蟷螂(かまきり)(2)
喜作はすぐに観音谷にある屋敷の情報を持って来て末吉に伝えた。
大童丸はその話を末吉から聞いた。
話しの中には、屋敷の規模やそこに居る者の話などがあったが、その中の一つの件が大童丸の興味を引いた。
それはそこを見張っている者が居るという事だった。
「例の僧侶の部下かな。」
大童丸はそう言葉にした
「まず、違うと思います。」
末吉はその言をすぐに打ち消した。
「報告に寄ればあの和尚様はここらを一度訪れ、それなりを確認しています。
故にあそこを見張る必要はないかと。」
「そうだとするとなぜそこに居るのか。」
「場所ではなく、人を見張っているとしたら・・・」
末吉の答えも煮え切らなかった。
「調べてみるか。」
そう言うと大童丸はすぐに立ち上がった。
二人は一刻半位で古ノ添に着いた。
そこで末吉には道を探しているように演じさせ、大童丸自身は姿を隠した。
観音谷の屋敷に着くと、確かに中を窺う者の気配がした。
「ちょっとこちらに降りてこないか。」
姿は見えぬ気配に大童丸は気軽に声を掛けた。
どう言う訳か、その男は大童丸の前に姿を現した。
「何をしていらっしゃる。」
大童丸は柔らかい声で続けた。
すると男は素直に自分の目的を答えた。
聞くだけのことを聞くと、大童丸はパチンと指を鳴らして、そこを発ち去り、末吉と合流した。
末吉は大童丸が話し始めるまで、自分からは質問を発しなかった。
二人は何も話さず、博多の宿に帰った。
その時にはもう夕食の時間になっていた。
膳部を構えさせ、末吉と二人だけになると大童丸は口を開いた。
「何か聞くことはあるか。」
そう言われて、
「何かありましたか。」
と、末吉は質問を返した。
「良かろう。」
と、頷き大童丸は話し始めた。
「日田に入る前に出会った時、例の四人組が話していたことを覚えているか。」
「鬼の事やら妖怪の事やら・・・」
「それもあるが、他のことだ。」
大童丸は末吉を試すように言葉を続けた。
「遼河とかえでとか言う者のことでしょうか。」
「それだ。」
「その二人について何か収穫が。」
「あそこに居るそうだ。」
「左様ですか。
ですがなぜそこまで・・・」
「あいつらの話しでは、この二人は大事な者らしい。」
「どのように。」
「詳細は分からなかったが、遼河という男の子は鬼と戦う力を持ち、かえでという女童は何か特殊な力を持っているらしい。」
「特殊な力ですか。」
「その内容はあそこを見張っている男も知らなかった。
だが、あの四人と坊主の所の二人、それに加えてこの小僧の力も計らねばならぬ。
お前には仕事をさせる者を二人捜せと言ったが、もう一人いる。急いで集めてこい。」
大童丸はそう言って話しを締めた。
それから日を置かずに三人の男が末吉に連れてこられた。
その三人に大童丸は別々に会った。
一人は虫篭を一つ持たせて観音谷に送り、一人は虫篭を二つ持たせて、自身と供に坊主の所の二人の出先に、最後の一人は当初の予定他は違い虫篭を三つに減らして喜作を案内に大男を含む四人組の所に、送り込むこととなった。
最初に四人組を追う者。。
男女二人組の動きに合わせるため、機を見ることとなり、観音谷に行く者もそこが遼河とかえでだけになる機会を見ることとなった。
そして大童丸はそれぞれの様子を影から見ることとした。
それを末吉に告げ、翌日には早速一人目の男が大童丸の元に呼ばれた。
そこで呼ばれた男は初めて仕事の内容を聞いた。
それは虫篭を開き、カマキリを外に出すだけ・・・余りにも簡単な仕事だった。
その割りに報酬は高く小金貨一枚をくれるという。気にすることは人に見られるな。と言うことだけだった。
簡単な仕事・・・男はほくほく顔で喜作と供に西に向かった。




