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魔法少女と願い事  作者: 天然無自覚天然難聴主人公
第五話 『二人の少女』
23/69

面白いじゃん――

 私の願いはこの世界に留まる事。いつまでも殺し合いを続ける事。力を溜めていった私はさらに力を引き出す。灰色に薄汚れた包帯を赤く染めれば染める程力が強くなっていく効果。これによりさらに戦闘は激化する。染めるのは相手の血でなくても良いからだ。攻撃をあえて受け、腕が壊れるか壊れないかのスリル。一発逆転の興奮。


 私は気が狂っている。そして今、また一人殺して強くなれる――


「こんなもんで死ぬわけねーだろうが」


 炎の魔法少女に私は計二発も腹部に直撃させている。今まで通りなら既に勝負は決まっていたはず。だが、彼女は立ち上がった。口から垂れる血を拭き取り、再度炎を灯す。彼女を燃え上がらせるのは願い。同じ願いでも形は全く違う。歪みの無い。真っすぐな願い。


「あいつと一緒に――っふ、まだまだ死ねないな~!」


 私と戦っている最中にも関わらず、彼女は雷の鳴り響く方を見つめる。一息ついて、再度私と視線を交え、彼女は拳を固く握った。そして、その拳を打ち合わせ、その手に炎を纏い始める。その炎は彼女の瞳と同じ、信念に満ち溢れていた。そして、その信念に呼応するかのように燃え上がる炎はどこまでも熱く、眩しく燃えている。


 燃えるような瞳の彼女と睨み合い、同時に踏み込む。同時に拳を突き出し、受け、吹き飛ぶ。纏う炎が遅れて追いつき、そしてまたその速さに後れを取っている。


 再度拳がぶつかり合い、衝撃波が辺り伝わり、砂埃が舞う。紙一重で躱し、隙を狙い、拳を突き出す。受け流し、空いた胴を殴る。一進一退の攻防。いや、どちらも引くことなく攻撃を続ける。絶え間なく振り下ろされる拳、力は互角。だが能力の差は存在する。


「寒いな少し!」


 一瞬にして温度が上がる。その空気は肺を焼き焦がし、呼吸を苦しいものへ変える。その隙を見逃すはずもなく、右ストレートが顔面に直撃する。大きく後ろへ下がり、焼けた肺にまだ吸える空気を送り込む。


「ッグ……ガァハッ」


 呼吸が痛い。空気が痛い。死ぬ。本当に死ぬ。


 暑さで脳が溶けてしまった。この状況でも胸の奥にくすぶる興奮。今までにない感覚。いつもなら既に逃げていた。だが、このタイマンを張れる初めての機会を長く楽しみたかった。その欲がこの境地へ運んだ。


 薄っすらと笑みを浮かべ、深く息を吸う。激痛など関係ない。深く、大きく息を吸う。薄っすらと笑みを浮かべ、構える。


 無呼吸であいつを殺す。時間は持って数十秒――いや、五分間かな……?


 全力、全てを振り絞る。火事場の馬鹿力も自力で引き出す。今出せる最速。今出せる力の全て、一挙手一投足に全てを懸ける。


 この、一歩にも……!!


 地を揺らし、自分の腕を傷付ける勢いで拳を握り、肩を犠牲に殴る。空を切る腕すらも熱い。炎を纏った拳は尚更だ。だが、止まる理由にはならない。一発、二発と拳が掠り、三発四発と拳を掠らせる。やはり互角。共に食らい、共に食らわせる。一歩踏み込むたびに瓦礫が飛び、炎が舞う。完全な二人だけの世界。


「これで終わらせる!!」

「来いよ!! 雑魚が!!」


 拳にまとわりつく炎。いや、炎がの拳と言った方が正しいだろうか。腕に巻きついた炎は面積を広げ、巨大な拳となる。その攻撃を目の前に上がった口角の隙間から血が流れだす。その血を腕に巻かれた包帯で雑に拭き取り、構える。両者の視線が絡み合い、その燃えた瞳に笑いかける。敬意であり、功労である。この戦いもこの一撃で終わる。


 一拍――最小にして最大を溜める。


「ラグナ・フレイム!!!!」

「終誓・ディヴァイドブロー!!」


 拳と拳がぶつかり合い、今までにない衝撃が伝わる。その衝撃は空気を揺らし、地を揺らし、骨を砕く。腕に伝わる衝撃の後にその痛みは消え、不安定になった足場事吹き飛ぶ。


 その勢いは燃え盛っていた炎をも消し飛ばし、ゆっくり罅が入り崩れていく建物の音が耳に残る。両者共に吹き飛び、遠くの何処かに背中を打ちつける。


「……おいあたしの願いを叶えろ」


「ごめん。さっきのはまだ死んでないんだ。だから……」


 コンクリートが割れ、灰色の粉塵が舞う中、静かに瓦礫の中に横たわる。包帯はこれ以上ない程赤く、紅く、汚れている。


「いいね……面白いじゃん――」


 ******


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