だった場合、
ウィルネさんは力を集める事だけを考えている。私の願いのためではない。ならばウィルネさんの願いになる事だった場合、力をくれるのではないだろうか。
彼女と決めた作戦は理にかなっている。圧倒的な力を見せつけられたのにも関わらず、勝てるかもしれないと、胸を熱くさせる程だった。そしてウィルネさんも聞いていた。算段はしっかりと伝わっているはずだ。
そしてウィルネさんは私より冷たくて残忍な生き物。この提案に乗るだろう。
「もし、私が雷の魔法少女を殺し損ねたら……代わりに灰色の魔法少女を殺す」
裏切りと捉えられてもおかしくはない。だが、この保険が無ければウィルネさんは乗らない。
もし私が雷の魔法少女を殺したならば。もし彼女が炎の魔法少女を殺し、それを私が殺したならば、私は彼女の名前を知っている。殺す事はいつでも出来る。彼女が炎に負けるとしても私が名前を呼び、殺す。それでもプラスマイナスはゼロだろう。どちらにしてもウィルネさんに利益が出る。
この提案は大きくウィルネさんを揺さぶるだろう。彼女を殺す事も厭わないと宣言したのだ。これ程美味しい話は無いだろう。そして、私の予想通り悩んでいたウィルネさんの表情は明るくなり、不気味な笑顔を浮かべた。
「……それなら構わないよ。けれど、力には痛みが伴う。覚悟はあるのかい?」
「願いのためです。なんだって受け入れますよ」
覚悟など当の昔から決まっていた。真っすぐに見つめる私の瞳と、震えの無い声がその証明だった。その言葉を聞いたウィルネは了解したように両手を合わせ、丸い目を閉じる。
真っ黒なその身体から暗い光が漏れ始めて段々とその光は明るさを増していき、その中心の暗さは反対にさらに深い黒色へと変わっていく。前に見た時よりもその暗さは増し、空気を歪まし、真っ黒い核はどこまでも深淵が続く、底知れない黒い力はまるでブラックホールの様だ。
初めてウィルネさんと出会い、魔法少女になる事を決意した日と同じ光景。ゆっくりと目を開け、差し出された光をそっと受け取る。あとはこれを胸の中に入れるだけ。
あれからそう時間は経っていないにも関わらず、ここまでの道のりは長く途方もなかったように感じる。これで私は強くなれる。私の願いのために、妹の命を助けるために――
そっと胸に押し当て、スッと入って来る熱を感じる。今まで私の中をぐるぐると巡っていた魔法少女の力が新たな力に反応し、全身が熱に包まれる。
「っん、ぅう……! っ!!」
もう二回目だというのに、身体中を熱が暴れまわるこの感覚には慣れない。胸の奥が焼き焦げるような熱。その異常な感覚はすぐに身体に広まり全身が燃えているかのように熱い。一回目よりも激しい熱が注ぎ込まれ、その激しさに私は身をねじる。心臓の鼓動に合わせて熱の核が膨張していく感覚があった。
「っはぁ……はぁ……! っく……」
力に伴う痛みに覚悟はしていたが想像以上の激しさ。しかしこの程度の痛みは何度か受けたことがある。充分に耐えられる範囲。
熱が身体に沁みこみ、この感覚にも慣れる。上がった息と火照った身体を落ち着かせようとその場に座り込む。
「ちょっと多くないですか?」
「……キミはどうやらそう簡単に交代しなさそうだからね」
頭を掻くウィルネさんにそっと勝ち誇ったような視線を向ける。頑なに力を与えようとしなかったウィルネさんの思考を変えたのだから。魔法少女を早々に取り替えるつもりだったウィルネさんの考えを変えたのだから。
「やっと、私を認めてくれたんですね」




