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6 ゲイとMtF


「だから確認しときたくてさ。ミーコたちに声かける前にさ。5人のオンナで3人しかいないオトコを取り合うってことになったら、どんな罰ゲームってなるじゃん」


 いや、ゲイはオンナじゃないからね。亜季の中でゲイと MtF(エムティーエフ)が混ざっちゃってるよね。一般のゲイは男性として男性を好きになる。MtFは女性として男性を好きになる。

 場合によっては女性を好きになるMtFの人もいるけど。MtFでかつレズビアンみたいな人もいるからね。MtFの恋愛対象が男性とは限らないのだ。


 お兄ちゃんがゲイ、という割には亜季はアバウトというか、まあもともとおおらかな性格なんだと思う。

 そのおおらかな性格の亜季は、少し声をひそめ、真剣そのものといった口調で繰り返した。


「ねえ、鞠乃、どう思う? その司さんってゲイじゃないの?」

「司だったらなんにも考えてないだけだから大丈夫。ペルセウス座流星群を見るって話をしたから、天文マニアの人を誘ってみようって考えただけだから」

「なんでそんなの断言できるの?」

「そういう裏のない人なんだよ。それと一応言っとくけど、その楢沢さんって人が女子受けするタイプかの保証はまったくない。その辺も司はなんも考えてないと思うから」

「すげーオタクっぽいヤツが来たりするの?」

「かもしれないし、とんだ気難しやかもしれないし、蘊蓄(うんちく)たれまくりの面倒くさいやつかもしれないし」

「げー、勘弁して」

「逆にめちゃくちゃイケメンかもしれないよ。知らんけど。その辺は一切責任持てないけど」

「あたしは鞠乃の友だちだっていう司さんの方が興味あるよ。友だちっていうか、聞いてると結構鞠乃の言いなりだよね? 鞠乃の子分なのかな?」

「なんで? そんなことないよ」


 なんでそんな印象持たれたんだろう。心外だ。


「あたしだって結構向こうに合わせてるよ? 明日なんて司につきあって裁判の傍聴にいくんだから」


 けど、こんな時間におしゃべりしてたら、あたし傍聴席で絶対寝る。


「裁判の傍聴? なにそれ? 楽しいの?」

「どうだろう。でも比較的あたしでも興味持てそうなやつを選んではくれてるけど、多分」

「なんで司さんは鞠乃をそんなところに連れて行きたがるの?」

「さあ、あたしの意見が聞きたいんじゃないのかなあ」

「つきあう鞠乃も鞠乃だね」

「そういうわけで、あたし明日は早いんだ。もう寝るね」

「前期のテストが終わったから、映画でも誘おうと思ったんだけどな」

「明日の夜なら空いてるよ。観たい映画あるなら一緒に観る? 司もヒマだったらついてくるかもしれないけど」

「いいの? 紹介してくれる? H大法学部の3年だよね? 見た目はどんな感じなの?」


 食いつきいいなあ。

 司の通ってるのは都内の国立大学で、文系オンリーの単科大学だ。国立なので難易度は無駄に高いと思う。あと生徒の数が少ないから、希少性がある。多分合コンとかでもあまり遭遇しない。知らないけど。合コンに出たことがないから。


 亜季には少し学歴厨っぽいとこがある気がする。サークルだって自分の大学に立派なサークルがあるのにワザワザW大に行かんでもって正直思う。

 W大の他のインカレの子たちって大体は女子大とかじゃないのかなあ。つまり自分の大学に趣味をとことん突き詰める系のサークルの数がそもそも少ないおとなしめの学校のコたち。


 あたしたちの通ってるN大はその対極にある。オリエンテーションのときにいろんなサークルをさっくり覗いてみたけどアタマのおかしい人たちがウヨウヨって印象だった。

 おもしろそうだったからどっかに在籍してみたかったけど、4月の初めにデザイン事務所のバイトに応募して受かったからそっちを優先した。


「んじゃ明日、一緒に晩御飯でも食べる? っていってあたしたちマックとかすき家とか、場合によってはファミマのイートインだけど」

「ええ? ロマンチックのかけらもない。あんたと司さんがカレカノじゃないって、そういうことだったんだね」


 亜季にはヘンに納得されたけど、ファミマの隅っこでおにぎり食べながらのおしゃべりも、結構楽しいよ。

 まあ映画観るなら3人でホットドッグ買って席についてもいいよね。明日司に相談してみよう。

 亜季はまだなんか聞きたそうだったけど、明日また連絡するからとだけ伝えてあたしは電話を切って寝た。

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