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4.目覚め

 ────僕は眠りから……いや。長い気絶状態から目を覚ました。随分長いこと意識を失っていたらしく、白いシーツのかかったベッドには僕の跡がくっきり残っていた。


 というかここはどこなんだろう……?


「うっ……痛てぇ……!」


 そして目覚めたのと同時に腹が痛んだ。この痛みのせいであの魔剣と出会ったのが夢ではないと確信してしまい、また嫌な気分になってしまう。


 いや……それよりも。何で……僕は生きているんだ? 確かに魔剣を突き刺したのに……


「……とりあえず起きよう」


 まぁ、今分からないことを考えても仕方ないよな。


 僕はベッドから降りて、辺りを見回して見ることにした。


 最初に目に付いたのは本棚だった。壁に魔術書……だろうか。それが本棚いっぱいに敷き詰められている。そして手前にはテーブルと小さな椅子が置いてあった。


 そしてテーブルの上にはティーカップが置いてあり、まだ湯気が立っていた。ということは、直前まで誰かがいたのだろう。その人物は……


 ……と推理しているうちに、ガチャりと扉の開く音と一緒にその人物が部屋に入って来たのだった。


「あっ、アル君! 起きた!? 大丈夫だった!?」

「ハンナさん……」


 その正体はハンナさんだった。エプロン姿のハンナさんしか見たことなかったから、今の私服姿のハンナさんは新鮮であった。……いやそんなことよりも。


「僕は何があって……ここに?」

「それはこっちが聞きたいよ! 私がアル君探しに行ってて、見つけた時にはアル君が血だらけで倒れてたんだから!」

「あっ……そうだったんですか」

「だから私が急いで治癒魔法をかけたんだけど……それでも起きないから、私の家まで運んで寝かせてたんだよ……本当に心配したんだからね?」


 ハンナさんはすっかり涙声になっていた。


 あぁ……これは悪いことしたなぁ……結局また僕はハンナさんに迷惑をかけてしまったんだな。


 僕は頭を下げる。


「本当にすみませんでした」

「え、アル君! そんな謝らないでいいのに!」

「だってハンナさんがいなかったら、僕は死んでました。だから……!」


 そこまで言うとハンナさんは、僕の下げた頭を掴んで元の状態に戻した。


「よいしょ」

「……え?」

「それなら謝るんじゃなくて……お礼の言葉を言って欲しいな?」

「あっ、はい……ええっと、助けてくれて本当にありがとうございました!」

「うん! どういたしましてだよ!」


 僕がそう言うとハンナさんの表情は、とびっきりの笑顔に変わった。やっぱりハンナさんには笑顔が1番似合うや。


 ──


「それでそれでアル君。あそこで何があったの?」


 ハンナさんはベッドの上に座っている僕の隣に座ってきて、そう聞いてきた。


 ううーん……魔剣のことを話していいのだろうか。また心配されるかもしれないし……でも解決策を知っているかも……と悩んでいると。


『おい!俺の存在は誰にも教えない方がいいぜ?』


 あの魔剣の声が脳内に響いてきた。あまりにも予想外の出来事に思わず声が出てしまう。


「……なっ!?」

「えっ? どうしたのアル君」

「いっ……いや……なんでもないです」


 ハンナさんに悟られないよう、僕は誤魔化す。そして魔剣の声に耳を傾けた。


『この魔剣は元々魔王によって作られた物。つまりお前らの敵が使っている武器だ。それをお前なんかが持っているってバレたら……殺されるぞ?』


 えぇ……嘘でしょ。でもどうせ嘘じゃないんだろうなぁ……。ホントヤダなぁ……


 ということは僕が魔剣を持っているのを、隠し通せってことだよな……


 ハンナさんに嘘をつくのは本当に心が痛むが……仕方ないよな。僕は少し考えた後、こう言った。


「いや……あの時のことはよく覚えていないんです」

「えっ、そうなの? それじゃあ通り魔とかに刺されたのかな。ボロボロな剣なら落ちてたけど……」

「ボロボロな剣?」

「うん。一応拾っておいたんだ。待ってて」


 そう言ってハンナさんは部屋から出て行き……とんでもない物を持って部屋に戻って来た。


「これなんだけど」

「えっ、えぇ!?」


 ハンナさんは剣を持っていた。しかもそれはどう見てもボロボロの剣じゃなくて……不気味な程輝いているあの魔剣だった。しかも魔剣は鞘に刺さっておらず、裸の状態である。


 僕はパニックになりつつも、ハンナさんに叫ぶ。


「捨てて! ハンナさん今すぐそれから手を離して!!」

「えっ? 分かったけど」


 ハンナさんはそう言って、簡単に魔剣を手放した。


「えっ……?」


 僕が困惑して思考を停止していると、また脳内に魔剣の声が響いてきた。


『ああ、そうそう。お前の為にバレないよう【フェイク】という魔法を使って、俺の姿を変えているんだ。だからお前以外にはボロボロの剣に見えている。そして今はお前が持ち主だから、他のやつからは魔力を吸い取ったりは出来ねぇんだ』


 ……それを聞いて僕は、怒りや安堵の混じったよく分からない感情に襲われた。ただ1つ、魔剣に言いたいことがあるとするのならば……



 それを……もっとそれを早く言え!!

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