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2.魔剣『ダーヴィンスレイヴ』

「何だよ? 剣が喋るのはおかしいってか?」

「いっ、いや、そんなことは。思ってない……よ?」

「だよな! 今どき喋る剣なんて普通だもんな!」


 そう言って目の前に落ちている剣は、「へへへっ!」と陽気に……まるで人間かのように笑った。


 いやいや……待て。待て待て。やっぱり喋る剣なんてどう考えてもおかしいだろ。落ち着くんだ僕。


 ここは冷静に考えて……きっと誰かがイタズラで声を流してるんだ。遠隔魔法か何かで。


 いやでも……それならわざわざ人通りの少ないゴミ捨て場でやる訳ないよな。しかも今は夜だし。


 なら……物に意思を持たせる魔法が発見されたって言うのか? いや、それならもっと話題になっていてもおかしくないはず……というかそんなのあったら国が大変なことになるぞ。


 僕がそうやって『あーでもないこーでもない』と必死に思考を巡らせていると。


「そういやお前、名前はなんだよ?」


 剣が名前を尋ねてきた。僕は大きく戸惑いながらも、自己紹介をする。


「えっ、えっと、僕はアル=エルシア。冒険者をやってて、それで16歳です……」


 剣に名前を名乗るなんて経験したことがあるわけないので、なんだか上手く出来なかった。


 ……その剣は全然気にしてないようだったけど。


「ふぅん? そうか、お前冒険者なのか。こんなチビで弱そうな見た目してんのに」

「えっ、僕が見えるの?」

「ああ。さっきまでゴミに埋もれてたから見えてなかっただけで、今は普通に見えるぞ」


 見えるのかよ……しかも今暗いのに。……この剣の目ってどこにあるんだよ。


 ……いや、今は目ん玉の位置なんかよりも聞かなきゃいけないことがあるだろ!


 僕は屈んで、剣に問いかけた。


「それより、君こそ何者なんだ……? 何で喋れて、何でこんな所にいて……」

「待て待て。そんないっぺんに答えらんねぇからさ。とりあえず俺を鞘から出してくんない? ずっと刺さりっぱでつれぇんだよね」

「つ、辛いんだ……」


 喋れるだけでなく、意思もしっかり存在しているのか。本当に何者なんだ……?


 とりあえず僕は、言われた通りに剣取り上げた。重さはそんなに無いけれど……何だか禍々しいオーラを感じる。


 ……えっ、もしかしてこれ、なんかやばいやつなんじゃないのか……?


「おい、早くしろよ。俺の正体知りたくねぇのか?」

「あっ、うん。分かってるって」


 それでも僕はこの剣が気になって仕方なかったので、引き抜くことに決めた。


「……よし、いくぞ」


 僕はゆっくりと呼吸をして、覚悟を決めてから剣を鞘から一気に引き抜いた。


 『シャキン』


 取り出した細身の剣は不気味なくらい、紫色に光り輝いていた……と、それを見たのと同時に僕の意識が急に朦朧としてきた。それも立っているのがやっとな程である。


「うっ……!? なっ……なにが……!?」

「……へへ」


 握っていると更に気分は悪くなり、視界もボヤけて見えてきた……まるで生気でも吸い取られているかのようだ。


 この剣の仕業だと直感した僕は、その剣を投げ捨てようとした……が、それは上手くいかず、僕の右手は剣のグリップ部分から全く離れることはなかった。


「うっ……うわぁぁああっっ!!何で離れないんだよぉっ!」

「仕方ねぇだろ? そういう類の剣なんだからよ」


 どういう類だよ!! ふざけんなっ!!


「はぁ……はぁっ……! んだよ……なんなんだよ! 本当に君は何者なんだよ!」


 僕が力を振り絞って剣に問いかけると、さっきよりもクリアな声で「へへっ!」っと笑った後に言う。


「ああ、取り出してくれたことだし教えてやるよ。俺の正体は……魔剣『ダーヴィンスレイヴ』だ」

「まっ……魔剣!?」


 魔剣。僕は昔、それについて誰かから話を聞いたことがあった。


 魔剣とはその名の通り魔の力が備わった剣、つまり悪魔だの神だの……人ではない何者かの力が付与されている剣である。そしてその剣は確実にこの世界にも存在しているだろう……と。


 でも僕はそんなの胡散臭い噂程度にしか思ってなかったから、その時は笑って聞いてたのに……


 ……今、それが僕の僕の右手に握られているのだ。


 こんな非現実的な状況に、僕は焦りや怒りや不安で頭がどうにかなりそうだった。


「おいっ!! それでどうやったら手放せるんだよっ!? 教えてくれよ!!」

「あー無理無理。1度魔剣を手にしたら死ぬまで手放せねぇんだ。残念だったな」

「えっ……!? そんなひどいよ!! 何で教えてくれなかったのさ!!」

「だって教えたらお前取ってくれなかっただろ」


 当たり前じゃん!!! 自分から呪われようなんて人なんているわけないじゃんか!!


 脳内パニック状態で、手から離れない剣をブンブンと地面に振り回しては喚く。


「あああっ!! どうすりゃいいんだぁあよおっ!」


 そうやって剣を振り続けていたら……魔剣が慰めるように話しかけてきた。


「おいおい……とりあえず落ち着けって。一時的に鞘に戻す方法ならあるんだからよ」

「本当に!? どうするの!? 早く教えてくれよ!!」

「ん、ああ。それはな……」


 魔剣は面白がるように長めの間を置いた後……こう言ったのだった。





「『(おれ)に大量の生き血を吸収させる』事だ」

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