魔導師の旅日誌 さん
魔王さんは、某リトさんの前の魔王さんです。
魔の森に入る前、最後の大きな街でハーレム員を置いていくことを宣言した魔導師さんに、くってかかったのは勇者だったそうだ。阿呆がここにもいる。
魔獣がうようよ湧き出てる魔の森に連れて行けるわけなかろう、と誰もが知ってる。てか、ハーレム員のお嬢さん方すら理解してるのに、俺にひとりで行けとか鬼ー! とか叫ぶ勇者が意味わからん。
お嬢さん方もドン引き。え、危険なとこに一緒に行けと? 守ってくれるの? 3人も同時に守れるの? と、お嬢さん方のラブフィルターが壊れたらしい。街で住み込みの職を見つけると、速攻で別れを告げて去って行ったそうだ。女は強し。
勇者が泣いて縋って大変だったみたいだけど、みんなガン無視で見送ったそう。
買い出しやら装備の点検とかを済ませて、いざ出発の場に来て、勇者が行かないと駄々をコネ出したらしい。
ここを読んだ閣下のコメカミがピクピクしてたな。うん、怒りたいよね。でも、もっと怒りたいのは魔導師さんと神官さんだから。
神官さんの必死の説得にもかかわらず、頷かない勇者。そもそも、最初からおかしかった。だの、なんでメンバーに女がいないんだ。とかグダグダグチグチ始まった辺りで、神官さんは説得を諦めた。
魔導師さんと相談後、勇者に魔術をかけることにした。ふたり合作で、眠りの中で勇者の理想の女性とキャッキャウフフな妄想垂れ流しな夢を見られるものだそう。
勇者の妄想をベースにしてるので、勇者の理想そのままなご都合主義が展開されるものらしく、勇者を寝かせたまま、魔王城を目指す最短ルートをとり、魔王のみと対戦して撤退がベストだろうと。
勇者のモチベーションも上がるし、面倒なあれこれもなくなるので、ストレスフリーにもなるし一石二鳥それ以上と、報告書の文字も軽やかに見えた。
そこまでか……、と項垂れた閣下だけど、勇者以外に臨時ボーナス支給を決めた。仕事は早いんだよ。上がアレじゃなきゃねー。
そんなわけで、最短最速で魔王城に侵入し、そこでようやく目覚めた勇者が魔王にタイマンを要求し、魔導師さん達を追い出してふたりきり、玉座の間で対戦したそうだ。
これ、魔王が面白がって受けたそう。魔導師さん曰く、暇を持て余して楽しさを求めてるように見えたそう。勇者で遊ぼうとか、スケールデケェ、とも書いてあった。
勇者も一応強いらしいんだけどね。魔王の強さはケタ違いだと、すぐにわかった魔導師さんが加勢を申し出ても、拒否したそうだ。
ふたりきりで閉じられた部屋には、中から結界が張られた。魔王の配下のひとりが扉を壊そうとしてたけど、無理だったみたい。
中でなにが起こってるのか、どうなってるのかわからないまま、魔導師さんは撤退の間合いを計ってた。魔王の配下とやり合うのは得策ではないし。
緊張感漂う廊下に変化が起きたのは突然だった。
閉じられた玉座の間から、魔力が溢れて弾ける前に消えたという。
中には、誰もいなかった。
魔導師さんのオカン日誌、本人の手記で読みたかったなー(今更)