2 亜季の意中の相手
夏休みの星を見に行く計画についての話に戻る。
いま司に連絡して、ちょうど返信を待っているところ。
亜季に対してはこう送った。
「亜季は亜季の意中の人を連れてきてね あたしは仲良しの男友だちを誘うから」
亜季から戻ってきた返事はこうだった。
「意中ってどういう意味?」
辞書引けぐぐれって言葉を飲み込んで、あたしは説明する。
「狙ってる相手って意味だよ」
「やだなー鞠乃 そんなロコツな言い方しないでよ」
ちょっと待って。亜季が意中の意味がわかんないっていうからあたしは言い換えただけだよ?
「鞠乃に紹介したい人がいたんだけどな」
「要らないよ 間に合ってる」
「鷹也さんの友だちなんだけどさ」
鷹也さんっていうのは亜季の意中の相手の名前だ。大学での講義のさなかにちらりと写真を見せてもらった。W大の2年生で茶髪で笑顔が爽やかなイケメンで、スタイルもよさそうで一見した感じだと優しそうな印象の人。それ以外はなんもわからない。
ましてその友だちのことなんて知らない。
「悪いけど興味ない」
「そういわずに一度会ってみて」
あたしが返事をしないでいると、亜季からの返信は一方的に続く。
「鷹也さんと同じW大のインカレサークルの人なんだ」
「教育学部の1年だよ」
「鷹也さんとは同高でタメ」
「一浪してるから1年なんだ」
「身長180センチのイケメンだよ」
「優良物件」
「鞠乃の写真見せたら会ってみたいって」
あたしの写真を勝手に知らない男に見せないでよ。そう抗議したいけど、どうせ亜季がツーショットでSNSに上げたやつだろうし、単独で写っているわけでもないから実際には抗議しづらい。
この分だと勝手に話を進められそうなので、電話をかけて直接止めた方がいいかもしれない。
そう思って亜季との通話をオンにしようと手を伸ばしかけたタイミングで、着信音が鳴り始めた。
司からだ。