51.約束だよ
シンが連れて来てくれたのは、どこかの山の頂上だった。温度急に変わったから、思わず僕は震えてしまったけど……
「見ろよ。いい眺めだろ」
「わっ……!」
ここから見える圧巻の景色に、そんな事など一瞬で忘れてしまったのだ。
思わず僕は崖に座って景色をぼんやりと眺めだした…………すると人形のシンも隣に座って……優しい口調で語ってくれたのだ。
「ここはな。俺が落ち込んだり、嫌な事があった時によく来ていた場所なんだ」
「……」
「街は俺が生きてた頃と色々変わっちまって、変な気分になるけれど……ここはあの頃のままで変わんなくて、すげぇ落ち着くんだよな」
そう言ってシンは寝そべり、空を見上げた。
「お前もどうだ?」
「……」
言われた通り、僕も真似をしてみた……とても気持ちが良かった。ずっと……このまま風を感じているのも悪くは無いかもしれない。
────
……しばらく力が抜けた様に空を仰いでいると。隣から声がした。
それは初めて聞く、シンの震えた声だった。
「なぁアル…………やっぱり俺、悔しいよ。アイツにあんな目で見られていたなんてな。あんなヤツの言葉を真に受けて喜んで……馬鹿みてぇだ」
「……」
「でもな、それと同時に俺はすげぇ怒ってんだ。あんな腐ったハゲ、今すぐぶっ殺してやりてぇくらいだ」
「……」
「でもなアル。どう頑張ってもな、この人形じゃ剣は握れねぇし……涙だって流せねぇんだ。これが俺はとっても……とってもとっても辛い。苦しいんだ」
「……」
「だからお願いだ……俺を人間に戻してくれないか。人間に戻ってアイツの顔面を殴ってやらなきゃ、俺の気が収まんねぇんだ! アルっ!」
「……うん。そっか」
僕は体を起こして……優しくシンを抱きかかえた。
「お前っ……?」
「……シン。僕もさっきからずっと考えていたんだ。本当に冒険者になってよかったのかなって。ずっと憧れだった人が、あんなのって知っちゃったからね」
「……」
「だから……新しい目標を立てることにしたんだ。どんな冒険者よりも。勇者やシンよりも強い、世界最強の冒険者になってやろうって!」
「……言うじゃねぇか」
「へへっ……だからさ、僕からもお願いしていいかなシン。君の持っている技や戦い方を、全て教えてほしいんだ」
「なるほどな」
「もちろん……僕が最強と認められる強さになったら、君を人間に戻してみせるよ。約束するよ」
「……いいぜ。俺の持っているモノ全て、お前に伝授やる。ただし……」
「ただし……?」
「俺の特訓はスゲー厳しいぜ?」
「へへ。受けて立つよシン……!」
この日。僕らはお互いを認め合い、絶対に破る事の出来ない約束を交わしたんだ。




