↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
13/69

接近・・遭遇(4)

 兵衛達の部屋は二間、その一つに四人が集まっっていた。

 夕餉の席で兵衞は小太郎に明日からの道程を話した。

 「また山道か・・牛が持てば良いが・・・」

 小太郎は溜息をついたが、反対することはなかった。

 そんな中で、小太郎は昼過ぎに見た者達のことを話し始めた。

 跫音を立てずに走る男達。その後ろに居た僧侶らしき男と伴に歩く者達。

 小太郎は熱心に話した。

 「その坊主というのは晴海ではないのか。」

 「紅蓮。」

 紅蓮坊の声が思わず大きくなるところを、巴が呵った。

 「気になるのは、跫音を立てずに走るという男達です。」

 兵衛が静かに言った。

 「忍びの可能性があります。

 それがもし・・・」

 兵衞はその後の言葉を飲み込んだ。

 「それなら、そいつ等を斃せば・・・」

 「私達は、人は斬りません。」

 巴がそれに釘を刺した。

 「ならばどうするのだ。」

 「明日の朝早くに、こっそり発ちましょう。」

 「逃げるのか。

 晴海は捕まえないのか。」

 また紅蓮坊の声が大きくなった。

 「その僧侶が晴海と決まった訳ではありません。

 それに・・・」

 兵衞の声は益々小さくなった。

 「我等にとって最も大きな目的は・・・」

 「あの二人を守ること。」

 「そうです。

 あの娘(こ)が身を守る術を取得するまで・・・」

 かえでのことを言われては紅蓮坊も頷くしかなかった。

 「解った。

 それではあんた達二人は真夜中に宿を出よ。」

 「あんたは何でも極端だね。」

 巴が紅蓮坊を揶揄するように言った。

 「俺と小太郎は多分奴等に見られている。」

 「そうだろうね。」

 「お前達二人は奴等には見られていない。」

 「何が言いたいんだ。」

 巴は焦れたように言った。

 「奴等に知られているのは俺と小太郎だけ・・・つまり俺達二人が囮になり、お前達二人は先に行く。

 こうすれば、俺達は二つに分かれたと見せられる。

 全部で三つ、ここの二つと先に居なくなった遼河達。

 どうだ・・・」

 紅蓮坊は自信があるのか無いのか妙な顔をした。

 「いいかもしれません。

 それであれば、先の二人が居なくなったのにも理由がつきます。」

 兵衞はその考えに頷いた。

 「じゃあ、あんた達二人は真夜中にこっそり出てくれ。」

 紅蓮坊はふんぞり返った。

 「それはいいけど、もしも相手が襲ってきたらどうするつもりだ。」

 巴は尚も難色を示した。

 「その時は、懲らしめてやる。」

 「戦うというのか。」

 「殺しはせん・・・ただ、少々痛い目を見て貰うだけだ。」

 「あんたの少々は当てにならないからね。

 絶対に殺すんじゃないよ。」

 「解っている。」

 紅蓮坊は自信ありげに応えた。

 「たまたま、でも駄目だよ。」

 巴は心配そうに続けた。

 おう・・・と紅蓮坊は声を上げた。

 「落ち合う場所は、秋月にしましょう。」

 兵衞が話しを締めた。


 兵衞と巴は真夜中に宿の裏口から外に出た。

 そこを見張っている者達は、紅蓮坊の巨体にばかり気がいき、それを見逃した。

 紅蓮坊と小太郎は早朝に宿代を払ってそこを後に、兵衛等とは違う道を行った。

 この二人を四人の男達がつけてきた。

 紅蓮坊はそれには気付いていたが、素知らぬ顔で道を歩いた。

 何処で来るかな・・・紅蓮坊はそれを考えていた。

 紅蓮坊は後をつけてくる四人を誘うように森の中に入った。

 後ろの四人は迷った。

 自分等があの大男を斃して手柄を立てるのか。

 それともただその行く手を見るのか・・・それもまたある意味手柄かも知れない。

 だが、話しは華々しい手柄に落ち着き、そこから四人は二人を追い越して先廻りをした。


 木の枝から縄が飛んできて、紅蓮坊の右手首に絡んだ。

 「ほう、先に石礫が仕込んであるのか。」

 巻き付いた縄を見て、紅蓮坊は感心したように言った。

 その間に左腕にも縄が絡み、両側から引っ張られた。

 「おっちゃん、俺が切ってやる。」

 「心配ない。」

 紅蓮坊は脇差しを抜こうとした小太郎を止めた。

 その時には左足にも縄が絡んでいた。

 そして右足・・・

 「おっちゃん。」

 小太郎は大声をあげた。

 「心配ないと言ったろう。」

 紅蓮坊はそう言うと、右手に絡みついた縄を握り、一気に引いた。

 その縄を握っていた男は木の枝から勢いよく地に落ち、悶絶した。

 それを見届けるまでもなく、紅蓮坊は左手の縄も引いた。

 こちらの男も木の枝から落ちたが、一瞬縄を緩めたため、地面に叩き付けられることはなかった。

 紅蓮坊は自由になった手で足に絡んだ縄を引き、足下に引き寄せた男の膝を踏み折った。

 「小僧を捕まえろ。」

 木の枝から降りた男が言った。

 「無駄だ。

 お前達では、あいつには勝てない。」

 紅蓮坊はそう言って笑い、小太郎を振り向いた。

 「木刀を使え。

 但し頭は打つなよ。当たり所が悪ければ死んでしまうぞ。」

 そうは言われても・・・小太郎は逡巡した。

 鬼とは戦ったことがある。だが、人間とは初めての戦い、手を抜けば自分が斬られる。

 全力を出せば・・・・小太郎の剣先には迷いがうまれた。

 相手はその迷いを許さなかった。

 一気に踏み込んでくる。

 それを小太郎は軽快に捌き、木刀を振るった。

 小太郎と相手の技量は余りに違いすぎ、小太郎の木刀は一直線に相手の頭上に振り落とされようとしていた。

 頭は駄目だ・・・その状況で小太郎は一瞬躊躇した。

 相手はその一瞬で身体を翻す間を得た。

 一瞬の躊躇を見せた小太郎だったが、そこから木刀を回して左袈裟に振り下ろした。

 ゴキッと嫌な音がして、跳び退いた相手は右肩を押さえた。

 その小太郎の一撃で、相手は鎖骨を折られ、刀を取り落としていた。

 一方、紅蓮坊は残る二人を相手にしていた。

 一人は右足に縄を飛ばした男。

 もう一人は手始めに木の枝から落とされた男。

 紅蓮坊は足に縄を飛ばした男に正対している。

 その背後からこっそりともう一人の男が近づく。

 だが、その気配は紅蓮坊に悟られていた。

 跳びかかろうとした瞬間、紅蓮坊は大きく足を回し、その男の脇腹を蹴った。

 その男は大きく弾き飛ばされ、太い木に叩きつけられ、肋骨でも折ったのだろう、胸を押さえてその場にうずくまった。

 まだ紅蓮坊が向き直る前に縄を捨てた男が後ろから跳びかかった。

 紅蓮坊はその剣先を躱してしゃがみ込むと、その男の伸びきった腕を肩に担ぎ、立ち上げると同時にその腕を捻る下げた。

 肩の関節が外れたのか、その男はぶらんと垂れ下がった腕を抱きかかえるようにうずくまった。

 それを後目に、

 「行くぞ。」

 と、小太郎に声を掛けた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。