056 領地は怪しさと共に よん
さらっと領地編終わります。
気づいたらどこかに転がされてた。身動きできないので、拘束されてるんだろう。てかロープ巻きすぎじゃね? エビフライかよ。
冷たいし硬いし痛いし。てことは、誰かの家じゃない。床ならもう少し痛くないはず。目を開けて見るけど、なぜか暗いまま。どうやら目隠しされてるみたいだ。
誰かに連れ去られた、で決定かな。
姉さまとラストルは無事だろうか。
「娘を捕らえたと?」
声が聞こえたのはその時。おっさんかと思いきや、若い男の声だった。10代半か後半くらいの。いやー、無駄にイケボ。
「身代金か他国に売りさばいてもよろしいかと」
よろしくないわ!!
今度はおっさんのガラガラ声。何人いるのさ悪人共。
「ハリェス伯爵がそれを許すと思うのか?」
「後見の宰相は注視すべきですが、なんの印象にも残らぬ男など」
うん、そうやって侮ってると痛い目見るぞ? 家の父、情報戦は負け知らずだからな。
「その印象に残らぬからこそ注意すべきなのだ。お前達、伯爵の顔を覚えているか?」
若いのになかなか鋭い視点をお持ちのようだ。
「はて、どのような顔でしたか」
「見かけたことがあったかどうか」
「気配を感じないということは、どこにいるかわからないだろう。いつの間にか近くにいるかもしれない。大事な話を聞かれていてもこちらは知ることができない」
おっさん共はイマイチ理解してないけど、なるほど。この若いお兄さん、悪いことし慣れてるみたいだ。
「眠っているなら好都合だ。このまま置いていく。鉱山も粗方掘り尽くした。撤退にはちょうどいい」
「は、では仕度を」
「急げよ」
逃がした方がいいのか、逃がさない方がいいのか。父よ、早く来いやー。
「報告します! 塞いだ鉱山入口から何者かが侵入! こちらに向かっています!」
「「「「!?」」」」
「殿下、こちらへ!!」
「逃げろ!!」
殿下? うちの国の? いや、声違うし。うちの王子ふたりはまだ子供だ。……えー、他国?
「リリィ!! レン!! 無事か!?」
父の声がして、ようやく助かった。ロープはずしてー。
「姉さまは!?」
「わたくしは無事よ、レンは大丈夫?」
「ロープが痛かった」
姉さまはトールに起こされてた。ラストルへの叱責も忘れない。しょぼんとするけど、仕方ないだろうな、まだ子供だもの。
「賊は?」
「逃げられました。追跡中です」
父に聞いたことは話しておく。あー、と苦笑した父に、宰相さまが張り切りそうだと思った。
目隠しをはずしてもらうと、暗い坑道の中は松明であかりをとっていた。掘り尽くしたって言ってたからなぁ、と期待はしなかったんだけど、なんとダイヤモンドらしき宝石が残ってた。
奴ら、色のついた宝石しか持ってかなかったみたいだ。ダイヤモンドは高価なのに。
かくして私の領地には半分くらいの若者が戻った。上が誰かとか知らない下っ端として使われていた人が戻されたみたい。技術者とかは連れてかれたみたいだ、ちっ。
残ってた人達からまた新たに技術を受け継いでもらうために、領地整備から始めることにして、とりあえずダイヤモンドを売ろう!
この話にでてくる殿下は幼なじみにはなりません。