65.閃き
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ハンナさんは酒場で働いている、僕の先輩だ。
仕事は僕より何倍も出来て、接客も上手。オマケに顔とスタイルも抜群だから……当然、店の人の評価は高く、お客さんからも人気だった。
……そんな彼女が仕事でミスを犯すだろうか?
……いや、ハンナさんも人間だし、それは普通にありえるけどさ。
でも……あの日。僕が足を引っ掛けられて、酒瓶をぶちまけた日。掃除したのは僕だけど……破片を集めた袋を持って行ってくれたのは、確かハンナさんだった気がする……多分。あやふやだけど。
でも、もしそうだったのなら……ハンナさんはその時に、ゴミが溜まっているのに気が付いた筈だ。だから、ゴミ袋を捨て忘れるなんて事、普通は起こらないんだよ。
「やっぱり……今考えるとおかしいよな?」
まぁ……いいや。一旦置いておこう。
そして夜。酒場を閉める時に……僕がゴミ袋を発見したんだ。この時、「ゴミを捨てに行く」と言ったのは僕だったけど。
……もし、それが仕組まれた物だとしたら……?
何せ僕の記憶では、ハンナさんがゴミを捨て忘れたのはあの日しかなかったんだ。やっぱりそれは違和感があるよ……たまたまと言ってしまったら、それでおしまいだけどさ。
うん。
そしてその後に僕は魔剣と最悪な出会いを果たして、拾ってしまって……死にそうになったタイミングでハンナさんの声が聞こえたんだっけ……?
「あっ」
そこで僕は……ありえない考えに辿り着いてしまったんだ。
ハンナさんは……意図的に。タイミングを見計らって、僕の前に現れようとしたのか……!?
「僕に……斬られる為に……!?」
まさか。まさかな……? 流石にこじつけが過ぎるか? でも……ありえなくはないよな……とりあえず、そうだと仮定して進めていこう。
で、それで僕は……自分の腹に魔剣を突き刺したんだよな。あの痛みはもう思い出したくないな……
で。そんな血だらけの僕を、ハンナさんは治療して、魔剣と一緒に、家へと連れて行ってくれたんだよな。
でもシンは「フェイク」でボロボロの剣に変えていたって言ってたよな。普通、そんな剣を僕と一緒に運ぶだろうか?
いや、待て。というかそもそも……全て意図的になら、ハンナさんは魔剣の場所も正体も全て知っていた事になるよな?
全ては……僕に魔剣を拾わせる為に。
どうしてだ? 僕を苦しめる為に? ……いや。そんなのワケがない。きっと…………
……この先はもっと確信を持ってから考えよう。
……それで僕は治療の為に、何日かハンナさんの家でお世話になったんだ……ん? あれ? ちょっと待てよ。
確か、ハンナさんの家には魔術書の類が多くあった……大体の魔法をマスターした今なら分かるけれど、あれは高いレベルの物。並の魔術師じゃ扱える物じゃない。
もしもハンナさんが、あれだけレベルの高い魔術師なら、腹を切り裂かれた程度の怪我なら一瞬で治療が出来た筈だ。
「まっ……まさか」
これも……意図的に治療のスピードを落としていたというのか? どうして……?
とにかく全てを思い出せ……僕!
ええっと……確かハンナさんは結構疲れていたよな。そりゃ仕事終わりは疲れるだろうけど……にしてもだ。簡単には起きないくらいには爆睡していた。
……結局、僕がシンに向かって叫んだから起こしちゃったんだけど……それはどうでもいいな。
それより考えなきゃいけないのは、爆睡していた理由……疲れではないのだとしたら。
「……魔力切れか?」
それは……ありえるな。爆睡した理由も納得いく。
なら……何故魔力が減ったのか。それは魔法を使ったからだろう。それは何の魔法か………………
「────ハッ!? あ、そういう事か!!」
考えていたら、急に頭の中に降りて来た。例えるならそう、パズルのピースがガチッと埋まったような……そんな感じだ。
とにかく!! 大体の流れが分かった気がしたぞ!!
ハンナさんは寝ている僕に対して、魔法を使っていたんだ! その魔法名は……
「映像伝達だ!!」




