054 領地は怪しさと共に に
間違いました! すみません!
領地に着いてから、別行動だったトールとラストル。ふたりは体力組として領地1周ツアーに出ていた。
大人では見逃してしまうような小さなことを見つけるために。とは聞こえがいいけど、実際は人手不足のせい。
ふたりはそれぞれ「領地にいる小さな子供が毎日どこかに行って帰ってくること」と「鉱山の入口は落石で塞がってるけど、別の入口があるらしい」ことを聞きつけてきた。
宝石が採れた鉱山が落盤で閉鎖されたのは、資料にのってたからわかる。
父の部下さんは落盤ではなく、入口のみを塞いでいるのではないか、と報告した。中は採掘を続けているのかもしれない、と。
それならば、出稼ぎに出ているはずの若者の所在がわからないのも納得だ。領地から出てないのなら、探しようもない。
名産品がなくなったから貧乏になった。だから若者は出稼ぎに行った。領民は口を揃えてそう言ったけど、理由がこうも同じだと不信感しかないよね。 いや、理由は頷けるよ? でも、1字1句同じ言い回しってどうなのよ。
そう言えって脅されました、と言わんばかりの態度の家もあったらしいし。
「らしい、ばかりでは話にならない。私は領主として表向き視察を続ける。徹底的に調べろ」
「「「承知致しました」」」
「リリィとレンは領主館に、領民を頼む。手が空いたらなにか考えてくれると助かる」
「「はい」」
そんなわけで、父達大人組は鉱山を調べることになり、私達は領民の回復を見ながら新たな特産物を探すことになった。
「鉱山がもし採掘をしているとして、そうしたらどうして領民はあんなに飢えているのかしら」
「そのりえきをわたしたくない人がいるのかもしれないねー」
夜、姉さまと同じベッドに入ってから、姉さまがぽつんと呟いた。栄養不足の子供たちがいることにちょっとショックを受けてるみたい。
「こうざんのけんりがただになって、さいくつとかかこうとかもりょうみんを使ってちんぎんをはらわなければ、かなりのもうけになるよね。かせぐ男の人を人質にしたとしたらなおさら?」
「渡したくない人が……渡さなくてもいい状況を?」
マジでいるのかもね。前領主の時代は定期的に宝石で利益があったらしいし、アクセサリーにする加工技術も評価されてたもの。
この利益をまるっと横取りしたい人がいたのなら……なんかヤバくね?
次の日、コソッと父に相談として話したそれが、現実のものになるのは、そのすぐ後。
いやもうマジでなにやってんの……。