050 アホの子は更なる覚醒を遂げる いち
肩こりが……。
その日、私は王宮にいた。
どうも。穏やかな日は長くは続かないレンさんです。
トールは王宮の従者控え室に、私は父と合流すべく騎士さん達の先導で移動中だ。
なぜかって? 王妃殿下からのお誘いだからだよ!
迷惑をかけた方とはいえ、王族が城をでるわけにはいかないので、申し訳ないが来て欲しいとお願いされたのさ。そらそうだよあたりまえだよむしろこちらが行かせてくださいと土下座するとこだよ!
王妃さまに頭を下げさせる訳には行かないので、急いで登城した私は、父との待ち合わせ場所である宰相閣下のお部屋に向かってる。
トールと向かおうとしたら、王妃さま直属の女騎士さんが迎えに来てたんだよね。凛々しいお姉さんは大好きです。
心配そうなトールと別れて(あれ絶対私がなにかやらかさないかどうかの心配だよなぁ)王宮の外廊下を進む。私の歩幅に合わせてなので、歩みは遅い。走る訳にもいかないし、気ばかりが急く。
「ハリェス子爵令嬢、右手にあるのが騎士団の訓練場です」
中庭? みたいな場所に野郎共の気合いの入った声が響いている場所があった。騎士団の訓練て今なの? 仕事は? 交代制?
「ちょうど団長が訓練に参加されてますね」
「まぁ、みなさまおつよそうですわね」
あれが巷のご令嬢が狩人の目でガン見するという優良物件集団か。汗臭そうだけど。近寄りたくはないが、国の治安を守るためなので是非とも頑張ってもらいたい。
騎士団の団長は、国王陛下の弟だったかな。国の要のトップは王族がなるからね。
「っ!」
「ハリェス子爵令嬢!」
女騎士さん達が息をのむのと、叫んだのとガキン! と音がしたのはほぼ当時だった。なにかが訓練場から飛んできたのは見えたんだけど、なんだったんだ?
カランと転がったのは木剣。おいおい、訓練場からこんなとこまで飛ぶか? 誰かが意図的に飛ばした以外ないだろ?
「誰の仕業か!! 王妃殿下のお客人への無礼は王妃殿下への不敬である!!」
凛々しいお姉さんカッコイイー!
「ハリェス子爵令嬢、お怪我はありませんか?」
「怖い思いをさせてしまいましたね」
「いえ、みなさまのおかげでだいじょうぶですわ。ありがとうございます」
実際、私の目の前に飛んできたわけではないから、恐怖を感じる間もなかったし。
「悪ぃな、怪我はないか?」
「団長!」
のっそりと現れたのは筋肉だった。いやー、ムキムキマッチョすげぇ。イケメンの顔の下がゴリマッチョ、残念。騎士団の隊服がムチムチとはち切れそう。この人ほんとにあのアホ王の弟?
「団長の木剣でしょうか?」
「いや、こいつがわざと投げた」
女騎士さんが尋ねると、団長さんはポイッとなにかを投げ出した。子供?
「なにをするのだおじうえ!!」
涙目で叫んだ声には聞き覚えがあった。
「この、ど阿呆が」
低い声が漏れたのは許してほしい。
転がって叫んでいるのはいつぞやのアホの子、第2王子だったのだ。
早く日常が戻りますように。