽の様なものを感じ、止まらない汗さえも気持ちよく感じる。


「はっ……はぁっ……っ、はぁ、はぁ……ッ……」


 ゆっくりと熱が引いていき、倒れ込んでいた身体を起こし、壁にもたれかかる。立ち上がろうとするも生まれたての小鹿の様に小刻みに震える私の脚ではまともに立てないだろう。癖になってしまいそうな今までにない感覚。首筋を通り、胸を伝う汗の感触までもが敏感に感じ取れる。


「オレの能力は時間操作。簡単に死ぬ事も無いし、扱いも難しいからな。大量の力を与えたが、よく耐えた」


 私の心音がまだネヴァの声を掻き消す中、淡々と魔法少女の説明を続けられた。死んだらどうなるか、どうやって魔法少女を殺すのか、能力の使い方、願いの叶え方。後付けで付け足されていく理不尽な条件にその生意気な顔を引っ叩きたいが、まだ身体の感覚が正常に戻っていない。


「……そういうのは先に言うべきだと思うんですが? 詐欺ですよ詐欺!」


「オレに法は通じない。勿論魔法少女にも通じない。早く変身しろ。近くに前の奴を殺した奴まだいる」


 大きくため息を付き、痙攣の治まった身体を起こす。中に何かが巡っている感じだが、見た目には変化はない。服に付いた土埃を払い落とし、説明にあった変身の合言葉を唱える。


「時を巡り、私の願いを――トランスフィグラーレ!!」


 治まったばかりの熱が再度胸の内から全身に広がっていく。指の先まで熱に包まれ、服の感覚が消える。身軽になった瞬間、急激に全身を締め付けられる。肌にピッタリと密着する服にフワっとした軽いレース生地が何層にも重なって重みを増す。


 身体の変化が無くなった頃にゆっくりと目を開けて自分の姿を確認する。真っ白なドレスで柔らかく広がったショートスカート。時計の指針の様な模様がラインストーンが裾に刻まれ、薄い光でキラキラと光る。そして、そんな装飾よりもいっそう輝きの違うクリスタルが胸元に埋め込まれている。


「それが、お前の心臓だ。それが壊れない限りお前は魔法少女として生きてられる。首が吹き飛ぼうとクリスタルが壊れなきゃ死にはしない。安心して殺し合え」


「本当に殺しても死なないし、死んでも死なないんですよね?」


「あぁ。痛みと苦しみはあるが、死んでも記憶が無くなって元の生活に戻るだけだ」


 ネヴァの表情をじっと見つめ、その言葉を見定める。分かる能力があるわけではないが、その言葉から嘘は感じられない。にっこりと笑い、雨の降りしきる世界に私は脚を踏み出した。


「それと、お前にコレをやる。オレの能力じゃクリスタルを破壊できないからな」


 そう言って手渡されたのはクラシック風な時計の針だった。丁度十二時半の真っすぐな形をしており、短針を握れば丁度剣になる。先端は鋭く尖り、人の身体もこのクリスタルも破壊できそうな重さと鋭さだ。先端を指で触ると刺さった感覚はなくても指先に血が見える。


「行くぞ。一人目の場所までもう少しだ」


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