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6.僕に付いてるのは聖剣……

 僕は……何かふわふわな物に包まれている様な……そんな不思議な感覚で目を覚ました。


「……んっ……ん?」


 僕は目を開いたけれど……目の前が真っ暗で前が見えなかった。何だこれ……壁? いや壁にしては柔らかいような──


「……すぅ……すぅ」

「なっ……!?」


 すると隣から誰かの寝息が聞こえてきた。……まぁその誰かなんてあの人しか思い浮かばないけど。


「……あの。ハンナさん?」

「ぐぅ……すぴぃ……すぴぃ……」

「駄目だ完全に寝てる」


 理由は分からないけど……僕はハンナさんに抱きしめられているらしい。そしてハンナさんは爆睡中だ。


 とりあえず起こさないようそーっと離れよう。よし、そーっ……


『お。やっとお目覚めか? 赤ん坊でもそんなに眠らないぞ?』

「……」


 また、脳内に煽るような魔剣の声が響いてきた。僕はそれをガン無視してゆっくりとハンナさんから離れる。


 ……よし、無事起こさず離れられたようだ。そして僕の目の前にあるテーブルには、昨日と同じ位置に魔剣が置いてあった。


 魔剣は僕だけ起きているのを確認したのか、テレパシーを使わずに話しかけてきた。


「よお……昨晩はお楽しみでしたねってやつか?」

「僕は何もしてないから!!」

「……わーってるよ、見てたし。お前は冗談も通じねぇのか?」

「……あ、そうですか」


 続けて「クソつまんない冗談だね」って言おうとしたけど、流石に止めておいた。まぁ呪われている以上、コイツを怒らせるのもまずいかもしれないからな……


「それで、魔剣。ハンナさんはどうしてこんなことに……?」


 と、ダメ元で魔剣に聞いてみたら、案外すんなりと答えてくれた。


「あー? 多分ベッドがひとつしかないから、その女もそこで寝たんだろ。お前を抱いたのも……どうせ枕の代わりなんじゃねぇか?」

「はは……そっかー」


 まぁそうだよな……所詮そんなものだ。僕とハンナさんは結局ただの仕事仲間なのであって、そんな関係になど絶対になる訳ないのだから……


「……ん? お前この女の子に惚れてんのか?」

「えっ!? い、いや違っ……そんなんじゃないから!」

「ははっ、なら襲っちまえよ。どうせ寝てるんだ」

「ばっ……馬鹿言うなよお前っ!! ホントぶっ壊すぞ!!!」

「んだよ、それでもお前魔剣付いてんのか」

「付いてねーよ!!!!」


 本当にコイツの冗談は下品で面白くないな……それに僕に付いてるのは魔剣じゃなくて聖剣……


「ん……ふぁーあ。おはよアル君……大きな声出してどうしたのー?」


 ふと、ハンナさんの声が聞こえた。僕は後ろ……ベッドの方をみると、ハンナさんが体を起こしつつ、目を擦っていたのが見えた。


「おっ……おはようございます。ハンナさん。これは……その、僕は毎朝声出しをしてるんですよ!」


 僕は誤魔化そうと咄嗟に嘘をついた……いや何だよ声出しって。教会の人でもそんなんしないよ。


 でもハンナさんは疑う素振りも見せず、僕に優しくこう言うのだった。


「あ、そうなんだー。でも、私が寝てる時は別の部屋でして欲しいなー?」

「あっ、はい! ごめんなさい!! ほんっとにごめんなさい!!」


 僕はまたガンガンと頭を床に付けて謝る。


『お、何それ。モンスターの真似?』


 黙ってろ……クソ魔剣。お前のせいでハンナさんが目覚めてしまったんだからな……


 それでハンナさんは


「あーいいっていいって! 次から気をつけてくれれば問題ないから!」


 と、いつものように笑って許してくれた。本当に優しいなこの人……


『お、良かったじゃねぇか』


 良くねぇよお前は黙ってろ。


 僕は脳内に聞こえてくる魔剣の声をまた無視して、ハンナさんと会話をする。


「それで……ハンナさん、昨日は仕事行けなくてすみませんでした。今日こそは行きますから……!」

「だからアル君、私はちゃんと治してから働いてって言ったじゃんかー。まだまだお腹痛いんでしょ?」

「それは……そうですけど」

「ならまだダメなの。治るまでここにいていいから、ちゃんと安静にしてて?」

「えっ……!? そんな治るまでいるなんて……! そんなにハンナさんに迷惑かけられ……」


 そこまで言ったところで、ハンナさんはまた僕のお腹をつつく。


「ちょいちょい」

「ふぐぁああっっ!!!!」


 また僕は床に倒れ込んだ。


『おっ、まただ。持ちネタか?』


 うるせぇ……うるせぇよ魔剣野郎……!!


 そしてハンナさんはまた、困った顔をして僕に言う。


「だーかーら。私には迷惑かけていいんだって。それともなに? 私の家に居るのはイヤなの?」

「い、いやそんなことは!! 何なら住みたいくらいですよ!」

「えっ……?」

「えっ、いや、あの、そんな変な意味じゃなくてですね……」

「ふふっ、分かってるって。ちょっとからかっただけだよー」

「そ、そうでしたか」


 あ、焦ったぁ……ハンナさんに愛想をつかされたら、もう僕生きていけないもん……


『やーい、からかわれてやんのー』


 あと何だコイツ。根本から折ってやろうか。


「でもアル君ってホントは明るいんだね。そんな顔、酒場じゃ絶対にしないでしょ?」

「うーん……まぁそうかもしれませんね。それもきっとハンナさんのおかげです」

「またまたぁー」


 照れたのかハンナさんは僕を肘でつつく。でも何だか嬉しそうな顔をしてたのを、僕は見逃さなかった。


「うーん、よし! それじゃあ朝ごはんでも作ろうか! アル君も食べるよね?」

「はい! でも僕も手伝いますよ!」

「うーん……じゃあ無理しない範囲でね。それじゃあ調理場に行こうか!」

「はい!」


 僕はハンナさんの後ろを着いていく……


『おい! 俺も連れて行けよ!』


 いや……お前を持って行ったら、僕がハンナさんを殺そうとしてるみたいになるじゃんか。そんなやべー勘違いされたくないから置いていくぞ。


 その意味を込めて、僕は魔剣に手を振った。


『……チッ、クソっ! ひょろひょろの癖に……』


 って言うか……魔剣でも嫉妬するんだね。

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