059 正妃と側妃は大違い さん
セレイアさま大暴走(笑)なぜだ。
「あら、わたくしはかまわなくてよ?」
側妃のひとりやふたりや3人くらい。ふふっ。と楽しげに笑う美少女。
いや、さすがに3人は多すぎませんか、セレイアさま?
宰相さまのお屋敷。中庭の薔薇が見える所でお茶を楽しみつつ、王宮から一時帰宅したセレイアさまはさらりと宣った。
「だって、わたくしものすごく殿下が好きなわけではないし。むしろレンのお父様に嫁いでふたりと家族になりたかったわ」
そこは父ではなく、せめて兄と言うべきでは? てか、殿下好かれてないって?
「リリィのお兄さまでは、リリィしか見ないでしょう? お父様ならきちんとわたくしを見てくれそうじゃない」
うちの父に負ける殿下、笑えない。そういや、領地に来た時も父に話しかけてたな。ステルスで隠れても見つけ出すとかすげぇなとか思ってたけど、え、あれ、それなの?
「わたくしも貴族の娘として、愛のない婚姻の大事さも知っているけれど、一方的な気持ちは重いわよね。そんな気持ちで妃になるとしたら、公務だけで大変そう。殿下のお相手を毎日はちょっと辛いと思うのよ」
辛いですかそうですか。まぁ確かに役割を分散すると考えるなら3人でも4人でもいいかもしれないが、いやでもしかし。
宰相さま。策の練り直しが必要かもしれません。
そもそも、私を含むセレイアさまのお友達は、セレイアさまが王族に嫁ぐことを想定しての布陣なわけで。
「仕方のないこともありますわ。セレイアさまの気持ちが大事ですもの」
侯爵令嬢であるイディアさまが言い切った。緑の瞳は、セレイアさまの味方だと語ってる。
「本来ならば許される事ではありませんけれどぉ、セレイアさまを溺愛なさっている閣下ならば、なんとかしてしまうような気がいたしますぅ」
伯爵令嬢であるケリィゼさまも肯定する。栗色の瞳は楽しげでもある。
「問題は殿下ですわね。あれほどセレイアさまを妃にと何年も望んでおられる方が、簡単に諦めてくださるかしら」
ため息つく美少女。萌えー。うちの姉さまなにしても美少女。
セレイアさま抜きのお友達会議in我が家である。婚約者候補のセレイアさまにあんまり聞かせられない話だからね。
「派閥的にもセレイアさまが候補から抜けた方が落ち着くのもありますが」
「ええ。閣下は権力を持ちすぎと言われてますもの」
セレイアさまが候補から抜けても問題はない。むしろ抜けてくれてありがとう!! となること間違いない。ひとり勝ち状態なんだもの、セレイアさま。
しかし、本人にその気はないことが判明。てか、殿下。ちゃんと口説き落とせよ。こちとらそのつもりで何年も準備してたんだぞ。
「殿下には最低でも側妃をふたり選んでいただかないとぉ、火種が残りますわぁ」
「あー、そのことなんですけど」
「なにかしら、レン?」
「閣下からもそのことを相談されまして。その時はセレイアさまが正妃になることが前提だったので、側妃をこちらが選ぶ予定だったんです」
「なにか仕組む予定だったということ?」
「まぁ、親心的に」
なにせかわいい末娘。本当なら王族に嫁がせたくなんてない。それが叶わないなら、せめてただひとりの妃になって欲しい、と誰にも言えない親心を相談されたのですよ。
側妃制度が大嫌いな私はちゃんと相談にのりましたよ。考えましたよ。
「で、なにを仕込んだの?」
「人聞きの悪い。もしセレイアさまが正妃になられたら、側妃候補はふたり。どちらにも想う相手がいる方を選定済です。打診後、側妃として後宮に入ってもらい、白い婚姻を3年。その後、恋人に降嫁してもらうつもりでした」
「それならセレイアさまだけが殿下の妃になりますわね」
「はい。親に逆らうことはできない、けれど好きでもない相手に嫁ぐのも嫌だというご令嬢は結構おられるのです」
原案は私だが、あとは全部宰相さまが動いたもの。ひとりでも想う相手と幸せになってほしいという、ささやかな願いだ。
「ですが、前提が崩れました」
「そうね。まさか想う相手がお父さまだとは」
それな。うちのヘタレ父とはかなりの歳の差なんだけどなぁ。いや、それでもまだ30代だけど、父。
「殿下に諦めてもらい、伯爵さまにセレイアさまを娶っていただく方法はないかしら」
「余計な根回しが必要ないものでしたら、閣下に許可を得るだけで可能なのがひとつ」
「「「それは?」」」
食いつき半端ないっす、皆さま。
プロットにない動きをするセレイアさまのおかげで先の話をまとめ直しになりました。なぜこうなった。