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0.04 BOYS  作者: 杉浦このは
4/5

4. 決戦前!!コロシアムの熱狂!!!

千雷、折笠、渡邉は体育館の中に入っていった。

体育館には4面の銀色のピストが敷かれ、そこで剣士たちがファイティングをしていた。

剣と剣がぶつかり合う金属音、得点を知らせるブザー音、そして選手たちの叫び声

千雷、折笠、渡邉にとっては全てが目新しい光景であった。

「なんか、圧巻だな、、うちの学校にこんな練習場があるなんて知らなかったぞ」

折笠がつぶやいた。

「へっ!みかけはちゃんとしているようだが、強くなきゃ意味がねーよなあ?少なくとも、うちの学校がフェンシングの強豪って話は聞かねーよおだがなあ」

千雷は勝ち気に言った。


「おい!お前ら!!チンタラ歩いてないでこっちにこい!!!」

三戸の声が、この音で溢れる体育館に響いた。

それで、他の部員たちも気づいたのだろう。部員たちはざわつき出した。

ざわざわ、ざわざわ

「なんだろう?見学者かな?」

「いや、だけど、見学者にあんなこと言うか?」

「俺、あいつ知ってる。フェニックスなんたらとかで今日騒いでた奴らじゃね?」

ざわざわ、ざわざわ

「咲、あれが千雷くん?」

「ああ!入学して間もないのに、咲に告ったとかいうあの!」

「うん、、そうなんだけどね、、」

ざわざわ、ざわざわ


「んだあ、てm」

ざわついている部員たちに、速攻で喧嘩を売ろうとした千雷をとめたのは、折笠と渡邉である。

「千雷、ここは我慢だ」

「そうだ!咲ちゃんだっているんだし、ここで暴力でも振るったら、終わりだぞ!」

「おい!早くしろ!!」

『はい、今行きます!』

そうやって、折笠と渡邉は、二人の制止を振り解こうとする千雷を抑えながら、体育館の端の方へ移動するのであった。


「三戸と谷塚から聞いてるよ、1年生の千雷くんと折笠くんと渡邉くんだね」

そう笑顔で言ったのは、いかにも好青年という表現の合う、細身なイケメンだった。

「ああん?誰だてめー」

千雷は眉間に皺を寄せながら、威嚇するように言った。

「僕は、副部長の安だ。よろしく」

「お前たちは、安の案内でフェンシングの準備をしてもらう。俺は俺で準備があるから、少し外させてもらう」

そういって三戸は準備へ取り掛かるため、その場を後にした。

「すまないな、三戸はいつもは生真面目で優しいやつなんだが、フェンシングになるとどうも熱くてな」

安はため息混じりに言った。

「三戸に付き合わされて大変だろうが、少しの間、楽しんでいってくれ」

そう言って、安は千雷たちに握手を求めた。

「ほんと!あのゴリラは喧嘩っ早くて困るぜ。全く。だがフェンシング部にも少しは話がわかるやつがいるもんだな!優男くんん!なははははははは!!!」

千雷は安の手を熱く握り返した。

よく自分を棚に上げて言えるもんだ、そう折笠と渡邉は思うのだった。


「話は変わるが、今回千雷くんにやってもらうのは、スマートフェンシングってやつだ」

そう言って、安が取り出したのは、発泡スチロールでできた市販の剣のオモチャであった。

「これは、フェンシングを擬似体験するために、新歓用に作ったもんでな。市販の剣のおもちゃの先にアルミホイルを巻き付けてある。そのアルミホイルと金属製のメタルジャケットが触れることによって、電気が通り、審判機が反応する仕組みだ。」

へええ、すげえ、そんな反応をする折笠と渡邉とは裏腹に、千雷は不服そうであった。

「こんな、なよった剣のオモチャで決闘すんのかよ。これで本当にフェンシングになんのかあ?」

そうやって剣のオモチャを曲げたり、振ったりして、感触を確かめた。

「こっちとしても、初めての子に金属製の剣を使わせるわけにはいかないんだ。ほら、千雷くん、腕っぷし強そうだし。三戸に万が一のことがあっても、ね」

「なはははは、確かに、あのゴリラでさえも、俺にかかればつついただけでイチコロよ、なははははは!!!」

千雷は、安の背中をバチバチと叩きながら、上機嫌に言った。

「おい、安さん、なかなかやる男かも知れねーぞ」

「ああ、あの暴君をうまく説得してやがる、やるなあ」

折笠と渡邉は安に感心するのであった。

「千雷くんは右利きかい?」

「ああ、そうだが、、、」

「じゃあ、この右利き用のメタルジャケットを着て、剣を持ってくれるかい」

「おう!!」

そうやって、メタルジャケットを着ようとした。着ようとしたが、、

「全然着方がわからん」

「ああ、最初はわからないよな」

そう言って安は手本を示した。

「まず、メタルジャケットの下紐に股を通す。そしてそのままジャケットを着込むように右腕、左腕を通す、そして、前チャックを締めて完成だ」

「なるほど!!」

そうやって、千雷はメタルジャケットを着込んだ。

「おお、なかなか様になっているじゃねーか、千雷」

「カッケー!俺も来てみてーぜ!」

「オメーは入らねーだろ!デブ渡邉!」

「んだとー!千雷!もう一片言ってみろ!!」

「あははは、君たち仲いいんだねえ」

そう微笑みながら、安は千雷にコードのついたオモチャ剣を渡した。

「なんか、ひもみてーなのついてんだけど、、」

「ああ、これは電気を伝えるコードだ。コードは剣と、メタルジャケット、リールをつなげるものなんだ」

『リール?』

千雷たちは聞いたことのないワードに耳を傾げた。

「リールってのは、あそこにある四角い金属板のことでな。あの中には延長コードが入っていて、その延長コードとコードを繋げることで電気を審判機に伝えることができるんだ」

「ふーん、よくわかんねーけど、今フェンシングの試合をしている人たちの後ろから出ているひもみてーなのがリールってやつか」

そう言って、渡邉はファイティングをしているフェンシング選手たちを指差しながら言った。

「うん、そういう認識で間違えないよ。」

だが、今の説明で理解できないのが、千雷である。

「おい、しっかりしろ!千雷!」

「もう、チンプンカンプンだああ、、」

そうやって混乱して目を回す千雷であった。


「こほんっ、まあ気を取り直して、とりあえずコードは右袖から通して、リールにつなげてくれ」

「お、おう!」

千雷は言われるがままに、コードを通し、リールに繋げた。

「これで、試合の準備は完了だな」

「やっとか!!とりまありがとな!優男くんん!!」

「あ、後もう一つあった」

まだあんのかよっ、とガクッとすっ転ぶ千雷たち。

「構えの仕方なんだけどな、右足を前に出して、左足は右足に垂直になるようにくっつけてみてくれ」

「こ、こうか?」

「ああそうだ。その状態から両足の間隔を、自分の足2つ分開けて、腰を落とす。」

「こうか!!」

「ああ、なかなかいい構えだ。そして剣を持って相手の方に向ければ完成だ!」

「おお、ありがとううう、優男くんんんん」

と、あーだこーだしていると、三戸が戻ってきた。

「待たせたな」

「どこいってたんだ、てめええ」

千雷は三戸をガンつける。

「ちょっとな、観客を呼びにいってたんだ」

「観客うううう?」

そういうと体育館の扉の方からざわざわ声がし始めた。

「おいおい、今日のフェニックス千雷が、フェンシングの部長と決闘をするらしいぜ!!」

「めちゃくちゃ面白そうじゃねーか!こりゃみなくちゃなあああ!」

ドドドドドドドド、、、、

三戸の呼びかけで集まった野次馬が、どんどん、つぎつぎと体育館へ集まっていった。

結果、体育館は満員、満席状態となった。

「オラああ、まだかああ」

「早くやれえええええええ」

「俺は新入生が勝つに1万かけるぜ!!」

「三戸おおお!!部長の意地を見せてやれええええええええ」

わああああああああああああああああああああああああああ、、、

体育館は大歓声に包まれた。その光景、まさにコロシアム!!!

「なんだあ、こりゃあ」

さすがの千雷でも困惑気味である。

「おい、三戸、これはいくらなんでもやりすぎなんじゃ、、」

安はそう三戸に問いかけた。

三戸は、安に視線を送った。大丈夫、黙ってみていろ、、そんな視線であった。

「小僧!!!こんなんでちびる玉じゃないだろう!!!」

「ああ?」

「聞こえるか、この歓声、この声援!!!これがフェンシングにおいての決闘だ!!」

「…」

千雷は、ビシビシとこの熱狂を感じていた。今までにない感覚であった。人々が自分たちの戦いに注目し、その勝敗の行方を必死に見守っている。それは喧嘩ばかりの人生で、腫れ物扱いだった千雷にとっては新鮮なものであった。

「ああ、聞こえるぜ」

「すごいだろう!!これはお前が馬鹿にしたフェンシング!それによって生み出される熱狂だ!!」

「…」

三戸は、千雷から視線を外し、自分のコードをリールに繋げた。そして、安に審判をするように言った。安は二つ返事で引き受けた。

安はめいいっぱい大きく息を吸い込んで叫んだ。

「5点、3分マッチ!双方、チェック!!」

「ちゃんと、審判機が反応するかのテストだ。俺のメタルジャケットをつけ!」

「お、おう、」

千雷は剣のポイントを、三戸のメタルジャケットにつけた。

ぴいいいいいい、というブザー音と共に、審判機の緑のライトが点灯した。

「緑のライトは、お前の得点を示す。逆に俺がつけば、」

三戸は千雷のメタルジャケットをついた。

「赤のライトが点灯する」

「…」

千雷はゴクリっと自分のつばを飲み込んだ。

「Rassemblez ! Saluez !(気をつけ!礼!)」

三戸は千雷の方に剣を向け、次に審判の方に剣を向け、構えた。

対する千雷も三戸の方に剣を向け、次に審判の方に剣を向け、構えた。

「en garde(構え)」

審判の声が、体育館という名のコロシアムに響く。その瞬間、声援は消え失せ、コロシアムは沈黙した。張り詰めた闘志による緊張が千雷の心臓をドクンっ、ドクンっと鳴らしていた。

ゴクッ、誰かのつばを飲む音が聞こえた。

「Etes-vous prêts (準備は出来たか?)」

両者、沈黙。それは、決戦の合図。

「Allez! (始めっ!)」


色々説明したので、わからないことがあれば聞いてください


メタルジャケットの形状はタンクトップのような形で、腕まで覆われていません。今回、千雷と三戸の試合の有効面は腕を含まない上半身です。

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