ここはどこ? 私は私
さん。スタートです。
光の中を、登ってるのか落ちてるのかわからない感覚に包まれながら、私は夢を見ていた。
姉さまや父、トールにラストル。兄や他の皆さま。楽しかった思い出に笑みが浮かぶのがわかる。
記憶を反芻するかのような、懐かしい場面が消えると、私が思い出したのは彼の姿だった。
すぅちゃん。
声にならない叫びは、遠く届かない。いつもの優しい笑顔に泣きそうになる。ごめんすぅちゃん、私はまだ貴方への想いを捨てられない。
もう二度と逢えない、けれど忘れない。私は貴方を想い続ける。
我ながらしつこいなぁ、と目を開けたら、そこはまだ白い世界だった。
光の中、向こうからはこちらが見えないようだけど、こっちからは少し見えた。
石造りの部屋。湿ってカビ臭い所を見るに、地下だろうか。薄暗い部屋の明かりはロウソク? だとすると、世界が違うわけじゃないのかな、それとも異世界to異世界だとか。
周りの声を拾ってみると、おお! とかの歓声と成功したのか!? とこちらに近づこうとして止められて揉めてる声だった。
なんか、(推定)異世界召喚だとしたら、嫌な予感がするよね。
「みぅ」
「琥珀」
ひとりじゃないって心強いなぁ。スカートから出てきた琥珀は、私の膝に乗ると宙に向かって鳴いた。
パシ、と空気が音を立てた気がした。
「琥珀?」
「みぃ」
……なんか、動くなって言われたような。
「ええい! まだか!!」
叫び声は、男の人のもの。偉そうな感じだけど、そんな年寄りでもなさそう。
「……んー、なにー?」
モゾりと動いた塊は真っピンクだった。いたんかい!
気を失っていたらしい真っピンクが、起き上がると同時に光が消えて、周りが見えた。
「おお!」
「成功だ!」
口々に歓声を挙げて拍手したり、隣にいる人と喜びを分かちあってる男の人達。ムサイおっさんから若いモブ系、そこそこイケメンまでみんな男。なんでや。
「……え? なにこれ乙女ゲーム?」
真っピンクの呟きを拾ったのは私だけだった。やっぱり転生者かい。しかも私と年代変わらなさそう。
まぁ、姉さま達に迷惑かけなきゃどうでもいいや。
「待ちくたびれたぞ、姫!」
「ひめ?」
あの真っピンクを見て、どうして姫と思うのか。てか、センスのなさがわからんとかどうなの。いや、同類だわあれ。
この中で1番偉そうな男性は、20代半ばくらいのイケメンだった。ただし自分1番なナルシー臭がぷんぷんする、ヤバい方。
ナルシーは真っピンクに負けず劣らずな服装だった。派手な色に派手な柄を合わせて、これでもかとレースで飾って布を溢れさせてる。重くないのかな。
「さぁ、我が姫我が妻よ。参ろうか」
「え、え!?」
驚きと状況を理解する前に、真っピンクはナルシーに連れ去られた。うん、まぁいんじゃね。周りのギャラリーもふたりと一緒に出て行った。うん、静かになったね。
でも、あの人達、私に気づいてなかったっポイ?
「まさか、琥珀?」
「みぃ」
もしかしてなにかしたのかと、琥珀を見たらキラリと目を輝かせた琥珀と目が合った。
「そう、ボクだよ?」
「しゃべった!?」
うちの琥珀くん、まだまだ謎が多そうである。
レンさん復活です。よろしくです。