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魔法少女と願い事  作者: 天然無自覚天然難聴主人公
第六話 『隣町の魔法少女たち』
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――いらっしゃい

「あれでよく生きてますね……魔法少女ってそんなに死なないんですか?」


「あぁ、基本的に魔法少女はクリスタルを破壊されなければあの状態でも死ぬ事は無い。クリスタルが身体の本体だ。キミがどれ程傷を負っても再度変身すれば傷が消える理由もそれだ」


 薄々そんな予感はしていたが、重要な事を初めて知らされる。前にもこんな事があったのを思い出し、静かにウィルネさんを見る。軽く両手を合わせ、謝っているが許す気は起きない。どうせまだ何か言っていない重要な事があるに違いない。私は内心で溜息をついた。


「それと、彼女は魔法少女を理解しているようだね。口を塞いでいる」


 まだ、重要な事を隠していたのかと呆れながらも再度確認する。確かに口には縄を咥えさせられており、言葉を喋れないようだ。ウィルネさんに冷たい視線を戻し、話を続けてもらう。


「……魔法少女から人に戻るにはボク達に呪文を聞かせなきゃ解けない。だから気を付ける事だね。口にも、そして、横にも――」


「――貴方は処女?」


 ウィルネさんの消えた瞬間、彼女が真横にまで迫っていた。ロングヘアーの髪を縦に垂れ、身体ごと大きく顔を傾けている。二重の大きな真っ黒な瞳、毛先まで真っすぐ光沢のある髪、それに合う高身長な姿は見た目だけで言えば美しい。だが、その美しさも全てを壊すような朱殷色に染まった服から漂う匂い、物騒な鎖を大きな音を立てながら腕に巻きなおす行動。その綺麗な容姿さえ怖いと感じてしまう。


 私は大きく飛び退き、ステッキを彼女へ向ける。だが、彼女にまだ戦う意思はないように再度同じ質問を問われる。固唾を呑み『そう』とだけ答える。彼女は嬉しそうに身を捩じり大きな笑みを浮かべ、鎖を勢いよく引っ張った。


「そうなのね! 貴方は処女なのね! 綺麗だわ。凄く綺麗だわ……!!」


 その鎖に繋がれていたのは先程まで彼女が座り込んでいた鉄製の人形だった。それが勢い良く引き寄せられ壁に衝突し崩れたコンクリートと共に埃が舞い上がる。そしてその鉄の人形、いや、棺桶とも捉えられるものから血が滲む。私はそれを見た事があった。


「それって、鉄の処女ってやつ? 物騒な物持ち歩いてるね」


 こちらからの質問に答えるように舞い上がった埃を払いのけながらそれに手を掛け、片開きの扉がゆっくりと開く。それと同時に中から倒れ落ち、消えていく魔法少女の姿が目に入る。一瞬見えただけでもその傷は凄まじいものだった。全身が真っ赤に染まり、傷の無い肌を探す方が難しい。


「これはね、針を短く改造する事によって早死にはしないし、尚且つ血が沢山出るようになっているんです」


 自作の工作をウキウキで自慢する小学生のようなテンションで彼女は答えた。私にはそれの良さが全く伝わらない。ただただ悍ましいだけだが相手の反感を買わないように苦笑いを浮かべる。だが、この状況で笑う事は不適切だと思う程に嫌な空気。彼女に殺された魔法少女達への居たたまれない気持ちが溢れる。


「それとね、もう気付いているかもしれないけど貴方もここに入って貰うからね」


「それは……インヴァート!!」


 完全に油断しているその隙に能力で背後に回り込んだ。だが、突き立てようとした刃は振られた鎖より防がれ、その後ろに付く鉄の処女が身体を強く打つ。その大きさ通りの衝撃が入り、大きく吹き飛ばされて貼り付けにされていた少女とぶつかる。


 えずくような微かな呼吸音が聞こえ、ステッキを彼女のクリスタルに突き刺した。今までの殺しとはまた違う感覚。


「あぁ、その子は処女ではなかったので虐めていました。お優しいですね」


「自覚あったんだ。自分が優しくないって」


 鎖をゆっくりと持ち上げ、優しく微笑む。確かにその能力で優しくは出来ないのかもしれない。だが、せめて殺し方を変えてあげるなどの慈悲も無いのかと少し軽蔑する。


 再度ステッキを構え攻撃を試みようとするが、やはり隙がない。どこから攻撃しても防がれると分かる。ただの魔法少女ではない。彼女もまた歴戦を生き抜いてきた魔法少女なのだろう。


「インヴァート――!」


 上に吹き飛んでいた瓦礫と位置を入れ替え、頭上を取る。まだ私の位置を捉えられていない。ステッキを強く握り締め、脳天を目掛けて振り下ろす。鎖を引こうとも避ける動作も見られない。ただ少し何かを呟くだけ。私の能力なら逃げる事は簡単だ。これが罠であったとしても問題無い――


「――いらっしゃい」


 目の前に鎖で繋がれているはずの鉄の処女が現れて口を開いた。その瞬間、細く短い針を無数に付けた扉が右半身を貫く。少量の血が大量な刺し傷から溢れ出し、今までにない激痛が技を悲鳴に変える。そのまま針にずぶずぶと刺されながら扉に巻き込まれ、指一本の隙間もない針の集合体の中に押し込まれる。


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