ここは乙女ゲーム あたしはヒロイン!!
彼女視点で書いたらなにかを失いそうです(笑)
そういえば、すっかり忘れてた例の真っピンクのことだけど。
彼女は、私と一緒にこの世界に飛ばされたあと、北の国と呼ばれるこの国の国王陛下に見初められた。
私達を召びだした、あの魔法陣から、真っピンクを連れ出したのが、当人である国王陛下だったそうで。どうりであのセンスに誰も文句をつけないはずだよね。
真っピンクの、摩訶不思議なセンスが魅力的だったのか、仲睦ましく過ごしてるそうだ。お互い様なセンスを褒め合ってるとか、どんだけー。
国王陛下、側室やら愛妾やら両手で足りないくらいいるそうだけど。
1度、ホログラムもどきを応用して、後宮を覗いたことがあるんだけど、相変わらず真っピンクなドレス姿で、贅沢三昧にご満悦な笑顔だった。
侍女さん達は慣れたのか、無言無表情で褒めちぎってたわ。なにあれカオス。
ガラン師長の婚約者から贈られたドレスは、師長経由で真っピンクに流された。婚約者から、真っピンクへの贈り物だと強調したのが効いたのか、国王陛下も満足気に真っピンクに下げ渡したそう。
ますます真っピンクになった真っピンクは、後宮内を我が物顔で闊歩してるんだとか。あれ、そういや名前なんて言ったっけ。まぁいいか。
問題は、貴族のマナーやルールから激しく逸脱してる彼女が、このまま問題を起こさずにいられるかなんだけど。
後宮は女の園。きちんとした貴族のご令嬢がほとんどらしいので、誰にでもタメ口な彼女は、もれなくドン引きされてるに違いない。
情報は仕入れといて損はないので、後宮仕えの侍女さん達の控えの間にステルス使って侵入して聞き耳立てて来たよ。あ、犯罪には使用しないので、そこは安心してほしい。
で、彼女。
「ねえ、きしだんちょーとかまじゅちゅしだんちょーとかさいしょーさんとかにはいつ会えるのー?」
とか。てか噛んでる。
「やっぱあたしをとりあってあらそったりしちゃうのかなー!! きゃー!」
とか。いや、漢字を使えよ。
「へいかはイケメンだけど、いつでも会えるわけじゃないんだもん、その間にみんなに会いたーい!」
などなど。なかなかに問題発言連発しとるそうだ。侍女さんが頭痛いと唸ってたよ。あとでハーブティーを差し入れしよう。
どうやら彼女、元の世界でもそうだったけど、この世界を乙女ゲームと勘違いしてるようだ。てか、自分をヒロインと決めつけるとは、かなりの図太さである。
後宮は男子禁制だっつうの。あんたは国王陛下ただひとりの、数いる華のひとりだっつうの。
……理解は永遠にされないと思うけど。
なにはともあれ、私のことなど思い出す余地はなさそうで安心した。
そんなわけで、私は早々に真っピンクから無関係な立場になった。
ただ。
「国王陛下が彼女を王妃に、と正式に発表するそうだ」
終わったな、この国。
この先も関わりがないといいんですけどねぇ。