二人しかいない部活の美人先輩に告白された。一緒に行った夏祭りでお互いの耳にピアスを開ける。
「来てくれたね、ハルト」
屋上には文芸部の「かさね先輩」。
「わざわざ呼び出して何の用ですか」
オレがこう思うのも当然だろう。
文芸部はオレと先輩の二人だけだから、用があれば部室で言えばいい。
「それじゃ気分が出ないじゃない」
「はあ」
「……私、ハルトが好き」
「え?」
「付き合ってほしいんだけど、どうかな?」
ちょっと、告白って……マジか。
冗談じゃないんだよな?
返事はまだいいから、夏祭りに行かないと誘われた。
着物のかさね先輩が可愛かった。
「嫌じゃなかったらでいいんだけど、手をつないでいい?」
「……いいですよ、別に」
照れてしまって冷たい態度を取ってしまったが、手をつないで二人で歩いた。
「わ、可愛い」
夜店の銀のアクセサリー。
割り勘でペアのピアスを買うと、耳に穴を開けるピアッサーもおまけでくれた。
「痛っ」
「大丈夫ですか?」
「あ、でも一瞬だけっぽい。
じゃあ、私も開けてあげる」
「っ……」
「痛くないの?」
「先輩の前だから我慢してるんですよ」
「ふふ、男の子だね」
夜店をめぐり、りんご飴を食べて、花火を見た。
いつもポーカーフェイスな先輩だけど、花火に照らされて顔が赤く染まっていた。
「うん……ねえ、ちょっと静かなところ行こっか」
「かさね先輩」
「ハルト……」
「オレ、センパイのことが好きです」
「ねえ、目をつぶって……」
オレは先輩を抱き寄せ……
ぺた
ん?
何だこれ、唇におふだ?
「何なんですか!」
「ハルトに悪霊が取りついててね。
乱暴に除霊すると、ハルトの人格を損ねる。
だから、霊の望みを叶えてあげた。
私に告白されて夏祭りに行くのが望みだったの。
どうやら悪霊は私のことが好きだったって」
「そんな……じゃあ、オレの先輩への気持ちは……」
「悪霊が思ってるだけ。
除霊さえすれば、キミの私への気持ちは溶けてなくなる」
「違う、オレは本当にかさね先輩のことが……」
「悪霊退散!」
「ハルト、キミの気持ちをもてあそんでしまったね。
でも、私は霊に操られてるハルトじゃなくて……元のハルトに会いたかったんだ」
かさね先輩は、髪をかき上げ、オレに顔を近づけて――
次の日。
「ハルト。
……どうした、私の顔に何かついてる?」
「かさね先輩が可愛いなって思って」
「な!?」
先輩は顔を真っ赤にした。
「冗談ですよ」
「……人の気持ちをもてあそぶな!」
「仕返しですよ」
「……むう……」
かさね先輩にいつかは気持ちを伝えたい。
でも、今日はこの関係を壊したくなかった。
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