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魔法少女と願い事  作者: 天然無自覚天然難聴主人公
第三話 『変化』
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これが上位の力

『魔法少女って強くて、可愛くて、いつか私もあんな風になってみたいです!』


『最近の魔法少女は可愛い子ばっかりですからね。最近の推しはまだ無名ですがブラウン色の衣装を纏っている子です』


 テレビを付ければ魔法少女に夢見る幼い声や、まるでアイドルとでも勘違いしているような人々の賞賛が溢れかえっている。だが、どれもただの幻想に過ぎない。


 実際はただの殺し合いに過ぎないのにも関わらず、彼ら彼女らにはとても美しく見えている。私も昔はなってみたいという好奇心はあった。けれど、いざ魔法少女となれば、血塗られた殺し合いが待っているだけ。それでも『願いが叶う』と言う甘い報酬は全てを秤にかけるに足りる程魅力的だ。そして今や私もその甘い蜜にすっかり絆された。


「――本当に嫌になっちゃいますよ。どうして魔法少女はこんなにも血の気が多いんですか」


「キミも大概だろ。引っかかった魔法少女を全員殺しているじゃないか」


 あれから数日、放課後や休日も魔法少女と戦うだけで時間を過ごして来た。現在の合計人数は七人。今、散って行った子を合わせて八人。クリスタルを破壊して殺す事への抵抗も薄れ始め、今はいち早く力を溜めて願いを叶える事だけを考えている。


 物が無数に散りばめられた広い空間、反転先となる物体を多く設置し、自分に有利な地形を作り上げて待ち構えているだけで勝てる。所々に深く抉られた跡や、罅割れた箇所など、いくつもの種類の攻撃の跡が点在し、数日間にわたり何名もの魔法少女と戦ったのが目に見えて分かる。


「あとどのくらい何ですか?」


「新人狩りだけをしていても効率が悪いから一発大きな奴を潰さないと。ボクもそろそろ見応えが薄れて来ちゃったよ」


 特にウィルネさんのために見応えを作る気は無いが、確かにやって来る子達は単調で面白みが無い。武器を所持する系の子が多く距離も向こうから詰めてくるため殺りやすい。


「新人になる娘の多くは武器系だね。炎とか雷を操る子は強いから死ににくいんだ。キミは運が良いよ」


 何度か遠くの方で激しい戦闘音を聞いたことがある。天を焦がすような稲光が奔り、その直後に響く爆音。周囲全体を焼き尽くす勢いの火柱が辺りを焦がす熾烈な戦い。とてもじゃないが、近づけない。


 一歩でもその戦闘地帯に足を踏み入れればその瞬間に燃え上がり、稲妻が身を貫くと肌で感じる。五人、八人と倒してもそんな感覚に襲われ、立ち尽くしてしまう程。


「もう一回見に行ってみるかい? 何かあれば手柄を横取りできる」


 そう上手く行くとは思っていないが、私は呪文を唱えて変身を解いた。数分の移動の末、一般人としてその紛争が一番起こる地帯に足を踏み入れる。ここも何も無ければただの街中。一つ向こうの通りに入れば商店街が並び、活気のある街の姿が目に映る。


 ほかほかで肉々しいコロッケを片手にいつ起こるか分からない戦闘を待つ。辺りをふと見まわせば熱で溶けたのであろう鉄格子が目に入る。そしてその前を颯爽とランニングしていく街の住人、斜め向かいのベンチで美味しそうに同じコロッケを頬張る女子学生、争いが絶えないというのにこの街には不穏な空気が一切流れていない。商店街から漂う美味しそうな匂い、遠くで子供たちがはしゃぐ声、そんな天気の良い穏やかな街に似つかわしくない警報音が響き渡る。


 暗雲が立ち込み始め、辺りを一瞬にして暗く重い空気に変える。ピリピリとした空気感が街全体に一瞬で広がり、じりじりとした熱気が身体に纏わり始め、もうすぐそれらが姿を現すと悟らせる。


 家から流れるように住人たちは慣れた足取りで列を作りながら移動していく。そんな非日常的光景は日常として住人たちに消費されている。十分ほど鳴り続けていた警報音がプツリと事切れたかのように止まり、身体に電撃が走るような感覚が告げる。『今すぐここから離れろ』と。未だ姿も見せていないというのにこの圧力、生身の人間では立っている事がやっとだろう。


 急激な温度上昇に頭がくらくらとし始め、胸に手を当て変身しようとするとウィルネさんに止められる。口を開こうとすると口を抑えられ向こうを見ろと言わんばかりに視線を誘導される。


「~~っすっげーな!! これが上位の力か……!!」


 向かい端で同じコロッケを食べていた女子学生が目を見開きながら一瞬にして変化した環境に目を輝かせている。見つからないように身を屈め、その様子を観察する。何も見えない隣に話しかけ、返事は全く聞こえないが会話をしている。明らかに彼女の目にしか見えていないあれと話している。そして、私にも私しか見えない存在が横にいる。そう、彼女は魔法少女だ。


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