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魔法少女と願い事  作者: 天然無自覚天然難聴主人公
第六話 『隣町の魔法少女たち』
36/69

――魔法少女にならないですか

 ***


 夜遅くまで塾で勉強をしていた日。今年は受験もあり、私は毎日頑張っていた。ほぼ毎日塾に通い詰め、毎日同じこの時間に帰る日々。

 友達も応援してくれていた。放課後に一緒に遊ぶことが少なくなり、たまに休みの日に遊ぶ程度まで頻度は落ちた。それでもその日は全力で羽を伸ばして友情が薄まる事は無かった。鞄には一緒に取ったキーホルダーを沢山付けていた。


『はぁ~疲れた……今やってる所難しいんだよな~』


 腕を高く延ばし、固まった身体を伸ばす。早く帰ってお風呂に浸かりたいなど考えながら大通りからは外れた人通りの少ない道を通り、時短する。そんな時だった――路肩に止めてあったワゴン車の扉が開き、声を出す間もなく口を抑えられ中に引きずり込まれた。


 真っ暗な夜。真っ暗な車内。真っ黒に染まった悪い人に私は穢された。


 両手で口元を抑えつける手をどうにかしようとするも男の人の力は強く、何をしても剥がれない。乱暴な手つきで胸を揉みくちゃにされ、唯々恐怖と痛みが身体と胸を突き刺す。


 男の合図でその車は進み、景色が変わる。フロントガラスから見えた景色は鮮明だった。人が見えていたりもした。だが、誰も気づきはしない。それでも見える事を危ういと捉えたのか、私を押し倒し、上から圧し掛かる。男の体重と抑えつけられた口元で胸は苦しく、息もまともに出来なかった。


 私がそんな苦しい思いをしている間も男は自分の欲を満たそうと私の下半身をまさぐる。男の下半身から感じられる熱と、硬さを教えつけるように擦り付けられ、私はこの後を覚悟した。けれど、その覚悟は受け入れられるものではなく、泣き続けた。


 涙と、閉じる事も開ける事も出来ない口からは唾液がたらたらと流れ続け、酷い顔だった。私の顔も、男の手もぐちゃぐちゃに濡れた。それが嫌だったのか、男は手を入れ替え大きな舌打ちを私に飛ばした。

 でも、こんな事をする人間は怒りよりも欲が勝ってしまう。その濡れた手で再度私の下半身に手を入れ込む。耳元で何かを囁いているが内容など入ってくるはずがない。抵抗をしている間など無く、精一杯呼吸しなければならない状況。それだというのに私の身体はいう事を聞かず、荒い呼吸を続け酸素をまともに取り込まない。


 身体が段々熱を帯びるような感覚が湧き上がり、頭がぼうっとし始める。音も遠くなり始め、粘りつくような音も視界と共に消える。


『――おはよう。さらちゃん』


 眠りから覚めるような感覚。いつの間にか私は意識が飛んでいたようで、頬がヒリヒリとする理由も分からない。いつ服を脱がされたのかも分からない。男の視線の先を脚で隠し、縮こまる。


 声を出そうとするも謎の器具が装着してあり、声にはならない。腕にもアニメとかでしか見た事がない形の手錠をしている。抵抗は出来ない。したところで痛い目に合うのは私。相手は男二人。私では何があっても勝てる相手ではない。魔法でもない限りこの地獄から抜け出す事は出来ない。


 私の鞄でも漁ったのか、私の名前を何度も連呼しながらじりじりと距離を詰めて来る。両親から貰った名前を呼ばれたくないと思う瞬間が来るなど思いもしなかった。言葉に混じる不快感に反吐が出そうだ。


 私の目線にそれを合わせるように膝立ちし、脚を擦りながらゆっくりと近づく様に全身が震える。冷え切った肌は自分の涙が温かいと感じる程。それが一歩、また一歩と滲み寄る度に鳥肌が立つ。


『怖がらなくて大丈夫だよ。初めてだから怖いのは仕方がないよね。おじさんは優しいから』


 私の頬に触れる男の手、太腿を撫でるその手は男の言う通り優しく、熱い。脚を掴まれ、敷布団から逃げた努力は虚しく終わる。引きずられ、放り投げられる様に運ばれて倒れ込む私を男は見下す。その視線は欲にまみれた気持ちの悪いもので、底知れない恐怖を植え付けられる。


 思いっきり閉じた脚に手を掛けられ、力尽くに股を開かされる。どれだけ抵抗しようと男の目に映る私の場所を隠す事は出来ない。身体をねじ込むように入れ、挿れようと場所を探る。身を捩り、必死の抵抗をするも何故か男は更に興奮している。今までにない程涙を流した。今までにない程叫んだ。けれど口にはめられた物のせいで私の叫びは呻き声に変わってしまっている。


 丁寧にタイミングまで囁いてくれる男。カウントダウンが進むにつれ、私は必死で訴える。その様を笑顔で見ているこの男は人間じゃない。男に触れられている箇所の中で一番熱い場所が段々と深くなっていく。そして、『ゼロ』と叫ぶと同時に思いっきり突き上げられ、痛みがそこを中心に全身に伝わる。だが、痛がる暇も無く男は腰を振り続ける。速く、強く、突き上げるように。


 気持ちいの欠片も無い。ただどこまでも痛い。全身が揺らされる度に痛みに襲われ反射的に脚が締まる。男が何度も呼びかけるが全てを無視して顔を逸らす。流れ落ちる涙は何よりも早く布団を濡らす。顎を掴まれ、強制的に男の姿と視界の端に見える私のあられもない姿を見せられる。目を閉じれば頬を叩かれ、視線が合う事を確認してから肩に手を付き、さらに激しく私を襲う。


 私の中にある異物から広がる熱と痛み。気持ちの悪い喘ぎに混じる私の名前。唾液が染みるたびに口内に広がるゴムの様な味。男の汗臭さに混じる初めて嗅ぐ形容しがたい匂い。涙で滲んだ視界に写さなければならない男の顔。


 男が再度騒ぎ始め、天井を仰いでいる。おもちゃの様に扱われる私の痛みなど考えずにさらに速まる行為に私の体は自然に丸まった。それから逃げるように身体が動いた。けれど肩を引き寄せられ、迫るそれはさらに奥を突こうと止まらない。

『やめて』と声として届かない声を上げた瞬間、男は満足そうに私からゆっくりと離れる。男の気持ち悪い言葉で状況を察し、中から流れ出て来る感覚がそっと伝う。


 自由の利かない腕で目を覆い、あふれる涙を拭おうとする。真っ暗な視界の中、全身に男の熱が張り付き、舌が胸をなぞり、そのルートに残る唾液が不快感を与える。


 それからどれ程時間が経ってからだろうか。何も考えずに涙が流れ続け、至る所の布団濡れ、初めて嗅いだ変な匂いが部屋中に満ちて新鮮な空気が完全に消え去ったころ、新しい声が聞こえた。


『――魔法少女にならないですか』


 私の頭上にある男のそれのさらに上、天井付近を見た事も無い生物が浮遊していた。状況が分からずにその生物を眺め続け、現状を理解しようと固まった私に下半身から垂れ流れているものと同じ液が顔にかかる。目を瞑った瞬間、さっきと同じ声が耳元から聞こえる。


『貴方の願い事を叶えることが出来ますよ。それに、魔法少女になれば人間なんて簡単に殺すことが出来ますよ』


 もごもごとその謎の生物に問いかける。言葉としては捉えられないような言葉にそれは答えた。


『――本当です。さぁ一緒に唱えましょう。血濡れた朱殷の棺に願いをトランスフィグラーレ――』


 完全に二人の息の根が止まり、静かになった部屋には私の荒い息遣いだけが響く。変な匂いに大量の血が混ざった異臭が更に吐き気を催す。私の手は男たちの血によって汚れてしまっている。手だけではない。心も身体も、全てこの男たちに汚された。ぽろぽろと流れる大きな涙は虚無感からあふれ出た涙。


 私は人を殺した。もう、戻れない。私は犯された。もう、戻らない。けれど、戻りたい。そんな願いが生まれた。


『叶えられますよ。魔法少女を殺せばいいのです』


 ***


「人なんて簡単に殺せるのよ。男の人でも、一人じゃなくても。力にならなくても」


 腕を抑えつける手が首に移り、気道を絞められる。とっさに私は鞄からステッキを取り出し、刃を彼女の首元に当てた。


「……私も今は変身していませんけど? 一般人を貴方は故意に殺せるのですか?」


 刃を向けた時に手が緩まり、気道は空いた。何をしても私の方が彼女を殺す方が速い。けれど、彼女の言う通り私の手は震えている。刃先が少し掠り、一滴の血が刃を伝って落ちる。


 暗い路地裏には私たちの影は無い。ここで彼女を殺してもバレる事は無い。けれど今の彼女は魔法少女ではない。私はただの人殺しになる。


 彼女の真っ黒な瞳に映る自分は酷く怯えている。心臓がバクバクと大きな音を立て、涙を浮かべている。首を絞められている体勢ではなく、私が人殺す事を怯えている。今の私はただの女子高生。目を合わせる彼女もただの女子高生。私が変身しても殺すのは女子高生。


 ステッキを握りしめたまま腕を大きく広げて抵抗を示さずに彼女を見つめる。


「……甘いね。悪い人に襲われちゃうよ」


「自分の事を言ってるんですか?」


 視線を合わせ、お互いの顔を覚える。彼女も魔法少女なのには違いない。けれど、今はただの一般人。私は人殺しになりたいわけじゃない。きっと彼女もそう。全く力の入ってないこの手が証拠。


 お互いに視線を絡め合って数分。彼女の気も済んだのか、手を首から離す。ステッキを一瞥し、再度顔を近づけられる。


「次は無いよ」


 私の唇に同じ柔らかい感触を残して立ち去っていく。その行動の意味を理解できずに口を開けながら遠く消えていく彼女を見送る。


「懸命だね。あの状態の彼女を殺しても力は溜まらない」


「なんで私、キスされたんですか?」


 どこからともなく現れたウィルネさんに意味を聞くが、突っぱねる言葉しか返ってこなかった。服に付いた土埃を払い、ふと空を見上げる。真っ暗な路地の上には赤い夕陽が輝いていた。


「強運の魔法少女はまた明日にしましょうか」


「一人ぐらい殺してから家に帰ってくれ。誰かさんのお陰でキューブの消費が激しい」


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