ここは王宮 彼は魔術師
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声のした方を見ると、ファンタジーで見るような、いかにも魔術師っポイ人と騎士っポイ人がいた。お約束なのかイケメンなのはなぜだ。
銀髪ロン毛の魔術師っポイ人は、私達には気づいてはいないようだけど、結界には気づいてるみたいで、誰かいるんだろうと声をかけたらしい。視線が微妙にずれてるから多分間違いないだろう。
「どうしよう、琥珀」
騎士っポイ人の腰には剣があるし、なにかあったら私には防御の術がない。
「ボクがいるから大丈夫だし、レンも魔力持ちだから、魔術を使えるよ」
「え、マジで?」
私も魔術使えるの? え、チート? これオレTUEEEEとかいうやつ?
「それに、あの人達は大丈夫そう。それに、なにかあったらボクがレンを連れて逃げるよ」
「うん、わかった」
私は琥珀を抱っこして立ち上がった。ドレスの汚れを払って、姿勢を正す。初対面の相手に侮られないよう、隙を見せるな。という姉さまの教えは絶対。
「解くよ」
パチンと空気が揺れて、結界が解かれた、らしい。
「これは……」
「まだ人がいたのか……!?」
驚くふたりに、琥珀が声をかけた。
「召喚術を使ったのはお前か?」
「獣がしゃべった!?」
騎士っポイ人驚きすぎ、そしてうるさい。
「ギードうるさい、黙れ」
「むがっ」
あ、お口にチャックされた。魔術師っポイ人が人差し指で宙に横線を引いた途端、騎士っポイ人が黙った。あれいいなぁ、覚えたい。
「失礼した。召喚術を使ったのは我ではない。この国の国王陛下の指示で、大神官がとりおこなったものだ。我は見届け人の魔術師のひとりだ」
「大神官? じゃここは神殿か?」
「いや、王宮地下神殿の儀式の間だ」
琥珀は魔術師さんから必要な情報を聞き出して行く。
「しかし、勇者召喚ならともかく、花嫁召喚だと?」
え、どゆこと?
魔術師さんからの話をまとめると、この世界を救うため? 勇者召喚をしようと国王陛下が立ち上がった。大神官や魔術師達の苦労の末、ようやく術が完成する。しかも片道切符。還す術など存在しないそうな。
おいおい、いくらなんでも杜撰すぎじゃね?
さて。いざ、召喚しようとなった時、本当に人が召喚べるのかと、国王陛下が言い出した。失敗するかもしれないから、してもいいように、練習として花嫁召喚をしようと。
周りは止めたが、なにせ最高権力者の一言は絶対だ。かくして花嫁召喚術は発動した。
「あの通りの方なので、花嫁を気に入られたようだが、もうひとりいたと知れたらどうなさるかわからんし、騒ぎはごめんだ」
うん、私もあのセンスのなさがマイナス振り切れた人はイヤだ。そもそもすぅちゃん以外は男じゃない。
「召喚されたのはひとりということか?」
私的にはあの真っピンクを押しつけられるならなんでもいい。目立ちたくない私には願ったり叶ったりだし。
「そちらがよければ、生活は保証しよう。そちらのご令嬢が魔術師になりたいのであれば、我の弟子として技術を学べば独り立ちもできるかと」
いたれりつくせりだけど、お互い損はないようだ。ウソをついてる風でもない。私は琥珀にこそっと囁いた。
「私は琥珀と生きていければいいんだけど、どうよ?」
「じゃぁ決まりだね」
カーテシーで挨拶しようと腰を落とした時、魔術師っポイ人が呟いた。
「しかし、ご令嬢。貴女のギフトは珍しいな」
ギフトとは、魂に刻まれた、神からの祝福なんだそうだ。魔力だったり知識だったり人それぞれ様々らしい。
「ご令嬢、『すてるす』とはなんだろうか?」
……魂にまで刻まれてんのかい、ステルス!!
このセリフにたどり着くまで長かったー(笑)