女の戦いはひっそりと?
いい人かと思ったんですけどねー(笑)
琥珀は、自分の存在を周知してない。
今、魔虎は琥珀しかいないらしくて、新種として研究とか調査とかめんどくさいことになるのがイヤなんだって。
あれ、でも故郷なんだよね? 家族はどうしたの?
「いるよー。でも、この時代ってボクが産まれる前みたいだから、まだ魔虎が存在しないんだよね」
なんと。
「まぁ、それくらいの時間はボクらにしたらすぐだから、気長に待つよー」
何十年とかそれ以上がすぐとか、魔虎すげぇ。
「レンの魔力なら、レンもそのままの姿で長生きするよ?」
「……マジか」
どうも。予想外の所で長生きが確定したレンさんです。
さて、先日会ったガラン師長の婚約者さま、ラリサさまから贈り物が届いたよ。
デカい箱なんだけど、なんだろ。カラフルの包装紙にピンクのリボン。あらいやだ、好みじゃないなぁ。
「開けて見るといい」
師長から促されるけど、こういうのって開けたら返品不可でしょ?
私は箱に人差し指で触れると、魔力を流した。ふわりと箱の上の空気が震えて、宙に映像を映し出す。
「は!?」
なにそれくわしく! な師長は軽くスルーする。教えるの面倒だし、きっと教えてもできないだろうし。
「中身はドレスかぁ。あと靴と、アクセサリーも?」
なぜだか全部ピンク系で揃えられてるけど、残念なことにどれも好みじゃない。なんなの、ピンクなら文句ないだろってこと? ありありですがなにか。
「手紙がついてるよ、レン」
「ほんとだ。えい、透視」
「え、は!?」
なになに、えーと。つまり、庶民にドレスなんて買えないだろうから、恵んであげましょうと。このドレス着てお茶会にくれば、そこそこの相手も見つかるだろう。早く相手を見つけて嫁に行け、魔術塔を辞めろ弟子を破門になれ。
うん、オブラートに包んだやんわりな言葉だけど、意訳すればそんな感じの内容だった。
「……」
あ、師長黙っちゃった。
「やっぱり自分の婚約者のとこに女がいたらいやだよねー。ものわかりのいい女演じてでも魔術師長の婚約者は魅力的なのか、惚れた相手への嫉妬なのか」
「ここもやっぱり貴族は貴族だね」
「お貴族さまはそんなもんでしょ」
私が庶民なら喜んで受け取るんだろうけど、この世界では庶民でも貴族として16年暮らした記憶がある。女の戦いに巻き込まれるつもりもなければ、貴族として生きるつもりもない。
「申し訳ないんですけど、これは受け取れません。お返ししてください」
「あ、ああ」
「返すの面倒なら、あれに送り付けたらいいですよ」
手紙だけ抜いておけば問題ないだろうし、あれはピンクが大好きだから。
その後、師長の婚約者からの贈り物として、喜んであれが着て歩いたので、国王は満足し師長の株は上がったのだった。
婚約者さま? きぃー! ってなったかは知らない。必要ないしね!
最初の勘を信じてみました。