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二人の鞆子 (3)

 それから三日間、鞆子(ともこ)は自分を狙う者を焦らすような行動ばかりを取った。

 少し木々の茂る所に入っては、すぐに出て来る。そして木々の茂る所に入る時間を長くしてみたり、短くしてみたり。

 さてまた入る場所に疎林を選んだり・少し深めの林だったり、ある時は完全な森だったり・・・但し、森に入る時には時間を短くした。

 「なぜこんな事ばかりする。」

 充四郎(じゆうしろう)は昼の時間に鞆子に尋ねた。

 「相手を見定めているんだよ。」

 「見定めている・・・」

 「ああ、奴等はここのところずっと付いてきている。

 だが、手は出してこない。

 だから、どう言う状況になれば動くのか、それを見定めるのだ。

 まあ、相手を焦らし、精神的に追い詰めるのも兼ねているけどね。」

 「精神的に追い詰める。とはどう言う事だ。」

 「まあ、それ程大袈裟なものじゃあないけどな。

 考えてみろ、こう毎日付いてくるって事は、何だかの理由で、早く決着を着けたがっているという事だろう。

 それを小屋って焦らすと、焦りと苛々が募り、その上、自分の存在が知られているのではないかと言う、不安を駆り立てることが出来る。

 そうなれば事を強引にし済まそうと、行動を起こすに荒さが加わり、そこに隙が出来る。

 こっちはそこに付け入る・・そう言う訳だよ。」

 「今のままで何もないなら、ほって置いても良かろう。」

 「そうはいかんよ。

 あの和尚のせいでまたどこにどう動くかも解らん。

 こっちが不利な体勢に時に襲われては堪らんからね。

 なるべくこちらが策を取りやすく有利な形で、決着を着けるに越したことはないからね。」

 「では、明日からはどうするんだ。」

 「天気も悪そうだし、明日と明後日は外には出ないよ。」

 そう言って鞆子は笑った。


 「今日はいかがでしたか。」

 大童丸(だいどうまる)の付き人である末吉(すえきち)は自身の主人に尋ねた。

 「ははははは・・・今日も何事もなかった。」

 大童丸は何事もないかのように答えた。

 「それは残念でした。」

 かえって末吉の方が無念の表情を現した。

 「気にするには及ばん。

 時間はいくらでもある。」

 鞆子が思っているほどに大童丸に焦りはなかった。

 「明日はどうなさいますか。」

 「雲行きをみると雨が降りそうだから、明日からの二日は休みだな。向こうも動くまい。」

 大童丸は焦る様子は全く見せなかった。

 その二日の間の夜遅くに牙鬼(きばき)が大童丸の元を訪れ、あの二人を自分が斃すと言ったが、大童丸はそれを押し止めた。


 それから二日後。

 「よく降ったねえ。」

 鞆子は充四郎の部屋を訪れていた。

 「この様子だと明日も休みだね。

 足下がぬかるんじゃあ、とても戦いにはならないからね。」

 そう言うと、鞆子は充四郎の股間に着物の上から手を触れた。

 「昼間っから、止めろ。」

 充四郎はその手を払い除けた。

 また、大童丸にも動きは無かった。

 翌々日、

 「さて、今日が勝負だよ。」

 鞆子は充四郎に声を掛けた。

 いよいよか・・・充四郎は、部屋の隅に立て掛けてある槍に眼をやった。


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