54.作戦決行
「それって……」
「ああそうだ。奴から奪う」
「えぇ……奪うの? 他に方法はないの?」
「そんなのねぇ…………いや待てよ。1つだけあるな」
シンは「ケケっ」と笑って手足を広げる……もうこの時点で嫌な予感しかしない。聞くけどさ。
「何?」
「お前が勇者に頭を下げて『シン様の防具貸して下さい!』って頼む事だ」
「……」
ほらでた。そんなの……
「する訳ないだろ、そんなの嫌すぎる」
「へへっ。お前にもプライドってもんがあったんだな。驚いたぜ」
「うるさいよシン」
結局僕は、シンの『奪う』という計画を呑むことにしたのだ。
────
数分後。僕らは元勇者の家の近くまでやって来た。もちろんその目的は、絵画と防具を盗むためである。
「それでシン、作戦は?」
「ああ。お前の気配を消してササッと盗る。それだけだ」
「うーん。そんな上手くいくかなぁ……」
シンの言った作戦に若干の不安を抱えつつも、僕は魔法で姿を消した……まぁ完全な透明人間って訳じゃないけど、遠目からなら見えないし大丈夫だろう。
そして僕は勇者の豪邸に忍び込んだ。
──
玄関ホールは変わらずごちゃごちゃした美術品が置いてあり、メイドさんや執事的な人が歩いていた。
バレないよう僕は忍び足で階段の方へと歩いて行く……うん、この調子なら大丈夫だ。
階段まで辿り着いた僕は、ゆっくりゆっくり降りていき……あの時見た地下室へと戻って来ていた。
もちろんそこには勇者や他の仲間達の装備品が飾ってあった。
僕はシンの絵画の所まで行って……その飾られていた絵を壁から取り外した。
「おっ……意外と重いな」
「おいおい、まさか担いで逃げるつもりか?」
「まさか。これを使うよ」
僕は絵を横に置いて、何でも入る便利な箱。『無限箱』を召喚した。
「久々見たなこれ」
「しばらく買い物とかしてなかったからね」
言いつつ僕は、大きな絵画を手に取って箱に入れようとする……
「しかし……こう見ると。シンって結構イケメンなんだね。さぞかしモテたんだろうなぁ」
「…………お前なぁ」
下の方からシンの恥ずかしそうな声がする……どうやら心の声が出てきてしまってたらしい。反省反省。
そして絵画をゲットした僕は、続けてケースに飾られた防具に手を伸ばす。
「よいしょ──」
瞬間。辺りから「ビー! ビー!」と大きなブザーの音と、赤いランプのような物が点滅を繰り返し出したのだ。
……これはつまり。
「あー、お前やっちゃったなぁ」
「そう……みたいだね」
防犯装置が作動したらしい。
そんな状況にも関わらず、僕は防具を手に取って箱に収めようとしていた。
「おいおい……逃げないのか?」
「逃げるよ。さっさと奪ってからね」
「……お前も結構肝が据わってきたなぁ。それがいい事なのかは分からんが」
僕が防具をしっかりと箱に入れた頃には、続々と使用人達が地下へと集まって来ていた。
「ありゃりゃ……こんなに人いたの?」
「アル、殺しは無しだぞ」
「分かってるよ」
そう言って僕は手の平を使用人達に向けて……
「【ネムネムーマ】!!」
睡眠魔法を唱えた。
それをモロに喰らった相手は……並べられた本のように、バッタバッタと連続して倒れていくのだった。
「ホントお前魔法の完成度上がったなぁ……剣士とは思えんけど」
「へへ。剣士は剣士でも魔剣士だからね」
「……魔剣使いの事を魔剣士って言うんじゃねぇの?」
「え、そうなの?」




