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魔法少女と願い事  作者: 天然無自覚天然難聴主人公
第六話 『隣町の魔法少女たち』
34/69

鉄の処女よ、刺し殺しなさい

「あっ、良いこと思いついた! 本当に便利ですねキューブは!」


『トランスフィグラーレ』と唱えて再度魔法少女に変身する。先ほどまでの傷は完全に癒え、痛い所は一つもない。すっかり元気になった身体で私は大通りへ駆けだす。

 すれ違う歩行者は私の意図をくみ取ったように身を引き、私が駆け抜ける道が開く。公道を悠然と走る高圧ガスと書かれた警告表示の車両に目を付けタイミングを見計らうように並走する。


 突然そのキューブと入れ替わり、驚いた男性が後ろに倒れ込む。突然の事に周囲が騒めく中、私は一言だけをかけて歩道を駆け抜ける。すれ違う歩行者は私の意図をくみ取ったように身を引き、私が駆け抜ける道が開く。公道を悠然と走る高圧ガスと書かれた警告表示の車両に目を付けタイミングを見計らうように並走する。


 脚に力を込めて一気に跳躍し、驚いている運転手にステッキを向け強制的に位置を入れ替える。視界が変化した瞬間に車内に立ち込める汗臭さが鼻を通り抜け、顔をしかめる。精一杯足を延ばしてアクセルを踏み倒して加速しようとするもギリギリ届く程度。視界の大半がハンドルで隠れてしまう。怒鳴るようにウィルネさんを呼びつけ、アクセルを踏ませる。


「どうしてボクがこんな事をしなくちゃならないんだか……普通は姿を消していっ……!」


 文句を言うウィルネさんもろともアクセルを踏みつける。今までに踏んだことの無い感触と想像以上にウィルネさんの抵抗を脚裏で感じながら大きく響くエンジン音に首をすぼめる。大きく腕を上げ、その音に負けない程叫ぶ。


「インヴァート~~!!!!」


 視界が暗転すると共に鉄がぶつかり合う音が聞こえ、衝撃と共に身体が宙に浮く。だがすぐに視界に光が差し込み、目を見開いて驚く拷問の魔法少女と目が合う。車と鉄の処女の砕け散った破片が彼女驚く表情を掠め、嫌な音が背後から聞こえ始める。薄い笑みを浮かべた刹那、また視点が変わる。それと同時に衝撃音が髪を揺らし、爆発音が耳をつんざく。


 四、五十メートル離れた位置からでもその黒煙はハッキリと捉えられる。彼女の能力では避ける事は出来ないだろう。防いだとしてもここからでも酷いと分かる規模の爆発だ。無事では済まない。


「キューブはごめんなさい。それより彼女はまだ生きてますか?」


 背中に足跡をくっきり残し、身体についた汚れを拭き取るウィルネさんに視線を向ける。案の定私の求めている答えではなく、無表情の冷たい視線が返ってきた。


 苦笑いをしながら誤魔化し、小さく手を合わせて謝る。怒られるかと思ったが、何も言わずに爆発方向を指す。鉄の鎖が絡み合う音が聞こえ、とっさにその場を離れる。


「捕らえるには相性最悪ですね!」


 右半身は焼けただれ、美しいと思った面影はどこにもない。光沢のあったロングヘアーは焼け焦げ、縮れ、爛れた肌に張り付いている。朱殷色の服も焼け焦げているが、血なまぐささは変わらない。


 あれだけの傷を与えてもその闘志と私を捕まえようとする執念は変わらない。彼女の防御は固く、これ以上私が致命傷を与えられる攻撃手段は無い。近づく事さえ出来ないのが痛手だ。


 辺りを見回し何か攻撃の起点となるものを探していると、ウィルネさんがまだどこかを指しているのに気が付く。それは空高く、太陽を指していた。何を伝えたいのか考えているとその太陽は肥大化した。


 違う――!! 太陽は今私の真後ろにある……!!


 その思いもよらない現象に思考が遅れる。どうするべきか考えているとその光が閉ざされた。


「ファラリス! 燃やして!! 鉄の処女よ、刺し殺しなさい……!!!!」


 空に牛が唐突に現れ、光はその体内に飲み込まれる。そしてその牛を赤い炎が包み、それをさらに鉄の処女が覆う。私を閉じ込める時に使ったやつとは違い、大きく、長い針が扉が閉まるに連れて牛を刺す。二重、三重とそれが重なり、鉄のぶつかり合う音が辺りに響き、巨大な影を街に落とす。


 息を荒げながらも、彼女は封じる手を緩めない。私の事を気にも留めずにその能力を全て今現れた太陽に使っている。今のうちにと思い、ステッキを再度握りしめると眩しい光が差す。


 思わず目を向けると、太陽の光にも負けない光が隙間から漏れ出ている。熱が伝わり、汗が滲む。それは完全に第二の太陽。


「光の魔法少女かな。派手に暴れすぎたようだね」


 中心部から赤く光り始め、鉄の処女の顔が熱で歪む。隙間からはオレンジ色に溶け切った鉄が漏れ始め、中心に囚われていたはずの太陽は鉄の処女の腹を突き破る。


「サン・アターーック!!」


「インヴァート!!」


 もう遠くに逃げられるキューブは無い。必死にステッキを振り、出来るだけ遠くに逃げ延びる。背後で落ちて来た太陽とビルがぶつかり、大きな爆発音と共に皮膚を溶かすような熱気が身を焦がす。


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