48.違和感
「あ、あっ、こここんにちは勇者様!」
「そう固くなるな。ほら、そこ座ってくれ」
そう言っておじさんは……違う違う。勇者様は僕に椅子を勧めてくる。
その時に気がついたが、他2人は既にどっさりと椅子に座っていたようだ……ちょっと。少しくらい遠慮しなさいよあんたら。
それで僕もおそるおそる椅子に腰掛けた…………ん? 何だこのフワフワ感は! 逆に落ち着かないぞ!
……で。テーブルを挟んで向かい側に座った勇者様を見てみるけれど、やっぱりイメージとはどこか違っていた。
でもまぁ……あの伝説も何十年も前の出来事だし、勇者様だって歳を取るもんね……というかノノさんが言っていた「期待はしない方がいい」というのは、この事だったのか? そのくらい僕は気にしないのにな。
そして勇者様は口を開く。
「それで申し訳ないが、私はキミらの事を知らない。だから軽い自己紹介をしてもらえないか?」
「……」
「……」
言われて一斉に視線が僕に向けられる……おい、何でこういう時僕が最初なんだよ! やるけどさ!
「え、えっと! ぼっ、僕はアルです! よ、よろしくお願いします!」
「はは、面接かよ!」
ノノさんが突っ込んでくれたおかげで、場の空気は少し明るくなった気がした……サンキューノノさん。
それで自己紹介は僕の隣に移る。
「ウチはミミルじゃ。『フェアリーウィッチ』の団長をやっておる」
「へぇ……君みたいなのが団長?」
「……何か文句でもあるのか?」
ちょっと!! 何で喧嘩売ってるんですかミミルさん!! 相手は勇者様ですよ!!
思わず僕はミミルさんの肩を叩く。するとミミルさんはこっちを見て……
「……」
これ以上は何も言わなくなり、とんがり帽子を更に深く被った……おい。おいおいおい。どうすんのよこの空気。僕とノノさんが作った物が一気にブチ壊れたぞ。
そして更に自己紹介は隣に移る。
「で、私がノノ……ってリリスさんは知ってるよね」
「ああ。それで……アル君の肩に座っているそれは?」
言って勇者様はシンの人形を指さす……やべぇそれは考えてなかったよ! どどどうしよう!?
「あ、えっと……! これ僕の使い魔が入った人形です!」
「名前は?」
「えっ、だっ、ダースレです!」
久しぶりに使ったなこの名前……
「変わった名だ」
「よく……言われます」
「しかし使い魔にしては大人しいな。特殊な訓練でも行っているのか?」
「えっ、そ、それは! コイツ緊張……してるのかなー?」
僕が言うと、シンは肩から離れて動き出した……おい、このタイミングで動くと逆に怪しいだろ!
そんな焦りに焦った僕らをフォローしてくれたのか、ミミルさんは話を変えてくれた。
「……聞いていなかったが、お主とノノはどういった関係なのか?」
「それは……ただの友達さ。今のところはね」
「……」
ノノさんは勇者様から目を逸らした……
えっ……え? なんなんだ……この……違和感は?
「それで。何か私に用があると聞いているが」
「あっ、はい。えっと、勇者様一行がどんな旅をしたのか……とか知りたくて……」
「それは本に書いたのだが?」
「あ、いや、もっと他の仲間の事を詳しく知りたいな……って」
すると勇者様は下を向いて……ボソッと一言。
「仲間ねぇ……着いて来なさい」
そう言って勇者様は部屋から出て行った。
「お、追おう!」




