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43.ブーメランピエロ

「え、冒険者?」

「はい。今、仲間がいなくて困っていたんです。だからピエールさんが仲間になってくれたら、とても心強いなって!」

「なるほど……冒険者かぁ」


 すると考えるようにピエールさんは顎に手を置き……続けてこう言った。


「それは……稼げるのかい?」


 ……ああー。やっぱりそれは気になるよね。まぁこの人相当お金に困ってそうだしな。


「えっと……はい。高ランクなら、結構遊んで暮らせる程度には稼げる……らしいです」

「……本当?」

「はい」


 ……嘘は言ってない。ただ、僕がそのラインまで辿り着いてないだけだ……そしてそれを聞いたピエールさんは立ち上がって。


「それは本当か……!? よし、やろうじゃないか!」


 早っ。決断早っ。


 ──


 それで結局ピエールさんは冒険者登録をして、僕と同じFランクの冒険者となった。


 そして早速僕らはランクアップクエストを受注し、そのゴブリンが現れるとされる草原へとやって来ていた……のだが。


 何かおかしい。いやその「何か」はもう分かってるんだけどね……僕はピエロ姿のままのピエールさんに声をかけた。


「あのピエールさん……装備くらい整えてくださいよ」

「はははっ! そんなモノを買うお金はないさ」

「高そうなスーツ着てるのに……」

「だってこれしか持ってないからね。はは!」

「……」


 なんかピエールさんと会話してると、僕まで悲しくなってしまうなぁ……


「ええっと……じゃあ流石に武器くらいは僕が用意しますから」

「助かるよ。アルボーイ」

「……ピエールさん。武器は何を使えますか?」


 するとピエールさんはその場でファイティングポーズを取って……


「拳、かな」

「冒険者舐めないでください」

「……」


 当然だけれど、魔法も無しに拳ひとつでモンスターと戦うのは無理がありすぎる。リーチだって短いし……だから余程身体能力に自信が無い限り、拳で戦っていく事は不可能なのだ……


「じゃあお前パンチしてみろよ」

「なっ! 人形が話しかけてきた!?」

「今更だな……いいからやってみろ」

「見せてあげよう……!」


 そう言ってピエールさんは、シャドーボクシングをし始めた……けども。


「……」

「……おっそ」


 普通に……見える程度にピエールさんの放つパンチは遅かった。


 いやいや……こういう時はめっちゃ早くて「コイツ……こんな才能が!?」ってなる展開でしょ。おい。


「どうかな?」

「えっと、他……の武器はどうですか。剣とか使えます?」

「握った事がないなぁ。それにアレって見た目以上に重いし、ボクには向いてないかもしれないね」

「……えぇ」


 本当にどうしようか。というか、剣より簡単な武器なんて思いつかないよ……


「おいアル、コイツ仲間にしたの間違いじゃないか?」

「……」


 口には出さないけど、それは薄々僕も勘づいていたよ。でも、僕から誘ったんだし……いや。ダメだダメだ。きっとピエールさんにも出来る事だってある筈だ。


 ちゃんと考えよう。例えば……そう、得意な事から考えてみよう。


「……ピエールさんはピエロなんですよね。どんな芸をやるんですか?」

「え、ジャグリングとか……カード投げとかかな?」

「カード投げ?」

「ん、見るかい?」


 僕がこっくり頷くと、ピエールさんはスーツの胸ポケットから、カードの束を取り出す。そしてそれを1枚取って、ビュッと空高く投げた……


 かと思ったら、そのカードはくるくる回転して……ピエールさんの手元へと戻って来た。


「えっ!?」

「フフ、スゴいだろ?」


 ピエールは満足気な表情をする……でも。確かにこの技は凄いけど、戦闘には使えないよな……と思ってると、シンが一言。


「おお。これならアレ使えるんじゃねぇか?」

「え、アレって?」

「待ってろ……出してやる」


 言ってシンは魔剣に入ってきた。そして……


「ふっ……【物質創造クリエイト!】」


 魔法を唱えた。するとポンと煙が出てきて……そこから木製のブーメランが現れた。


「なるほど、これなら……!」

「投げてみろ」

「やってみよう」


 ピエールさんはブーメランを手に取り、大きく振りかぶって投げる……ブーメランはブンブンと音を立てて飛んで行って……


「……ほっ!」


 曲線を描いてピッタリ、ピエールさんの手元へと帰ってきた。


「凄い!」

「やるじゃねぇか」


 するとピエールさんはさっきよりも満足気な顔で……いや、自分でも驚いたような顔をして言った。


「……ふ、ふふ。『能あるハーピーは爪と翼を隠す』とはよく言ったものだな」



「嘘こけ」

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