42.救いの手
「だから何とか食っていこうと、こうやって技を披露して、お客さんからお金を恵んでもらっているんですよ!」
「ああ……大変ですね」
「いや、そうでもないよ。ここの人は暖かくて、沢山お金を投げてくれるんだ……」
……と言った所で。
「一体何じゃこの騒ぎは!」
「あ、ミミルさん!」
このギルド内で1番偉い……と噂されてるミミルさんが、僕らの方へと駆けつけてきた。
そしてミミルさんは少しムッとした顔をして、僕の顔を見つめてくる。
「アル……まさかお主が原因か?」
「いや、違います。この人です」
そう言って僕はピエロをビシッと指す。するとミミルさんの視線は僕からピエロへと移って……
「お主か」
「あっ……すいません。ここで芸をして、お金を恵んでもらおうと……していて」
「許可は?」
「……え?」
「だから許可は取ったのかと言ってるのじゃ」
「……」
何も言わなくなったピエロを見て、ミミルさんは「はぁ」とため息をついた後。
「次やったら罰金じゃからな」
と言って、ここから去ろうとした……ので、思わず僕は引き止めてしまった。
「ちょ、ちょっとミミルさん!」
「何じゃ」
「だってこの人、前職クビになって困ってるんですよ! だから少しくらい許してあげても……!」
するとミミルさんは振り返って。「やれやれ」と。
「……よいかアル。1度こういったモノを簡単に許可してしまったら、便乗して他の者もやり始めるじゃろう。芸ならまだマシかもしらんが、次第に闇金や賭博をする者も現れる」
「……」
「そうなってしまうと……この場所がどうなるか。お主も容易に想像出来るじゃろ?じゃから認められん……それが分かったら早く去るのじゃ」
「あっ……」
ミミルさんはそう言うと、引き止める間もなくこの場所から去って行くのだった。
まぁ……ルールはルールだしこれも仕方ないのかな。可哀想だけど、ピエロさんには別の場所で頑張ってもらおう。
僕は励まそうとピエロに話しかけた……
「ええっと、残念でした……ね?」
「……」
「あ、あの?」
「……」
が、ピエロは全く動かず、固まったままだった。
「アル、こいつ放心状態になってやがる……そっとしといてやれ」
「あっ……うん」
僕はシンに言われた通り、これ以上話しかける事はなく、この場から去って行った……
──
「ねぇ、まだいるんだけど」
「ああ……」
それから僕らは近くの店で昼食を取って、少し散歩をした後に、またギルド内へと戻って来たのだが……
まだそこにはピエロの姿があったのだ。そしてベンチで文字通り頭を抱えている。
流石にこれを見た僕は無視できなかったので、急いでピエロの元へと駆けつけた。
「あの、ピエロさん……大丈夫ですか?」
「ああ……しかしピエロまで禁止されたらボクはもう……!」
「落ち着いてピエロさん……というか本名何ですか」
僕が問いかけると、ピエロはやっとこっちを向いてくれて……
「ピエールさ」
「ピエール……さん。それなら別の場所でピエロをやったらいいんじゃないですか?」
「色々な場所で試したさ……でも結果は散々。でもやっとこの場所を見つけて、希望が持てたと言うのにボクは……!!」
言ってピエールは握った拳をブルブルと震わせる。
「ピエールさん! 落ち着きましょう!」
咄嗟に僕はピエールの体に触れ、落ち着かせる為に背中をさすった……時に気がついた。
この人……すごくがっちりした体つきをしている。それに身長だって高いし……もしかして戦ったら強いのではないのか……と。
そんな人が僕の仲間にいたら心強いのではないのか……と。
……よし、決めた。
「ピエールさん」
「……なんだい?」
「もし良かったら、僕と一緒に冒険者やりませんか!」




