055 領地は怪しさと共に さん
お待たせしました。完全版です。ホントに申し訳ありませんでした。
「あ、レンさま! あっちに花が咲いてるぞ……咲いてます! 花屋とかどうです!?」
ラストルのテンションが高い。花畑を見つけて興奮してるんだろうけど、犬かってくらいソワソワしてる。そんなに花が好きなの?
今日はラストルが私達のお供。護衛さんはべつにいる。
質素なワンピースを着ても美少女な姉さまと町娘な私は、領主館にいる領民達が落ち着いてきたのを確認して、領地を見て回ることにした。
名産品になりそうなものを探すのがメインなので、あちこち立ち止まってはあーだこーだ話し合うを繰り返してる。
「生花は王都に着くまでに枯れてしまうわ。造花もすでに出回ってるし」
「宝石で花を作るとかならありかなぁ」
「宝石で花を?」
「できなくはないと思う」
あとはガラスドームにでもいれて造花とかで飾れば、お貴族さま的には満足するだろう。ちょっとくらい高くても、プライドと見栄をはるためにはお金かける奴らだもの。
「花びらを集めて乾燥させて、匂い袋とかもいいかもー」
袋可愛い布にしたら女の子受けしそうだし。町娘さん達はお風呂に毎日入れる訳じゃないから体臭とかも気になるだろうし。
あとはハーブ系の花を育てて、種類を揃えるか。
「それなら子供たちにもできそうね。字と計算を教えれば売り子もできるし」
「毎日どこか……領主館に集まって、字と計算の練習して、匂い袋作るまでを仕事にしたらどうかな。手間賃払うと言えば親も通わせてくれるだろうし」
「そうね。お金は必要だわ。だからこそ、そのための知恵をつけることの大切さをわかってもらわないと」
どこに才能が埋もれてるかわかんないものねー。
果樹園の果物はジュースかケーキかドライフルーツか。どっちみち大量生産しないと話にならない。ならば希少価値を上げてのあえて少量生産か。この辺は父に応相談。
花畑や果樹園などを見終えて帰途につく。夕飯はなんだろなー。などと思いながらふたりで手を繋いで歩いて行く。
前を行くラストルが立ち止まったのはその時。
周りには畑しかない一本道。けど、周りを見渡すラストルの視線は厳しい。姉さまを庇って前に立つけど、私にできることはない。
後ろにいるはずの護衛さんは気配がない。どこかで戦ってるのか、それとも。
「レン、らすとーー!?」
「姉さ、ま!?」
トン、と肩に何かが当たったと思ったら、身体から力が抜けた。
「レンさま! リリィさま!?」
ラストルの声が、遠いーー。
久々に早い更新になりました。中途半端なままお待たせしてすみません。