051 アホの子は更なる覚醒を遂げる に
アホの子まだ続きます。
お前か、第2王子。
てか、あれか。王妃殿下によるおバカのための愛のムチ……要は頭で覚えられないのなら身体に刻み込め(意訳)という、ありがたい躾がなんの役にもたってないってことか?
「駄お……第2王子殿下、この件は王妃殿下へご報告致します」
今なんか違う言葉出そうになってなかった? やだお姉さんたらステキ。
転がったまま、ギャーギャー駄々っ子みたいに騒いでる阿呆。時間の無駄なんだが、放置して進んでもいいだろうか。
「……てことは、このお嬢ちゃんが?」
「ハリェス子爵令嬢でございます、団長」
「お初にお目にかかります。ハリェス子爵家トゥレンでございます」
カーテシーでご挨拶。団長さんは今までの経緯を知ってるみたいだから、きちんと自己紹介しておく。 こりゃどうもご丁寧に、と団長さんからは騎士の礼を返された。言葉使いとは逆のきっちりした礼に驚き。さすが王族、所作が完璧。
さて、と団長さんが腕を組んだ。女騎士さん達は後ろ手に。私は持たされた扇を両手で握る。じゃないと殴りそうだ。
王族は基本、「ノブレスオブリージュ」を実践する方々だ。身分の高い者はそれに応じて果たさねばならぬ社会的責任と義務がある、それを率先することで見本たらんとしてるのだとか。
王族や貴族ならば、その身分にふさわしい振る舞いをしなければならない、と。お貴族さまには通じませんけどね!
王妃殿下自ら、それをわかりやすく噛み砕いて教えた(と聞いている。なにをしたかは不明)はずなのに、目の前のおバカさんはただの駄々っ子だ。
「どうする?」
と、団長さんが女騎士さんを見た。女騎士さんは私を見た。私はため息をついた。
「ということで、王妃殿下の判断にお任せ致しました。ハリェス子爵令嬢にお怪我はございません」
女騎士さん達のふたりが駄々っ子を引きずって王妃殿下の元へ、ひとりは私と宰相閣下の部屋へ。先に来ていた父が怒りのあまりちょっと黒いオーラを纏って出ていきそうになったけど、関わり合いになりたくないので止めた。
「しかし、反省するどころか逆恨みとは」
「騎士団では大人しかったんだがなぁ」
宰相さまが呆れてると、団長さんが首を傾げた。いや、なんでいるのさ。
「お言葉ですが団長。団長が居られない所では身分を盾にやりたい放題でしたよ?」
ああ、そんな感じ。自分の意識が変わらない限り、中身は変わらないだろうしなぁ。
「身分を隠して平民の騎士団にでも放り込んでみたらいいんでない?」
ぽそっと言った言葉に大人が固まった。あ、なんかやばいこと言った? ちなみに父は私を抱っこしてソファーに座ってる。ほら、私まだ6歳だから。
「なるほど、一理あるな」
「本人が王子だとバラすだろ?」
「虚言癖があるとでも通知しておけばいい」
「おお」
「妃殿下に進言して判断を仰ぐ。これ以上トゥレン嬢に被害が行くのを止めねばならん」
「ああ、レディに怪我させちゃ駄目だからな」
なんか、宰相さまと団長さんは仲良し? ふたりでどんどん会話が進んでくけど、フランク? な感じで堅苦しさがない。同世代なのかな。そしたら団長さんが国王さまになった方がよかったんじゃね?
「まぁ、形だけ玉座に座ってもらって、周りで政をした方がいいとなったんだろうね。優秀な方々がそろっていらっしゃるから」
こそっと父に聞いたらそんな答えがかえってきたよ。なるほど、他の主要な地位にはつけられなかったんだね。
「本当にトゥレン嬢はいい案を出してくれるものだ」
「これであれにも王族の責任と義務に目覚めてくれるといいんだがなぁ」
程遠いんじゃね?
アホの子更に続きます(笑)