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二人の鞆子 (5)

 「来るよ・・但し、惑わされないようにね。

 先に来るのがどうでもいい鬼なのかそれとも・・・」

 そう言いながら、鞆子は印を結んだ。

 「いた。」

 「見えるのかい。」

 充四郎は先に現れた、あたまに尖った瘤を持った鬼に槍をつけた。

 「そいつじゃない。

 あんたが相手するのは・・・木の上。」

 鞆子は大きく跳びずさりながら声を上げた。

 充四郎は侍である。木の上からの気配を感じ取り、すぐに槍を繰り出した。

 「おっと、危ない。」

 木の上から飛び降りてきた鬼は、空中で身をくねらせてその穂先を躱した。

 それでも、地に足がついた時にはその左の肩口に傷を負っていた。

 「なるほど、昼間の戦いというのは難しい。

 思ったように躰が動かぬわ・・それに反応も鈍くなっているしな。」

 鬼は傷ついた左肩に手をやり、その掌についた血をペロリとなめた。

 その姿に、充四郎は槍を繰り出した。

 その攻撃に牙鬼の身体に傷が増えていった。

 間合いで負けている。

 ならば・・・牙鬼は大きく踏み込み、自分の腹で槍を受けた。

 腹を槍が貫く。

 その穂先が背中に抜ける。

 その時、牙鬼は片手で槍の柄を握り、もう一方の手で充四郎の身体を引き寄せた。

 槍はズブズブとその柄までが牙鬼の身体を突き抜けた。

 頃を見張って、槍の柄を強く握った牙鬼は、充四郎を抱き寄せたまま近くの木に走った。

 身体を突き抜けた槍の穂が木に深く突き刺さった。

 牙鬼は槍の柄を握った手を、充四郎の首に回した。

 このまま己の牙を伸ばして、この男の喉笛に喰らい付けばここでの勝負は終わる。

 だが、それは大童丸に止められていた。

 「俺達は夜動くもの・・・」

 牙鬼は充四郎に話しかけた。

 その充四郎は自分の動きを封じる手を解こうと、頻りと身体を動かそうとしていた。

 「夜であれば、この程度の傷は・・・」

 牙鬼は自分の肩口の傷に眼をやった。

 その隙に充四郎は身体を離そうとした。

 「そうはいかんよ。」

 牙鬼は自分の腕に力を込めた。

 「簡単には癒えぬなぁ。」

 牙鬼は先程の言葉の後を続けた。


 牙鬼が木から飛び降りるとほぼ同時に、大童丸は呪を鞆子に向け発した。

 先に印を結び準備していた鞆子もまた、呪が発せられるのを感じ、その主の基へすぐに念を放った。

 その呪と念が空中でぶつかり弾け飛んだ。

 それは鞆子に近い位置だった。

 ほんの僅かの時間的な差が、大きく結果を変える。

 鞆子は念を放つと同時に、次の念の準備をした。

 大童丸は自分が発した呪が弾けるのを見てから、次の呪を発した。

 今度は鞆子の方が時間的猶予を得た。

 だが、鞆子は、また次の念の準備を始めた。

 なかなかやるな・・・大童丸は自分に当たりそうな念を、防御の呪で弾き飛ばした。

 しかし、それがまた鞆子に時を与えた。

 早いの、遅いのと言ってもこの二人にとってはそれは一瞬の差。だが、その差が勝敗を分ける。

 その一瞬の差に鞆子は遂に勝った。

 薄暗い木の陰にある相手の身体の動きが止まった。

 「私の勝ちの様だね」

 鞆子は身動きできない大童丸に、警戒しながらゆっくりと近づいて行った。

 「充四郎、済まないがもう暫くそうしておいておくれ。

 まだこいつから気を離す訳にはいかないからね。」

 そう言う鞆子の手にはいつの間にか刀が握られていた。


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