婚約者さまは女傑です
レンさんは周りに興味がありません。
ところで、なぜ私がハリェス嬢と呼ばれているかなんだけどね。
この世界、真名を知られると隷属とかそういう危険な目にも遭うことかあるそうでね。琥珀に忠告されて、偽名も考えたんだけど、なかなか思いつかない上に呼ばれた私が気づかない可能性がね……。
なので、ハリェスという苗字だけ名乗った。師長は気づいたみたいだけど、スルーしてくれた。騎士さんはしつこくしつっこく名前を聞いてきたけど。誰が教えるかって話よ。
まぁ、私の真名、トゥレンでもレンでもないんだけど。
でも親しんだ名前を、会ってすぐの人達に気軽に呼んでほしくなかったんだよね。だって一応誘拐犯(仮)だし。
そんなわけで、私をレンと呼ぶのは琥珀だけだ。彼は、私のそばにずっといてくれるので、それだけで不安感がなくなる。マジ癒し。
どうも。人見知りな上にステルス発動で、魔法師長の幻の弟子とか魔法塔の幸運の青い鳥とか言われてるレンさんです。見たらラッキーなことが起こるらしいよ?
「ガランさまはおられまして?」
あ、ついクセでステルス発動しちゃったけど、騎士さんじゃなかったわ。
穏やかな女性の声は、師長の部屋の扉をノックしてから許可をとり、優雅に挨拶して入ってきた。
濃緑のドレスは所々にレースでアクセントをつけていて、大人の女性をアピールしつつも可愛らしさも失わない。良くバランスがとれてる。
お似合いだわー。ハーフアップの髪を結んだリボンも、濃緑にレースで花を編んである。センスあるなぁ。
大人の美女、気張ることなく完璧です。
そんな美女が師長になんの用?
「どうしたのか、ラリサ」
「お仕事が落ちつかれたとお聞きしましたので、ご挨拶に。あと、噂の青い小鳥にもお会いしたく思いまして」
コロコロと笑いながら要件を宣う美女は、どうやら女傑系とお見受けします。
「青い小鳥とは?」
「あら、ご存じありませんの? 貴方のお弟子さん、見ることができたら幸運が訪れると噂ですのよ」
「幻だとか青い小鳥だとか、煩わしい噂が増えてきたな」
緩んでいるようだ、と呟く師長、怖い。魔力が怒りでぶわっと膨らんだよ。
「で、お会いできますの?」
「ああ、呼ぶから待て」
チリン、と鈴のような音が鳴った。私は今来ましたとばかりに扉を内側から叩いて、開けると同時にステルスを解除した。
「師長、お呼びでしょうか」
ラリサさまは、ガラン師長の婚約者だそうな。
彼女の方からアタックして押して押して引かずに押しまくっての婚約者の座ゲットだぜ! 状態が、今なお続いてるらしい。押しに弱いんだね。
「いや、あれは押した……」
「ガランさま?」
「…………」
師長のどこがそんなにいいのかわからないけど、大人の建前と本音を見た気がした。
寒くなって来ましたねー。




