何が起こって……
「インヴァート!!」
目前への一気に距離を詰め、ステッキを振り上げる。予想通りその攻撃を彼女は見切り、カウンターを合わせに来る。だが、刺す直前にもう一度『インヴァート』と唱え、彼女との位置を入れ替える。
これで正面からの攻撃は一気に背中を突く不意打ちへと変化した。だが、振り向きざまの一撃は悠々と避けられ、雷が私を目掛け飛来する。
ギリギリまで引き付けながら、当たる瞬間で位置を変えて逃げる。『被雷針』を受けた私に向かってこの雷は私を追いかけてくる。下手に位置を変えても追跡は止まらない。当たる寸前のせいか、電気のヒリヒリとした感触が流れる。
寸前で避けた雷は地面を穿ち、瓦礫が辺りに散らばる。私の戦いやすいフィールドを存分に使いながら相手を揺さぶる。隙ができれば躊躇無くクリスタルを目掛け、微かな切り傷を地道に与えていく。
雷鳴が鳴り響き、焼け焦げた地面をさらに穿つ。私と違い一撃がとても重い。直撃すれば痺れ、十分に殺せるだけの隙を与えてしまうだろう。
攻防一体の殺し合いが長く続き、そろそろ変化が欲しく感じる。ウィルネさんから教わった新しい技のお披露目しようと私は少し距離を取り相手にステッキを向ける。
「――ペルヴェルス……!」
今までに無い言葉に相手の警戒が見える。だが、明らかに分かる変化は何もない。しかし、技の発動は成功している。彼女はこれから何かが起こる事を警戒し、左足を少し前に出し、何かの事態に備えている。
「インヴァート」
同じ様に彼女の目の前の瓦礫と入れ替わり、刃を突き立てる。けれど私は刺す動作をしない。ただ刃の先端を向けているだけ。だが、そこに人を刺す感触が伝わる。
彼女も困惑した表情を浮かべている。自ら刃に向かって距離を詰めたのだから。
『――この技は至ってシンプルだ。左右上下前後の感覚を入れ替えるだけ、攻撃などは出来ない』
『凄いですけど、簡単に慣れそうなんですが……』
察しの悪い私に少し頭を抱え、考える。
『例えば、一気に敵の前に現れたとしよう。相手は警戒し、距離を取ろうと後ろに飛び退いたとしよう。全て入れ替わっているとどうなるかな?』
『前に突撃してくる……?』
『その通り――』
刃が身体に深く刺さっているのにも関わらず、彼女は後ろへ下がろうとしない。それどころか自らさらに刺されに来る。勢いよく拳を振り上げるが、私に向かってその拳が振り下ろされることはない。
何が起こっているのか分かっていない彼女の顔に汗と苦痛が滲んでいる。私から離れたくても離れられないのだから。
「な、何が起こって……ッ!」
話せる余裕があるようなので、軽くステッキを捻って傷口を広げる。離れずに密着してくる身体から血が噴き出し、私の服を汚す。
本能が後ろに離れようとしているのか、いつまで立ってもこの刃から抜け出す様子はなく、私の手に生温かい血が流れ続ける。




