お茶会は女の戦場です? いち
お待たせしました。
「ごめんなさいねー、先触れもなしに突然おしかけて」
コロコロと笑うご婦人。紅いドレスがとってもお似合いの、金髪碧眼のゴージャス美女は騎士団長夫人。
「夫から聞いて、ずっとお会いしたかったのよ」
ふふ、と優しげな微笑を浮かべる、栗色の髪と菫色の瞳の美女は宰相夫人。
静と動のふたりだが、仲はいいらしい。
王宮中庭の四阿に用意されたお茶会セット。私はドレスどころか魔法塔所属を示す黒のローブ姿。
場違いにも程があろうそうだろうとも。
どうも。お仕事中美女ふたりに拉致られたレンさんです。てか、アホ騎士一家におふたりが絡まれてるとこをスルーしようとして、見つかったのが正しいかな。
ちなみに目の前のおふたりか、アホ騎士の母娘ズか選べと言われたら、断然こちらである。なにしに来たんだか。知るつもりも知りたいとも思わないけど。
「侯爵夫人のことならあとでお話しておくわね」
優しげな微笑みの奥にブリザードが見えますが。なにやらかしたんだろう、あのアホ一家。しかし、お話と言うことは。
「あの方々の目的はわたくしでしたか」
「察しがよくて助かるわ。あの方々には通じないの、なぜかしら」
それは、自分より年下の話なんて受け入れられない、頭の硬さが原因でしょうね。
「あの方達って、よく周りが見えなくなるのよねー」
いざとなったら拳で語る? と楽しげな騎士団長夫人は元騎士だそうで。
「あちらは身分に忠実な方だから、私達がハリェス嬢の後ろ盾だとわかれば引くでしょう」
「引くかしらー。むしろ後ろ盾欲しさにさらに暴走するかもしれないわよー?」
「……公にはしない方がよさそうね」
確かに。アホ騎士はともかく、母親は権力使い放題だもの。小娘ひとり容易く扱えるとか思ってそう。
「貴女はどう思っているのかしら」
「そうねー。ハリェス嬢の望みが最優先よねー」
下の者の意見を聞いてくださる、その姿勢を見習えアホ騎士。
「わたくしの望みを聞いてくださるだけで嬉しく思います。できるならば、あの方々とは一生縁遠くいたいと存じます」
カップをソーサーに戻して、座ったまま一礼すると、同じくカップを戻した宰相夫人が姿勢を正した。
「詳しくは聞かせてもらえないけれど、貴女が元貴族なのは間違いないみたいね」
「我が国が貴女に迷惑をかけた、ということで合ってるかしらー」
クッキーをかじりながら、団長夫人が首をかしげた。
「まぁ、大体は。けれど、今はこうして保護して頂いておりますし、そこは感謝しております」
「そこ以外が、あの騎士家族ということかしら」
「それと、誰かの婚約者さま、でしょうか」
「「ああ、アレね」ー」
ハモるほど有名になったか。
「失礼致しますわ!」
そこに来たのが乱入者。空気読めよ、だから問題視されるんだよ阿呆。
やたらとキラキラ光る赤いドレス姿で、以前より派手に着飾った、魔法師長の婚約者さまがそこに立っていた。
続きます。