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005 それでも、家族

賛否両論あるかと思います。ですが、レンさんは家族が好きです。これだけは変わりません。現世は……どうでしょう。

 あの日、真桜ママは父に言ったのだそうだ。「自分の存在がなかったことにされる恐怖は、あんたが一番知ってるはずじゃないのか。忘れられたくないから、あんなにお調子者ぶって騒いでたんじゃないのか」と。


 真桜ママ、普段は穏やかでほややんな人だけど、怒ると口が悪くなるらしい。私のために怒ってくれる真桜ママ大好き。しぃパパの陰でひっそりこっそりバレないように報復してくれるのも好き。


 確かに、父は小学生の頃はお調子者だったと聞いたことがある。中学生になる頃には落ちついたそうだけど。


 そうか。怖かったから、忘れられたくないから、父は声を上げたのか。私とは逆だな。私は、忘れられたのなら、私はそれだけの存在なんだと思うだけだった。


 真桜ママが言いたかったのは、同じステルスとして私を理解できるはずなのに、逃げてんじゃねぇぞこら、ということらしい。


 それでも父は逃げた。電話の向こうの母は泣いていたそうだ。それが父の情けなさにか、自分の不甲斐なさなのかは私にはわからない。



 母が迎えにきたのは、それから更に数日がたってからだった。嬉しさより、戸惑いの方が大きくてちょっと困った。すでに諦めてしまってたからかもしれない。


 こんな母でごめんね、大好きよ。そう、母は言った。私を抱きしめて、泣きながら。ぎゅうぎゅうと抱きしめられて、泣きそうになった。私も好きだよ、父は嫌いじゃないレベルだけど。


 みんながみんな、いっぱいいっぱいになってた時なんだろうと今ならわかる。でも、しつこいけど当時2歳児の私には、家族が好きだと再認識するのがやっとだったよ。


 結局、玄関で抱き合ったままふたりで泣くのを、真桜ママが水分をとらせてくれながら見守ってくれてた。


 母は弟が産まれてからほとんど寝ていなかった。言い訳にしかならないから、と弱音も吐かず子育てをしていたそうだ。初めての男の子でおっかなびっくりの育児が、弟に悟られて泣かれていたのだろうと。


 そう教えてくれたのは、父方のばぁさまだ。私が家に戻った時にはすでにいた。仁王立ちがとてもよく似合ってた。真桜ママにシメられてきた父に、更にガッツリ説教をかましたらしく、落ち込んでどんよりどんよりどよどよになってるとこに、空気なじぃさまにまでグチグチ言われていた。同情はしなかった。


 父のステルスは父方の遺伝なんだと、ぼんやり理解したのはこの時。なんで空気からステルスまでバージョンアップしたのかはいまだに謎。


 そんなわけで。どこかイビツな我が家にテコ入れをするべく、私がいない間、ばぁさまはまず母から弟を取り上げ、母をベッドに押し込んだらしい。弟はばぁさまの背中とんとんで寝落ち、それを見た母は安心とショックと寝不足から気絶するかのように寝たそう。


 そら寝不足はキツいよねぇ。飽きるほど寝た母は、起きるなり弟をばぁさまに頼み、私を迎えに来てくれたらしい。育児ノイローゼって色々スゲェ。


 母は真桜ママに謝った。もちろん叱られた。優しかったけど、頼れ! と怒られてたよ。これはあとでみんなからも言われると思う。後日、皆に囲まれて泣かれて怒られてた。同情した、母ガンバ。


 母と帰る時、末っ子くんに泣かれたのは辛かった。またすぐ会えるよ、一緒に遊んでねと約束した。彼は一緒に車に乗ろうとした。さすがに止めた。子供は強し。


 帰るなり、母はベッドに戻された。母に布団をかける姉と母をよしよしする私。ふたりの視線は、ジトリと父に向いた。この辺りで姉とは自然と和解した。お互い謝ることはしなかった。謝っても謝られても、記憶は消せないし。それでも、私は姉が好きだったからそれでいいと思った。


 ヒビの入った場所は、それ以上広がらないようにはできるけど、なかったことにはできない。あの日できた傷を、忘れない方がいいんだろうと、なんとなくみんな考えたんだろうな。


 で。父はなにしてたのさ。仕事? 言い訳になるかそんなもの。だから、姉は母のフォローをしてたのか。私には見えてなかったものが多すぎるな。


 それでも、2歳児をほったらかしにしてたのは、虐待にとられてもおかしくないんだ(いや、虐待で通報されるレベル)と、目覚めた母はようやく周りが見えたそうだ。真桜ママがいなかったら、確かに虐待案件だったし。


 反省と教訓。私達は反省したし後悔もした。それでも家族が好きなのは変わらなかった。その後、二度目はなかったことは当たり前の話。


 そんなこんなで、城田家の乱は終息した。


 ちなみに、なにが悪かったかイマイチ理解してない、説明しても無理だった父の根性を鍛え直すとかで、ばぁさまが監視のためにしばらく泊まり込んだ。


 ばぁさま、お疲れ様としか言えなかったよ、うん。



同じ過ちは繰り返しません。ちなさん覚醒。その後ばぁさまを見習い、母として成長したものと思われます。

最初から母なんて女性はいない。まさにこれです。一緒に成長してくものですので、今回は温かく見守ってください。

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