5.エピローグ
ブライトン王国では突如表舞台に姿を現すようになった『孤高の王』レオルド・ブライトンの話題で持ちきりであった──
亡き前王妃の不貞が明らかにされ、第一王子であるエドワルドは王籍より除籍され、平民へと身分を落とされ行方知れずとなった。王太子の座は空席。第二王子であるスティルドは王家の血は継いでいないものの、その優秀さもあり王籍に残ることとなった。
戦争以来放置されていた悪政を敷く王国貴族は粛清され、見違えるように公務にも力を入れ、国王としての優秀さを国民に示したレオルドの評判は周辺諸国にも知れ渡ることとなる。
レオルドはエドワルドの婚約者であったリーセル・ジェウス公爵令嬢を新たな正妃として迎え入れ、溺愛しているともっぱらの噂だ。まさか、『孤高の王』を変えたのが、十七の若き王妃であることは誰も知ることは無かった──
◆◆◆
「レオルド様!お野菜は残してはいけません!!しっかりバランスよくお食事を摂ってください!!」
「うむ。リーセルが言うのならば野菜も食べよう。さあ、食べさせてくれ」
「なっ!!!」
二十も年上のはずのレオルドはまるで子どもに戻ったかのようにリーセルに甘える。リーセルは頬を赤く染めつつ、せっかく食べる気になったのだからとそっとフォークに刺した温野菜をレオルドの口へと持っていく。
嬉しそうに野菜を咀嚼するレオルドは、蕩けるような熱い視線をリーセルに向ける。王命で一瞬の内に婚姻させられ、今は正妃となってしまったリーセルは未だにレオルドの溺愛ぶりに困惑するだけだ。
『影』としてのスキルを使用しレオルドを護ろうとしても、レオルドはもう戦わなくても良いとリーセルを甘やかす。むしろ自分よりも遥かに大人になり強くなったレオルドに最近は胸の鼓動が早くなってしまう。
「リーセル。恥ずかしそうにする其方の顔も可愛いな。ずっと見ていられる」
「ちょっ……レオルド様っ!!」
食事中なのに抱き抱えられ、膝の上に乗せられてしまった。主の膝の上に乗るなどとんでもないとジタバタするリーセルをぎゅっとレオルドは抱き締めた。
「ゆっくりでいい。リーセルが私を夫として意識して、心身ともに私のものになっても良いと思うまでは何もしない。けれども、逃がすつもりは全くないから、それだけは覚悟してくれ」
幼い頃の可愛い声ではなく、大人になった低く艶のある声にリーセルはピクリと肩を揺らした。口付け以外は手を出そうとしないレオルドは、前世も含め恋愛においては初心なリーセルを気遣ってくれているらしい。
「れ、レオルド様、私はレオルド様の『影』として…っ!!」
「もう『ミラン』としての役割は終えたんだ。今度はひとりの女性として幸せになる権利はあるのではないか?」
「っ!!!」
「其方を幸せにするのは私だけだ。愛しているよ、リーセル」
極甘な言葉を紡ぎ続けられ、リーセルはもう顔が上げられない程真っ赤になっていた。『ミラン』と少年だった王子との関係は、生まれ変わりリーセルとレオルドという新たな関係に移り変わろうとしている。
リーセルの『中』に存在しているミランが繋ぎ合わせてくれたのだ。再び動き出したこの関係に尻込みしてしまうが、レオルドは手加減してくれる気は無い様だ。
恐る恐る顔を上げると、近距離にレオルドの顔があり、すぐに唇が重なり合った。
──ああ、もう…私はどうしたら良いのでしょうか!!!!
リーセルの甘くて苦難の日々はこうして幕を開けたのであった──
END
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