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イラストから物語企画参加作品

永遠の眠り


西の大陸で未知の伝染病が発生した。


その伝染病は昔から地球上に存在していた物なのか? 人間が人為的に造り出した物なのか? 隕石等に付着して宇宙から飛来した物なのか? 誰も知らない。


伝染病は1カ月も経たないうちに全世界に広がり人々を殺しまくっているから。


伝染病に殺されるのは人だけで無く、哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、魚類を問わず殺している。


感染すると身体に気味が悪い疣ができそれが身体中に広がると死ぬ。


感染し最初の疣が身体に現れてから1日持たずにだ。


僕は周りの人たちの身体に疣が出来たのを見て逃げた。


無人の店員や買い物客の遺体が転がっているだけのスーパーで食料品や生活必需品を略奪して車に積み込み、昔ドライブ中に見つけた山の奥深くにある廃村に逃げ込む。


伝染病の抗体があったのか分からないけど、2年程経っても疣が身体に出来る事は無かった。


廃村に住み続け遇に見通しの良い山の頂きに登り人の姿を探し、「誰かー!」と叫ぶ。


人の姿は何処にも見えず「誰かー!」の木霊が山々に響き渡るだけ。


僕の上げた大声に驚いて飛び立つ鳥の姿も無い。


僕は人の姿を見たい人と語り合いたいという思いに囚われ、僕のように抗体持ちの人が何処かにいる筈だと考え廃村を後にする。


最初は車で山裾を縫うように移動した。


人の遺体がそこかしこに転がっているだろう街に行く勇気は無い。


街から離れた山裾の道にも人の遺体がある。


動物や鳥の死体は躊躇いながらも轢けるが人の遺体は轢けない、だから車を乗り捨て道沿いの家で見つけたマウンテンバイクで移動する。


ある山道のカーブを曲がり切ったとき僕の目に人の姿が映った。


温泉街の中にある観光ホテルの屋上を歩く人が見える。


足に力を込めペダルを漕ぐ。


観光ホテルまでもう少しのところで僕は大声を上げた。


「止めろー!」


セーラー服を着た女の子が観光ホテルの屋上から身を踊らせるのを目撃したから。


観光ホテルの前でマウンテンバイクを乗り捨て彼女の下に走る。


頭から血を流す彼女に手を伸ばしかけて気がつく、彼女の顔やセーラー服から露出している腕や脚を疣が覆っている事に、彼女の身体だけで無く彼女に向けて伸ばした僕の手の甲にも疣ができていた。


僕も死ぬんだ。


抗体があったんじゃ無くて人より伝染病に対する抵抗力があっただけなのだろう。


背負っていたリュックサックにくくりつけてあった毛布で彼女を包み抱き上げ、彼女と共に眠る死に場所を探そうと立ち上がった僕の前を青く大きな蝶が横切る。


蝶は僕の周りを2周程飛び観光ホテルの裏に誘うように飛んで行く。


僕は蝶に誘われてあとに続く。


観光ホテルの裏には真っ赤な彼岸花が群生していた。


僕は群生している彼岸花の直ぐ横に人が二人横たわれる穴を掘り、毛布で包んだ彼女を横たえてからその横に横たわる。


僕の目には咲き誇る彼岸花とその上を飛ぶ青い蝶が映っていた。


人類が滅亡したあと地球上で繁栄するのは彼等植物や昆虫なのかもなと思う。


僕は真っ赤な彼岸花を目に焼きつけ目を閉じ、永遠の眠りについた。


挿絵(By みてみん)






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― 新着の感想 ―
[良い点] 全ての生物を殺しきるようなウィルスや細菌は流石にないと思いますが、この話に近いことは起こる可能性ありますよね。 いくら伝染病にかからないためとはいえ、孤独に生きるのは辛いです。 本当の意…
[良い点] とっても綺麗でした。 一人だと寂しいので、一緒に眠りにつける人がいてよかったです。 心にじんわりくる作品でした。 素敵な作品、有り難うございました!
[一言] 今後絶対にありえないとは言えないお話ですね。 抵抗力が高そうな人は結構いるイメージがあります(全世界的には、ですが) こうした状況だとガス・電気(ネット・テレビ等含め)・水道・ガソリン供給…
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