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28.じぶん

 ──で、今に至ると。


 ミミルさんは淡々と表彰式を進めていっていたけれど、僕はあまり内容が頭に入ってこなかったんだ。


 まぁ……それも当然だよ。だって明らかに場違いな僕が、凄腕の冒険者と並んで立っているのだから。落ち着いている方がおかしいよ。


「……はい、以上エリカさんでした。皆の者拍手を!」


 それでも大きな声は僕の耳に入ってくる。どうやら隣の隣にいた女騎士の紹介が終わったらしい。


 そして辺りは拍手に包まれる。


 ……聞いて僕はここから逃げ出したい衝動にも駆られたが、そんな勇気すら僕には持ち合わせていなかった……というか何で僕これ承諾したんだろうな。


「えー次は……AAランクのレウス・アラガルトじゃな。こやつはキメラの大群を1人で……しかも、ものの数分で討伐した。普通にスゴいんで表彰するんじゃ」

「おう、サンキュ! 最強魔法使いのミミちゃんに褒められるなんて嬉しいぜ!」

「レウス……いい加減その呼び方やめい」

「なんでさ!」


 そしてミミルさんは聞こえるほどの舌打ちをぶちかました後、放り投げるようにレウスへと表彰状を渡した。


「……では。皆に一言あるか?」

「あ、仲間募集中なんで! よかったらお前ら、オレんとこ来……」

「はい、以上レウスくんでした」


 レウスを押しのけ強制的に終了したミミルさんは、次は僕の番だと手を子招いて、1歩前に出ろとジェスチャーで伝えてくる。


 僕は……震えた足を1歩前に出した。


「お次はFランクながらも、ブラッディウルフを30体以上を討伐した、冒険者のアルじゃ。その勇敢さと……今後に期待的な感じで表彰するんじゃ」

「あっ、ありがとう……ございます」


 僕はミミルさんの持つ表彰状をサッと奪い取って、逃げるように元の場所へ戻ろうと考えていたのだが……


「……」

「……えっ?」


 ミミルさんが力を入れて握っていたため、それを取ることができなかったんだ。


 そんな予想外な事に驚いた僕は、反射的にミミルさんの顔を見たんだ。そしたら……


「どうしたんじゃアル。もっとシャキッとせんか」

「えっ」


 小さな声で、僕にそう言ったんだ。


 もしかして……ミミルさんはさっきから僕の様子が、変だった事に気がついていたのかもしれない。


「あっ、は、はい……」

「ほら、あのレウスの堂々っぷりを見習え。あやつ、ふんぞり返っておるぞ」


 理由はよく分かってなさそうだけど。


 僕は「そんな事、僕なんかが……」と3人の冒険者の顔と、ミミルさんの顔を交互に見た。


 ……そしたらすぐに察してくれたようで。


「うむ……確かにアルと他3人とは凄さのレベルは少し劣るけれど……それでもお主は命懸けで戦ったんじゃ。それは褒められるべき点じゃよ」


 そう言ってくれた。その言葉はとても嬉しかったけれど……それでも僕は素直に受け止めきれなかったんだ。


「でも……! 僕は……! 僕はただアイツの力に頼って戦っただけで……! 」

「……」

「何も……他の人に比べて凄いことなんか……!!」


 と言った所でミミルさんの拳が目の前に──


「うわあっ!! …………えっ?」


 恐る恐る反射的に瞑ってしまった目を開くと、ミミルさんの拳は僕の目の前で止められていた。


 そして呆然とした僕に向かってミミルさんは「はぁ……」と大きなため息の後に


「……馬鹿モノ。常人にあんなもの扱えるわけなかろう。ヤツを使いこなす事こそが……お主の卓越した才能ではないのか?」


 呆れたように、そう言ったんだ。


『ケケケッ、おチビちゃんの癖にいい事言うじゃねぇか』


 そして頭に魔剣のケラケラ笑い声が響く。でも……魔剣も。いや、シンもミミルさんの言葉は否定しなかったんだ。


 なら……シンも同じような事を思っていたというのか……?


「ほら、顔を上げい」


 言われて、はっと顔を上げる。


 するとそこには……大勢の冒険者達が、笑顔で僕の事を褒め称え、拍手や歓声を上げる……そんな不思議な光景が広がっていたんだ。


「すごい……」

「これがお主の力なんじゃよ。やっと分かったか?」


 ……そっか。ずっと怖がって、背けて見ようともしなかった冒険者達の顔は……こんなにも輝いていたんだ。


「すげぇなアル!」

「命張って戦ったってかっけぇよ!」

「やるな! お前Fランとは思えねぇぞ!」


 そして……聞こえる。僕を褒め称える声が。


 ちょっと前までは人間以下の扱いされていた僕が……見下され、罵倒を浴びせられまくったこの僕が……


 ──ここに。この場所に居る。


 何だ。僕の事を1番認めていなかったのは……











 僕だったんだな。




「えっ! おっ、おいアル! 何でお前泣いてんだよ!?」

「……えっ?」


 レウスに言われて、はっと我に返る。そして自分の瞳から雫がぽたぽた流れ落ちているのに気が付いた。


「あっ……あははっ! ……なっ、なんでだろ!」


 自分でも何で泣いているのかよく分からないけれど……それでも、不思議と晴れ晴れとした気分になっていたんだ。


 そして少し時間を取ってくれて……僕が落ち着いた頃になってミミルさんは言ったんだ。


「うむ……それでは最後にアルから一言貰おうかの。さぁ、何でもよいぞ」

「はい、えっと……あの……」



 

「早くFラン卒業したい……です! 」


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