表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

64/70

64.謎の部屋

 代わりに僕の口から出てきたのは、ハンナさんを問い詰める言葉だった。


「どっ……どうして! どうしてこんな事やってるんですかっ! ハンナさん!!」

「……」


 僕の問い掛けにハンナさんは何も答えず……じっと僕を見つめてきた。依然として、その表情は微笑んだままであった。


「ハンナさん……いいから何か言って下さいよ! じゃないと僕は……僕は………!! 貴方に刃を向けれません!!」

「……そっか。アル君は本当にお人好しなんだね」


 ハンナさんはそう呟くと、手を後ろに回して周辺をクルクルと歩き出した。そして……僕の傍に。


「理由なんか単純だよ。ただ……キライなんだよね。この世界も……私自身もね。だから魔王と国を滅ぼす手伝いをするって約束したんだ」

「やっ、約束……?」

「うん。だから……ホントにごめんね、アル君?」

「……えっ?」


 その言葉に僕は……謎の違和感を覚えたんだ。言葉には上手く出来ないけれど……何か。もっと別の事を僕に伝えようとしているような……そんな感じがしたんだ。


「フハハハッ、素晴らしい動機じゃないか!」


 そしてそれを聞いた魔王は高笑いする。


「チィ……コイツら……!!」

「やっ……やっつけましょう! あんな奴ら!」

「うむ」


 同じく僕の仲間も高ぶってきたようで、今にも戦闘が始まりそうな気配だ。でも…………待ってくれ。


 違う。いや、本当に違うんだ。何かがおかしい。


 今の僕は感情的になんかなっていないし、むしろ冷静だ。そんなの、嘘くさくて信じてもらえないだろうが本当なんだ。


 それでも……僕の中の何かが警鐘を鳴らしている。絶対にハンナさんを傷付けては駄目だと。


「よし……構えろ、お主ら」

「おうよ……!」

「はい!」


 それに気が付いているのは当然ながら、僕だけだ。そしてそれを仲間に説明する術も、時間もないだろう。


 でも、このままじゃ全滅……いや、それ以上に最悪な事が起こる予感がする。





 だから……必死に考えろ……!!この状況を打破する方法を……!!





 そして今まで与えられた数々のヒントを……思い出せっ…………僕っ!!!!


 ──


「………………え?」


 気が付くと僕は……真っ白な、何にも存在しない無機質な部屋に立っていた。


「なっ……何だ……ここは?」


 困惑しながら呼び掛けてみるけれど当然、返事が返って来る筈がなかった。何だ。何がどうなっている……?


 確か……僕は洞窟内に居て。それで、今にも戦いが始まろうとしている所で……それで。


 ──ここで1つ嫌な考えが思い浮かぶ。



 ……まさかあの世とかじゃないよな。


 怖くなって、急いで自分の胸に手を当てたけれど、いつも通り変わらずに心臓は動いていた。


「はぁー……何だ」


 ひとまずは安心したけれど……本当に何なんだここは。探索するにも、物すら無いしな……


 うーん。人間、本気で脳を使うと、時間を止められるだなんて事を聞いた事あるけど……まさかそれが発動したというのか?


 それとも一種の幻覚作用のある魔法でも、誰かにかけられたというのか……?


 ならどうしてこんな、殺すよりも面倒な事を……



 ……そこまで考えた所で僕は考えるのを止めた。



 だって不確定な要素が多すぎるのだ。それに多分、この場所や、目的なんかが分かった所で、意味なんかないと思ったからだ。


 だから……この謎に与えられたチャンスを、有効に活用するのが1番だ。



 そう考えた僕は、座り込んで……一旦、ハンナさんと出会った頃の事を振り返ってみる事にしたんだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ